第3話 ママは花より実をとるの
――もしもし? スタッフNo24161TAISHIです。
身体が……動かない。
俺は……死んだのか……?
――確認したいことがありまして……。
――実は、大変言いにくいんですけど……。
そして、さっきから聞こえてくる、この女性の声は……?
――勇者、死にそうです。
全く、言いにくそうじゃないよな!? てか、俺、生きてる?? 死にそうって言われてるけど!!
――あ、魔王? そっちはぴんぴんしてます。とりあえず、拘束してますけど。
むしろ、魔王はぴんぴんしてるのかよ!!
――えー、私のせいじゃないですよぉ。だって、超特急便ですよ?
――むしろ、勇者、もっと頑張っとけって感じじゃないです?
ほっとけよ。こっちだって、死ぬ気でやってたんだ。ていうか、本気で死にそうになってるし。
――あ、勇者の仲間ですか? そっちはまぁ、子供たちに行かせたんですけどー。
――とりあえず、保護は終わってるみたいです。現在、うちの子たちが
良かった……。皆は無事なのか……!
――ん? 大丈夫ですよ。妖精か何かだと思うんじゃないですか?
――まぁ、似たようなもんだし。
妖精に似た者……? に、助けられた……?
――そんなこと言っても、姿を見せずに倒すのは、さすがに無理ですって!
――私が両方? 本気で言ってます? それって、どちらかを見殺しってことですよ? で、そうなると、どっち選ぶかなんて、決定済みですよね?
そうだ。そうだよな。
……ありがとう。
――で、どうします?
――私が魔王を倒すわけにもいかないし。
――極力手を出したくないんですけど。
倒せるのか!? あの、化け物を……!!
――じゃぁ、いい案があるんですけどー。こういうのどうでしょ……。
***
ものすごい
城の中央、不思議なほどにぽっかりと空いた空間に、勇者と魔王が相対していた。
勇者は床に膝をつき、剣にすがってうずくまっているように見える。
そして、魔王はゆらゆらと背後に漆黒のオーラを放ちながら、その強大な力を勇者めがけて放とうとしている。
「あれが……魔王……」
「勇者!! 勇者は無事なのか!?」
城の外から見ている仲間たちの、息をのむ声や悲鳴が届く。
勇者は剣にすがりながら、床についた膝を持ち上げるべく力を込める。
「ひどい怪我だ! 誰か、回復を!!」
回復薬を投げようにも、当然届くわけはない。魔法を使うも、ささやかな回復にとどまるばかりだ。
「だめだ。それぐらいじゃ、追いつかない……!」
誰のものか、悲鳴のような声があがった。
その時、分厚い雲に覆われた真っ暗な空に、一筋の細い隙間が開いた。
勇者の頭上に、天から光が注がれたのだ。
そして、魔王が大きく手を振り上げたその瞬間……。
勇者が、立ち上がった。
「勇者が立った!!」
「神の祝福だ……!」
どよめきが周囲に沸き起こる。
「どりゃあああああああああ!!!!」
勇者は叫びながら、聖剣を魔王へと突き立てた。
***
「そして、ピンチを乗り越えた勇者が、魔王にとどめをさしたわけです!!」
ママはスマホに向かって得意げに語る。
「みんなの視線、釘づけでしたよー!? 超盛り上がりました!! 我ながら、いい感じにプロデュースできましたねー」
そこでママがくすりと笑いをこぼす。
「で……、ボーナスについてなんですけどー」
電話の向こう側から、微かに悲鳴が聞こえた。
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