第46話 想悪魔
ゼノスはバラバラになったアシュの身体を見下ろす。
「首がなくなって生きていられる人間がいるか?」
アシュの様子を観察して、その不死の正体を異常な再生力と見た。不死などはあり得ない。『人は必ず死ぬ』というのが
「……」
一方、レイアは半ば拍子抜けとも言える想いを感じていた。
「同情しているのか?」
「まさか……でも……こんなにも呆気のない……」
最期に見たその姿は、あまりに無防備だった。他ならぬアシュが同じ手を使ってレイアを陥れた。そんな非道な男が、なぜ。
「……君の記憶を見た。ヤツはどうすれば、心が折れるかを知っていたんだ。それは、他ならぬヤツが同じような心の弱さを抱えていたから。それが……彼女だ」
ゼノスの視線にはリアナと呼ばれた美少女が立っていた。亜麻色ロングで蒼色の瞳。その表情には喜怒哀楽、なんの感情も読み取れない。
「……」
「もちろん
ヘーゼンから渡されたものは彼女の情報だった。そこから、彼女に似た死兵を改造して本物と瓜二つのものを造り上げた。
「……」
「どうした、やっと父の仇を打てたんだろう?」
「……ええ。でも」
アシュの死体を眺めながら、別の感情が湧いてくる自分がいる。なにか……なにか大切なものを忘れているかのような。
「フフフ……さすがは聖女というところか」
ゼノスはそうつぶやき、魔法の詠唱を開始する。
<<その深き 哀しみの罪を 忘却なる魔と 呼べ>>
地面に描かれた象徴から、悪魔が出現した。
「想悪魔ルバート……」
オリヴィエと同じく低位の悪魔であるが、戦闘は苦手としている。
「知っているか。では、この悪魔の特技もわかるな?」
「……罪の
「ご名答」
この悪魔は、人の記憶を消去したり呼び戻したりすることができる。
「なぜ……私にこの悪魔のことを?」
「フフフ、そう尋ねながらも、もうわかっているのだろう?」
「記憶を……消した……」
「ああ。君の記憶を呼び戻したときに、余計なものまで見えてきたのでね。都合の悪いものは消させてもらった」
「……なんの記憶なの?」
ドクンと。
レイアの心臓が脈打つ。
「君が知らない方がいい記憶さ」
「……戻して」
「やめておけ。呼び戻したら後悔するぞ」
「……いいから!」
「いいか、これは親切心だ。君は父親の仇を打った。念願だった仇を。それでいいんじゃないか」
「早く!」
「フフフ……どうしても偽善者になりたいんだな。わかった……ルバード」
ゼノスがそう指示すると、想悪魔はレイアの頭に向かって黒い光を投げかけた。
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