第67話 オロチは天狗の里へ 趣のある庭園 

 一方のオロチの動向は――――


 緑が深いからか太陽の光の感じられかたが違う。

 天狗の里の湖に乱反射してる。

 オロチの目に眩しく映り込む。



 オロチは天狗の棟梁の荒天丸あらてんまるの部下たちが飛びながら運ぶ大きなかごに乗っていた。

 人間たちには飛行船に見えるように、荒天丸は妖術を施してその出来栄えに一人ほくそ笑んでいた。


 夜通し銀翔の館からオロチと荒天丸と部下の天狗が二十名ほどで天狗の里へと空を飛び続けて、飛行中に朝を迎えた。


 オロチは始終ムスッとした表情で憮然としており、ナナコのためと言われて仕方なしに天狗の里へ向かっているのだが。


 途中、何度か薄い膜のオブラートの様なものを突き抜けて結界をくぐり抜けた感覚があってから、人間界とは違う世界にオロチは飛び込んでいく。


 目の前には茅葺屋根かやぶきやねの家々が立ち並び、田園が広がる。天狗の子供たちが遊んでいて笑い声が賑やかに里のあちこちから聞こえてくる。

 長閑のどかな風景がオロチの表情をやっと緩ませた。


「青龍の根城いえは決まったのか?」

 荒天丸は青龍がまだ小さな姿であることに、疑念を抱いていた。

 青龍が大地から力を得ればその姿は猛々しくビルの三階建てよりも長く大きく威厳を放ち、悠然としているはずだ。

 今の青龍はまるでトカゲだ。

 生まれたばかりのひよっこ並みでしかない。

「いいや、まだだ。ナナコは松姫の時のような力が存分に発揮はされてはおらんからな。青龍に相応しい場所はすぐには見つからないだろう」

 やがて飛行船は音を立てた。白い砂利が敷き詰められた趣のある、だだっ広い日本庭園に着陸していた。





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