Cross point~世界を追い出された幼女(ロリ)賢者と最弱の真封(まほう)使い~

怪じーん

二つのプロローグ

その一 プロローグ

“一九九×年、世界は核の炎に包まれた”


 昔、そんな漫画があったらしい。俺の生まれる前の話だ。まさかそれが現実に行われているとは思わなかったのだろう。


 昔、社会主義国家シベリア連邦という国があったらしい。俺の生まれる前の話だ。今はない。自ら核を使って滅んだと聞いた。


 冷戦時代。そう呼ばれた時代に起きた出来事だ。まさしく核の炎に包まれたのだ。


 当時は、第三次世界大戦か? アメリア合衆国の仕業か? とも囁かれた。


 しかし、それはすぐに否定されることに。

後々シベリア連邦は、勇気ある決断をしたのだと世界中に称賛されることとなった。


 ワームの出現。


 世界中は大パニックに陥る。

一言でこれを表せば“人喰いダンゴムシ”。

ただし、バカみたいにデカイ。

全長一キロメートルのダンゴムシ。


 シベリア連邦は自国に現れたワームに対して、自国に核を撃つという手段を取ったのだが、残念ながらワームには効果がなかった。


 シベリア連邦を蹂躙し続けたワームは、東ヨーロピアンに入る直前、急遽、進撃を止めた。

だが、代わりに東ヨーロピアンに入ってきたのは、産まれてきた大量の小型のワーム。

それでも高さだけでも十メートルはある。


 人類は絶望したらしい。次々人々は補食されミサイルもその堅い甲殻に覆われて効きやしない。


 だけど、それだけで絶望は終わらなかった。


 小型のワームは突如丸まり、再び開いた時には中から大量の魔物を産み出した。

ゴブリン、コボルト、ワーウルフ、そしてドラゴン。

ワームの進軍の遅さをカバーするかのように、小型の魔物が蹂躙し続けた。


 誰が名付けたか知らないが通称“魔物玉”。後にアニメで“モンスター玉”というアイテムを放送した途端、不謹慎だとクレームがあったらしい。

俺は別に構わないんじゃないかと思ったんだけど。


 魔物の中には強い個体もあったが、小型のワーム、そして“マザー”と名付けられた原初のワームを何とかしないと数は減ることはなかった。


 だけどな、希望の光が現れたんだ。

 

 何かきっかけがあったとは聞いたことはあるけど、俺は知らない。恐らく秘密事項なのだと思う。

公表されたのは、人類は全滅もあり得る危機から逃れるために進化したとだけ。



真封マホウ



 数は少ないが一部の人類は進化したんだ。体の何処かに“羽”と呼ばれる紋様が現れて。


 ああ、初めは様々な呼ばれ方をしていたのだけど、馴染みの深い言葉を文字って“真封マホウ”ってさ。

更に“真封”を使う人達を真封使いって、その当時の偉いさんはアホなのか先駆者なのか。


 そして人類は救われた。今は、時折現れるワーム、モンスターを進化した人類の後継者が退治する日々。


 初めの人達はどうしたかって?


 全員亡くなったらしいよ。何故か全員が短命だったらしい。この人達は第一世代と名付けられた。


 第一というからには、第二、第三があるわけで。それぞれの世代で現れた紋様の形が違う。


 “蝶”を持つ第一世代。“蜻蛉”を持つ第二世代。“鳥”を持つ第三世代。現在は最後に“蠅”とか“虫”と呼ばれる紋様を持つ第四世代まで。


 現在マザーが確認されてから、既に百年近い年月が経っていた。


 世界中の人々の暮らしは大きく変わったものの、俺の住む日本は、孤島だからかワームが海を渡って来ることは滅多にない。

とはいえ、昔は大陸から九州へと渡り、関西方面までワームと魔物に侵食され、現在も都市としての機能は果たしていない。


 都内まで被害は及ばなかったお陰で、東京は対ワーム研究の最前線としての位置を確保している。


 対ワーム対魔物対真封対策研究協会。通称“バタフライ”。


 日本を本部として設立された、この長ったらしい名前の協会は、対ワーム、そしてそこから現れる魔物退治の為、精鋭の真封使い達が集まっている。

“バタフライ”って呼ばれるのは、第一世代をリスペクトしての通称だ。


 何故、対真封ってあるのかだって? これは後から足されたみたいだ。


 “真封”っていう強力な力を使えるようになれば、邪な考えを持つ者も現れるさ。

で、そういった犯罪者を捕まえるのも兼ねているわけ。



 国立真封育成学園。


 日本がよりスペシャリストを育成するべく、発現……ああ、発現ってのは紋様が現れることだ。


 その発現者達を育成、そして対策協会に送り込むべくを目的とした発現者のみの学校さ。


 実は、俺も通っている。正直言うとあまり行きたくないが、発現した者は報告義務があり、必ず通わなければならない。


 今の主力のほとんどは、第三世代だ。学園の生徒も先生も、ほぼ第三世代。


 ここまで言えばピンと来ただろ?


 そうさ。俺は第四世代。“蠅”とか“虫”とか“ゴミ”とか“クズ”とか……は大袈裟か。

中には呼んでいるやつもいるだろうけど。


 俺にそれを知るすべはないけど。


 ボッチだからね。話かけてくる人も僅かだ。


 俺の名前は“田代 暁”。国立真封育成学園に今年から通う十七歳さ。


 そうそう、ところで、妹のほのかを知らないか? 公園に行くって出て行ったのはいいけど、近所の公園にいないんだよ。


 隣街の公園かな?

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