無視と横文字③

「鳴沢、オマエこのことを知ってて……」

「途中から何言ってるんだろうなって調べてたら、出てきたんだよね」

「うぐっ……」

「私、横文字とかわかんないから、そういうこと言われてもピンとこないし。逆に言えば、安宍君がこういう『意識高い系の人』なんだなあって思うんだよねえ」

「た、た、高くねえよ……?」

「え~!? じゃあ、なんで横文字なんか使って話しかけてきたのかな?」

「……そ……それは……だな……」



マズい。

鳴沢がいらんこと調べたせいで、オレが意識高い系の人間だと思われてしまった。これでは、『鳴沢、横文字弱いよ作戦』が無駄になってしまう。

なんとか話を逸らさなければ……。

オレは軽くせき払いをして、鳴沢に弁明した。



「オレのは『意識高い系』とはまた違う」

「どう違うの?」

「アレだ。オレは普段から横文字使ってるし、ラノベのネタにするにもそういうのを意味を含めて知っておく必要性があっるだろ?」

「安宍君、そんな人だったかなあ?」

「そんなヤツだったんだよ。ほら、それにオマエとはまだ知り合って1か月近くしか立ってないだろ」

「確かに言われるとそうかもしれないけど……」




よし、その調子だ。

このままはぐらかして、再び反撃に転じなければなるまい。



「鳴沢、オマエこのことを知ってて……」

「途中から何言ってるんだろうなって調べてたら、出てきたんだよね」

「うぐっ……」

「私、横文字とかわかんないから、そういうこと言われてもピンとこないし。逆に言えば、安宍君がこういう『意識高い系の人』なんだなあって思うんだよねえ」

「た、た、高くねえよ……?」

「え~!? じゃあ、なんで横文字なんか使って話しかけてきたのかな?」

「……そ……それは……だな……」



 マズい。

 鳴沢がいらんこと調べたせいで、オレが意識高い系の人間だと思われてしまった。これでは、『鳴沢、横文字弱いよ作戦』が無駄になってしまう。

 なんとか話を逸らさなければ……。

 オレは軽くせき払いをして、鳴沢に弁明した。



「オレのは『意識高い系』とはまた違う」

「どう違うの?」

「アレだ。オレは普段から横文字使ってるし、ラノベのネタにするにもそういうのを意味を含めて知っておく必要性があっるだろ?」

「安宍君、そんな人だったかなあ?」

「そんなヤツだったんだよ。ほら、それにオマエとはまだ知り合って1か月近くしか立ってないだろ」

「確かに言われるとそうかもしれないけど……」




 よし、その調子だ。

 このままはぐらかして、再び反撃に転じなければなるまい。



「あれ? でも、さっき『都会っ子はみんな横文字使ってる』って言ってたよね?」

「確かにみんな使ってるな。だが、オレほどたくさん使ってるヤツはいない。言葉をより洗練されたムーブメントにするとカッコよく見えるじゃないか」

「ふ~ん、そんなものかな?」

「そう! そんなもんさ」

「じゃあさ。もっと横文字を使って話してみてよ」

「え?」

「だって、洗練されたムーブメントになってカッコよくなるんでしょ? だったら、安宍君がたくさん横文字を使って話してるところみないとわからないなあ」



 と言われ、オレは動揺した。

 それは言うまでもない。メモ帳に書き記した横文字の用例を確かめ、『そこにある横路文字だけ』が使えるからだ。

 つまり、それ以外は使えない。

 こうなると、鳴沢にツッコミをいれられるのは明白……ど、どうする? オレ!!

 戸惑いながらも、オレは適当に言葉を並び立てた。



「そ、そうだな……。ここは、センテンス的にユーモアを交えてコミュニケーションしなければ、たぶんオマエとのインタープリテーションにキャズムが生まれてしまうだろう。だが、しかしこれがアジェンダになっては元も子もないので、アジャイル的にリレーションシップのリペアが必要になるだろう」



 どうだ、鳴沢!

 オレの改心の横文字トークは? さすがのオマエでも理解……って、あれ? なんか鳴沢がニヤけた顔で、オレを見ているんだが……。



「な、な、なんだよ……?」

「安宍君。いまの横文字使った言葉の意味はわかる?」

「い、いやわかるから言ったんだろ」

「じゃあ、試しに日本語に直して話してみてよ」

「……え?」

「『え』じゃなくて、わかるんでしょ?」

「も、も、もちろんだ!」

「じゃあ、日本語に直してみてよ」

「ちょっと待ってろ」



 意味!? 意味ってなんだよ!!

 オレだって、わかんねえよ。

 だけど、真実はスマホで翻訳機能使って色々調べて、カッコいいと思った単語を調べただけ。

 そんなものをオレが理解してるわけがない。でも、鳴沢はその意味を求めてきた。

 くそっ、いったい何をどう訳せば……。



「そ、そのオマエとの話をだな……」

「……話を?」

「ユーモアを交えて会話をしなければならず、そうじゃないとたぶん解釈が一致しなくて……えっと……」



 翻訳しながらだと会話が止まる。

 そもそもほとんどの英単語がメモに書き写した内容だし。これじゃあ、苦手な英語の授業を受けさせられてる見たいじゃないか。



「I don't understand your talk at all. I wish you would speak a little more Japanese and have fun with me(君の話はまったくもってわからないよ。もうちょっと日本語で私と楽しく話して欲しいな)」



 刹那、そんな英単語で苦戦する俺を前に急に鳴沢が英語で話しかけてきた。

 オレはワケがわからず、つい思考を停止してしまった。

 いったいなんて言ったんだ?



「オッケー?」

「え? は、はい……」

「うん、わかってくれてうれしいよ」

「あ、あの鳴沢さん?」

「なあに安宍君」

「いまなんて言ったの?」

「やっぱり、英語は苦手みたいだね」

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