第3章 最低の友情、次郎と圭
第1話 次郎の手を借りたい
日曜日もひたすら思考を重ねた結果、遂に行き着いた策。
コントラクトを利用してネイティブを倒せる策を思いついていた。しかし、この策にはいろいろと不安要素が残っていた。
なにより……ひとりじゃどうあがいても無理だ。
「だから……俺に手を貸せって?」
圭は人気のない空き教室に次郎を呼び出し、簡単に事情を説明した。
「ああ……、お前の手を借りたら、ネイティブに勝つ事ができる……はずだ」
「はず……って……」
少しバツが悪そうに次郎は床下に目をそらした。まあ、事実そうだろう。圭は契約によって今は、言うほどの嫌悪感は次郎にない。
だが、次郎は違う。契約という最低な形で仲を保ったという感情が今も、あいつの中で埋めいているはずだ。
「それにさ……いいのかよ、俺なんかの手を借りるなんて……、あんまりお前にとって、最高の選択肢ってわけじゃ、ないだろ?」
「なんだ? お前、まだ引きずってるのか?」
だからこそ、言い方は悪いが、その部分を利用すれば、確かなコマとなってくれるだろう。次郎がやったことと同等レベルには最低なことかもしれないが……。
「もし、俺に罪悪感とか、まだ持ってるんだったら、気にするなよ。どうしてもっていうなら、その気持ちの分、俺に手を貸してくれればいい。
そうすれば、お前も支配から開放してやる。お前にとってすれば、メリットのほうがずっと大きいんじゃないか?」
次郎は一瞬、面食らったような顔をしたが、直ぐに頷いた。
「……圭の言うことに……間違いはないだろうね。圭がそう言ってくれるなら、罪滅ぼしっていうのもなんだけど……手をかすのは……いい選択かも知れない」
「……かも、知れない? イエスではないのか?」
「いや……別に、もちろん、いやってわけじゃあ、もちろんないんだけど……」
……なんだ? 正直言って、ほぼほぼ躊躇することなく首を縦に振ってくれると思っていたんだが……なにか引っかかる要素でもあるのか? それとも……信用されていない? まあ、それもそうなのかもしれないな。
「次郎、確かに今の俺たちは、お世辞にもいい関係とは言えない。それに、この状況で俺を信じてくれ、なんてことは当然言うつもりもない。
もちろん、俺もお前を信じるなんて、言うわけがない。……お前だって、そうだろ?」
「そ……それは……」
「無論、言わなくていい。お前の立場ではそんなこと言えないことは分かってるからな」
今ここで必要なのは、次郎の信頼を勝ち取ることではない、次郎と仲を戻すことでもない、今必要なのは、ただネイティブに勝つための手がほしい。そのためになら……。
「次郎、俺はネイティブを倒す。お前だって、支配から逃れたいはずだ、お互いに利益を求めて共闘しようといっているんだ。
利害が一致するってのは、この場においてなによりも重要なことだろう? 違うか?」
こいつを口車に乗せる。
圭は強く握り締めた拳をゆっくり前に出した。圭の決意を次郎に見せる意味を含めて、視線を一度たりともそらさずに、次郎に近づく。
「次郎!」
次郎もまた、圭を開いた目で見てきていた。驚愕? 恐怖? 焦り? それがどういう感情を持っているのかはまだわからない。でも、次郎だって、この話にのるはず。
「……確かに……お前に手を貸せば、ネイティブを倒せるってんなら、お互いにとってこれ以上ないメリットなのは……間違いないよな」
次郎はゆっくりと手を前に出してきた。それに合わせて、圭は拳を解いて次郎の手にむけて腕を伸ばす。
だが、圭の手が次郎に触れるより先に、次郎は手を引っ込めてきた。
「でも、その前にひとつだけ聞かせてくれ……」
「なんだ?」
次郎は引っ込めた手を動かすことなく、圭に視線を向け続けている。
「ネイティブを倒せる作戦って……どういうものなんだ?」
次郎は、相当に鋭い目つきで圭にこの質問を投げかけてきたのだった。
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