第42話 攻防
円卓の机以外に、なにもない広大な部屋。遮蔽物もなく、利用できるものはなにもない。隙をついたり、背後からの攻撃を得意とするアシュにとっては不利以外のなにものでもない。
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<絶氷よ 勇猛なる聖女を 護れ>>ーー
アシュが横に移動しながら放った魔法を即座にレイアが相殺し、
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
返す刀でゼノスの魔法が放たれる。
「ぐっ……」
案の定、初手から絶対的に不利。鋭利な刃が無数に突き刺さる。まったく予想通り、その血液は地面に滴り落ちた。
「フフフッ……」
「ククク……その余裕が命取りになるよ」
アシュは後ろへ下がりながら、全然余裕のない強がり笑いを浮かべる。
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<木の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
高速に放たれた連続魔法は次々とゼノスに襲いかかるが、
<<絶氷よ 勇猛なる聖女を 護れ>>ーー
レイアの魔法壁に阻まれ、
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<木の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
ゼノスの連続魔法を浴びる。
「ぐあああああああああああっ」
すでに、数十発以上氷の刃を浴び、血が大きく飛び散る。
「フフフフフ……いったいなにがしたいんだ?」
「ゼノス、気をつけて。この男は油断ならない」
「はぁ……はぁ……ククッ……早くもナイスチームワークを発揮してくれて。気が合うんだね、君たちは」
「ええ……あなたが憎いという一点においては、恐ろしいほど気があったわ」
「……そういつまで余裕を振り向いてられるか……なっ!」
ガチャ。
ガチャガチャ。
開かない。
振り返って開けようとした扉が、開かない。
「フフフ……ここは私の砦だよ。許可を得ずに帰ってしまうほどの無礼者を招いた覚えはないがね」
愉快げなゼノスが腕を組みながら微笑む。
「……僕はなにも語らず黙って去るロマンチスト派なんだ」
開かない扉を、訳のわからない言葉でごまかしながら、ガチャガチャし続ける絶体絶命魔法使い。
「小技ばかりで、ちょろちょろと動いて。やれることがそれだけか? 威勢がいいだけの魔法使いだな」
「……」
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<木の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
アシュは扉を離れて、再び魔法の矢を放ち続ける。本来ならば、極大魔法でカタをつけたいのだが、タメの時間が確保できない。なので、反撃されるとわかっていても、初級魔法の連発で攻めざるを得ない。
<<絶氷よ 勇猛なる聖女を 護れ>>ーー
しかし、やはりレイアの魔法壁に阻まれ、
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<木の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
ゼノスの連続魔法を浴びる。
「ぐうううううっ……」
先ほどとまったく同じ展開。無数の刃が、アシュに襲いかかって血飛沫が舞う。
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