第56話 オロチと白虎

 オロチは部屋に戻ると、式神を何体か飛ばした。

 式神は銀翔の屋敷周りを護る。

 ナナコと銀翔のために、厳重な結界も張り直した。


 荒天丸はオロチの部屋の扉に寄りかかりながら、オロチをじいっと見ていた。

 そして、瑠璃色るりいろに光るたまを懐から出してオロチに渡した。


「なんだこれは?」

「先に渡しておく。四神獣の一体の白虎の珠だ。白虎の覚醒にはそれが必要だ」

「いずれ松姫の……いや、ナナコの物だろう?」

「ああ。しかし白虎は少々厄介な神獣でな。白虎が我々に力を貸すのは条件があってな」

「よく分からん。荒天丸」


 困惑するオロチに荒天丸は笑った。


「銀翔にはナナコがいる」

「ああ」

「白虎は自分と夫婦となった者しか、正式なあるじとは認めない」

「だから?」

「オロチお主が白虎と結婚しろ」


 オロチはかあっと顔を真っ赤にして怒り狂った。


「てめえっ! なんで俺なんだっ!」


 オロチは荒天丸に掴みかかりにいった。


「ハハハッ! お主しか適任者はおらんっ」

「ふざけるな。俺をからかっているのか? 荒天丸ー!」


 天狗の荒天丸は高笑いをしながら、オロチが振り回す両手の牙涼刀がりょうとうから素早く逃げ回っていた。

 大妖怪オロチが天狗の荒天丸を銀翔の屋敷中を駆け巡って追いかけ回している。

 荒天丸は余裕綽々よゆうしゃくしゃくで笑いながら、オロチの攻撃を避けていた。


「腹くくれ。オロチ!」


 荒天丸が面白半分にからかっているように見えて、オロチはますます立腹していた。

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