第120話 ぬらりひょんの毒針
銀翔はぬらりひょんを撃つ絶好の機会を捨て、ナナコが心配になり探しに走りかけた。
おきつね銀翔の額に玉の様な冷や汗が浮かび流れていく。
ぬらりひょんが隠し持っていた毒針をニンマリとほくそ笑みながら後方から銀翔に投げつける!
気配に気づいた銀翔は毒針をかわしたが頬をかすってしまった。すぐさま、銀翔は毒を両手で押し出し絞り出す。
毒針の猛毒が早くも回り始め視界が揺れる。意識が朦朧とする銀翔にぬらりひょんはじわじわと楽しむ猛獣のように近づいて来た。
ぬらりひょんは手を伸ばし、ニヤつきながら銀翔の脇差しの流星激風剣を盗もうとしている。
「やめてっ!」
銀翔の視線の先にはずっと走って来たであろう息の上がったナナコがいた。横には雪菜もいる。
「神獣使いめ、自らやって来るとは。飛んで火に入る夏の虫とはまさしくこのことよ」
「銀翔に手出ししないで」
ぬらりひょんの関心がナナコに集中すると、銀翔にそっと雪菜が近づいた。
雪菜は毒針に効く雪女一族特製の薬草で出来た軟膏を、銀翔の頬に受けた傷に塗ってやる。
傷口から体内に入った薬の効き目は絶大で、銀翔の毒はすーっと消え去った。
ぬらりひょんの作り出した妖気の雷が轟くと四神獣がナナコの中から光の珠のままで四人とも出て来て、パッと姿を人型に変わると、雷を各々の術と武器とではねのけた。
ナナコが願うように両手を組み、全身の力を込め目を
雷を蓄えた濃い闇色の分厚い雲の深くまで、『龍神のなみだ』の差し込む光が浄化をしていく。
空の黒い雲を払って晴れ渡っていった。
青空と太陽が沈み出した夕焼けの茜色がコントラストを作り出す。
一同が眩しさを感じる。
黒い雷雲がなくなり少々ホッとして誰ともなく嘆息を吐いた。
おきつね銀翔は燃え盛る狐火を
「ぬらりひょんっ!」
「ぐぉっ……」
ぬらりひょんは不意をつかれた。銀翔の狐火をまともにくらいよろけ、地面に倒れ込んだ。
うずくまるぬらりひょんから笑い声がした。受けた狐火の攻撃で服や髪の端々が焦げている。
「何が可笑しいんだよっ?!」
朱雀の緋勇が怒鳴りつけても、ぬらりひょんは不気味な笑いを止めない。
「なにか違和感を感じる」
銀翔は背中にナナコたちを匿うように腕を広げた。
玄武の薫はずいっと前に出る。
「あれぇ〜? あいつ、ぬらりひょんじゃないよ」
白虎のスズネが叫び虎の姿に変化して、ぬらりひょんに鋭い爪で引っ掻くとぬらりひょんの姿は烏天狗の長に変わっていく。
「
ガシッとナナコは足首を掴まれ、体勢を崩してよろけた。
「きゃあっ!」
「ナナコ!」
慌てて銀翔がナナコを抱きとめた。
地面の中から緑色に変色した鱗を持つ不気味な手がナナコを地中に引きずりこもうとしている。
「ぬらりひょん様! 早く神獣使いを体内に取り込んじまって下さい」
「なんですって!」
「ナナコをぬらりひょんの体内に封じ込める気かっ?!」
「許さぬっ!!」
銀翔は片手はナナコを支え、片手で流星激風剣を地面に深く突き刺した。
「ぐうぉっ! ギィャァァァ――!」
地中からぬらりひょんの切り裂くような断末魔の叫び声が高天原に響いていた。
鱗の手はナナコの足を離して力尽きたかのようにだらんとした。
倒したの……か?
安堵は出来ない。
地中のぬらりひょんは本物か?
「ぬらりひょん様ー!」
烏天狗の長がぬらりひょんらしき鱗の手に駆け寄っていた。
地中を掘っていく。
そこにはぬらりひょんはいるのだろうか?
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