第57話 戻る銀翔と縛呪文

 騒がしい気配に銀翔はわずかに顔をしかめた。


 深刻な気分で自分の屋敷に戻ってみれば、なにやらじゃれ合うオロチと荒天丸あらてんまるの姿。

 二人の追いかけっこにどこかしか微笑ましくも思ってしまったが。

 ぬらりひょんの出かたが分からない上に、風森町の結界も張り直せばならない。


 銀翔は腕組みをし、片眉を上げた。

 屋敷の広い玄関に立ち尽くし狐火を二つ出してみた。


 ボウっと燃える碧白い狐火とメラメラと燃える紅い焔の狐火を銀翔が見つめ呪文を唱えると、やがて小さな炎のキツネになった。


 うかのみたまの神様に事態の報告に行った狛犬の北斗羅ほくとらはまだ天界に行ったっきり戻らない。

 憂いは増えていく。


「【ばくーー】」

 銀翔は呪文を唱える。


 少々銀翔はイラッとしたのかもしれない。


 銀翔がキツネを放つ。


「ぎゃっ!」

「うわぁっ!」

 大蛇妖怪オロチと天狗の荒天丸を銀翔の放った炎のキツネが縄のように変化へんげしてグルグルと二人一緒に背中合わせにしてぎゅうっと縛りあげていった。


「落ち着くのじゃ。静かにせい」

 銀翔は怒りを眉間に込めてオロチと荒天丸を睨み、妖艶さが漂うぐらい殺気をだして薄く笑っていた。

 

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