第49話決戦
ゼノスは体力、魔力共に充実しているが、アシュはすでに烈悪魔オリヴィエを召喚している。ゼノス側も想悪魔レパートを召喚しているが、この悪魔は戦闘には不向きだ。近距離戦が得意な烈悪魔には実力は遠く及ばず、実質は2対1という状況。
しかし。
迷わずゼノスは悪魔召喚を選択。
<<聖を 憎む 呪いの歌を 奏で>>
瞬間、魔法陣から悪魔が出現した。人ほどの大きさで真紅の瞳が特徴的。剣ほどの鋭い爪が黒く光る。
兵悪魔ウェリエル。オリヴィエと同様低位の悪魔だが、戦闘に特化したその戦闘力は烈悪魔に近い。
「くっ……」
動けぬアシュは悔しげにつぶやく。
アテが外れた。
先ほど極大魔法を放った意味を見抜かれている。烈悪魔に攻撃される危険を冒しながらも、悪魔召喚をしたということがそれを物語っている。
アシュは余力があるという演技をしていた。
実際の魔力・肉体は、ほとんど回復していない。悪魔を操るにはある程度の魔力が必要。できるだけ再生の魔法陣に立って少しでも対峙の時間を引き延ばしたかったのだが。
「……仕方ないな、オリヴィエ」
そう叫ぶと烈悪魔はニイと満面の笑みを浮かべ、アシュにその鋭い牙を突き立てる。絶命するほどの痛みを超え、アシュは悪魔の頭を抱きしめる。
<<悪魔をその身に宿し 神すら喰らう 凶魔を我が手に>>
瞬間、オリヴィエとアシュの間に闇が包んだ。やがて、そこにはアシュ1人がその場に立っていた。それは、まるで悪魔のような姿で。その皮膚もまた黒く変色し、圧倒的な殺意がアシュに湧き上がってくる。
「これで……終わらせてもらう」
アシュはそう低く笑った。接近戦用の秘術、
しかし。
<<命を刈り取る 悪羅を 死せん>>
その間、ゼノスは二体の悪魔を召喚していた。
闘悪魔べリアス。人ほどの大きさを持ち、漆黒の翼を持つ。鋭い瞳は、明確な殺意を持ち、野獣のような牙が獰猛に光る。
オリヴィエと双子の悪魔である。
「やはり……貴様と私は似ているよ。奥の手まで一緒だとはな……ウェリエル、ベリアス!」
そう叫ぶと二匹の悪魔はニイと満面の笑みを浮かべ、ゼノスにそれぞれ牙を突き立てる。半身をべリアスが、もう半身をウェリエルが、喰らう。絶命するほどの痛みを超え、ゼノスは二体の悪魔の頭を抱きしめる。
<<悪魔よ 我が身に入りて 狂気を持って 神を殺せ>>
瞬間、悪魔たちとゼノスの間に闇が包んだ。やがて、そこにはゼノス1人がその場に立っていた。それは、まるで悪魔のような姿で。
ゼノスもまた、アシュとは違った道で
「……君は狂ってるね」
さすがのアシュも戦慄を浮かべる。
一体だけでも狂気的な苦痛を伴う。それを超える選択は、想像すらも超えていた。
「はぁ……はぁ……貴様は私の劣化版だ……ウグッ」
嗚咽とともに、体液が流れ出る。
「……それほどまでに僕を倒したいかい?」
明らかに身体に支障をきたしている。アシュが唯一ゼノスより優っているのはその再生力。劣っている方がより負担のかかる選択を選んだ。
「フフフ……どうやら……貴様の存在を……私は許すことができないらしい。貴様が私の存在を否定するように……私も貴様の存在を否定する」
「……光栄だね。さあ、最終決戦だ」
闇魔法使いたちは歪んだ笑みを浮かべた。
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