第17話 妖怪オロチは野菜がお好き

 八百屋の兄妹きょうだいはたいへん仲がよろしい二人です。

 ここを小さな蛇に化けた妖怪が通りかかりその仲の良さにいらだちを覚えたのでございます。


「ケッ。仲良くしやがって」

 彼には家族はいなく仲間も遠い昔に封印されてしまいました。

 自分以外の幸せはねたましい。

 妖怪はしばらくこの家に住んで意地悪をしてやろうと思い立ちました。


 そして大好きな野菜がたくさん並ぶこの店を気に入ってしまったのです。

「しめしめ」

 店先から毎日くすねてはたらふく食べて満足していました。


 それが最近地をおさめる神の力が弱まったのかはたまた妖力の高いあやかしがこの風森町に来たのか、蛇の妖怪オロチは自分の妖力の高まりを感じたのです。


「いまさら暴れる気もせんわ」

 オロチはこの八百屋のトマトをたいそう気に入ったので、人間界が荒れるとこのトマトが食べられなくなると本気で思いました。


 人間を助けたいと純粋に思ったわけではありませんでしたが。


「ケッ。きつねに知恵を借りに行くか」

 気にくわん。気にくわん。とつぶやきながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る