探偵は化け猫さん

笹師匠

第1話

その探偵事務所は裏道の更に奥にある。

常識が大半を占める現代社会において、そこにいる探偵は異端そのもの。

扱う事件はどれも非現実的、概要も犯人も、挙句にはその解決方法ですらも、全てが怪奇の一言で片付けられてしまう様なものである。

だが彼の存在によって救われた人も数多いるのもまた変えようもない事実。

彼は私が知る限り、最も異常な探偵だ。

利益度外視、ツナ缶三つだけでほぼどんな依頼も引き受けてしまう破格の依頼料。

水とミルクしか飲めないのに、コーヒーを飲む紳士かの様にハードボイルドなのである。


そんな彼に、名前はまだない。

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