大学時代の黒歴史

大学時代の私はひどかった。

ゼミで6人の仲間と一緒になったのだけれど、一切しゃべらなかった。

「どこの高校からきたの?」

「××」

「そうなんだ。かしこいとこだよね。」

「べつに」

「次の授業一緒に座らない?」

「いや、一人のほうが気が楽だから、ごめんね。」

「そう。」


こんなんだから友達と会話なんて全然続かない。全部私が悪いのだ。

教育大学だけあって、いじめられることはなかった。そこはみんな大人だったのだろう、

さすがに教師を目指している人たちがいじめをしたらアウトだからだ。

だけど私は存在を無視されるようになった。

6人で歩いていても私は一人ぽつんと後ろをついていく、5人が仲良さげにおしゃべりしながら前を歩く。

移動教室は苦痛だった。

隣の席に男の子が座っていた。

私はそのこと一言も話をしなかった。

そのうちにその子、脇坂君は何か問題を起こしたようだ。先生ともめた。。

ゼミの授業に出なかったのだが、その理由を自動車教習所に通っていたためだと教授に行ってしまったのだ。

教授は本気で怒ったらしい。何があったのかは知らないがそうとうブチ切れたという。

脇坂君はその日から学校に来なくなった。

ゼミの席は私がぽつんと一人離れて座っていて、脇坂君が減った後の4人が仲良く談笑している。

脇坂君がこなくなったのは私の責任かもしれないとも思っていた。隣の席なのに何の交流もないのだ。

話を聞いてあげるとか、先生と喧嘩したことをなぐさめるとか、そういう友達がいれば彼も居心地が悪くなることはなく

気持ちを切り替えていられただろう。それなのに私は彼に冷たくした。いじわるしたわけではないが、何もしゃべらなかった。

世間話さえも。

脇坂君は卒論発表会にも出なかった。留年したか、退学したかは知らない。

一度バス停で彼を見かけ、私は初めて、声をかけた、脇坂君!!だけど当然のこと無視された。

そりゃそうだ、友達でも何でもないのだから。


ゼミの授業が始まるまでは音楽を聴いていた。そのころ、のだめカンタービレにはまっていて、

だからクラシック音楽をずっとかけていた。イヤホンで耳をふさぎ、焦る心を落ち着ける。

私は孤高を貫いていると勘違いしていたがただの孤立であって、なにもかっこいいものではない、

友達がいないつらさというのはきついものがある、特に休み時間の長く感じることといったらない。

小説で書いたアイスコーヒーの主人公は私がモデル、じさつしてしまった類のモデルは脇坂君だ。




あるとき、ゼミの女の子が旅行のお土産を買ってきてくれたことがあった。

そのこは親切にも私にも配ってくれたのだ。

私は何とか声を出さなきゃと思った。

「なお、ありがとう。」

全くふいに、タイミング悪く微妙な空気の中私は何とかお礼を言った。

「わ、××がしゃべった!」

「びっくりした」


「ありがとうだってさ、」


「なお、お礼言われているよ?」

みんなは本気で驚き、それを笑いあっていた、微妙な空気官だった。居心地が悪いことこの上ない。

私は黙々とその後のお土産を食べていた。なんの味がするのかなんて全く分からず喉を通らない。

孤独だった。


BGMは閉ざされた世界 THE BACK HORN

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