Fランク冒険者の日常

15まる

第1章 プロローグ

第1話 Fランク冒険者の日常①

 冒険者ギルドの受付に並ぶときはフローラルな花の香りを目印にして並ぶことが私の日常である。


 昼を少し過ぎたこの時間は受付待ちの人数も少なく、さくさく進むのでだいたいこの時間にやってくる。冒険者は厳禁な人が多い為、私も含め時間が掛かっても良いからお気に入りの受付員の所で手続きをする。


 ワンチャンスがあってお近づきになれればと思うのは、どこの世界でも共通であり、私も下心を全開にいつもと同じ受付員に並んでいる。順番が近づくにつれてフローラルな花の香りが鼻をくすぐる。


「ゴブリン討伐、5体ですね。ゴブリン1体が5ポイントのため、報酬は25ポイントになります。いつもの引いていきますか?」

「はい、お願いします」

「では、お好きなカードを1枚引いて下さい。中身はここで開けて下さいね」


 この瞬間が一番の楽しみである。私が狙っているカードが引ける事を願って恐る恐る封を開ける。


「☆4のネピアです。しかもキラキラしています」


 私は肩を落としてエリエールさんにカードを見せた。


「大当たりじゃないですか」


 エリエールさんは自分の事のように喜んでくれているが、私はそこまで嬉しくない。このカードは何枚も当たった事があるし、俺が欲しかったカードではない。


「じゃあ、これエリエールさんにあ・・・」

「ちょおおおっと、まったあああ」


 右から聞こえる彼女の声と避けようがない拳を前に私ができる事は拳を受ける心構えだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る