JKものがたり
緋都 歩夢
第1話 突然の悲劇
これは、私の半生を綴るものがたり。
春!過ごしやすい気候に、花のいい香り、そこにいるだけで幸せになれる季節。そして、クラス替えに新学期。入学式とか、とにかく幸せの季節。
それから2週間たったとき、葉月が二葉に告白した。付き合うことに。みんなに内緒にしてたけどバレてしまった。
そうして入学から1ヶ月が過ぎ、5月になった。そんなある日…悲劇はおこった。
二葉はいとこの
バゴーン!!!!
(何?今の音…?)
「キャーひき逃げーー!!だれか救急車ー!」
(?だれかひかれたのかな?)
…
ピーポーピーポーピーポー
(救急車きたんだ…でも、あの音だしなきっとひかれた人たすかんないだろーな…)
「この子の身元は?」
「わからん…」
(身元不明なんだ…かわいそ。てか、早く行かないと大河に頼まれたやつ買えないじゃん…)
……………………………
パッ!
(ここどこ?なんで私寝てんの?……イタッ!!体動かない…)
「あっ起きました?」
「あの………?」
「私、
…………??
「かっ…看護師さん?」
「一応はそうです。先生呼んできますね。」
数分後
「おはよ。僕、
「あ、はい。よろしくお願いします。 あの、私、なんでここにいるんですか?」
と寝たままの二葉が聞くと、佐藤先生は
「君、トラックにはねられて、5~6㍍ふっとんだんだよ」
「へっっ??………そういえば救急車の音が聞こえたような気がします。」
コクリ と佐藤先生と梓はうなずいた。
「ちなみに、骨のひび割れ20箇所、骨折8箇所、複雑骨折2箇所、全身打撲、頭部損傷、出血多量の重体です。本当なんで生きてんのか……あ、頭と首の境目あたりにあった傷なんだけど、少しだけ皮膚が壊死しかけてたからお尻から移植したんだ。お尻だと見えにくいから皮膚の移植はお尻でやることが多いんだ。勝手にやってごめんね。」
「はぁ…そうなんですか。よくわかんないんですけど。」
と反応に困る二葉。すると佐藤先生が
「そうだよね。ごめんね。ところで君、名前、年齢、性別は?」
「あっ!そっか…身元不明って言ってた。」
「「そうそう。」」
佐藤先生と梓が声を揃えていった。
「若林二葉、12歳、女です。」
「中学1年生かな?」
「はい、」
「女の子?」
「はい、」
「本当に?」
「?……はい…」
「なるほど………」
「?????へっ???!」
「二葉ちゃん、君が死ななかったのは病気だよ。」
「えっ?!???!」
う~んと考えてから佐藤先生は
「梓ちゃん、この子のご家族から捜索願いとかの届けが出てないか見てきてくれる?」
「はい」
梓が部屋から出ていった。
「二葉ちゃん、君がはねられたのは3日前なんだよ」
「え?」
ということは3日も二葉は眠っていたのだ。
「はねられてすぐ、頭の左の方が切れてたから、縫ったんだ。それから、骨とかいろいろ知らべた。でも君は女の子ではなかった。 イコール、男の子だったんだ。」
「どういうことですか?私、女ですよ?」
「それが病気なんだよ。多分君は『
「ネーミングセンスが………」
「うん。ネーミングセンス無さすぎたよね。僕が名付けたというか、英語の名前を分かりやすく直したんだけど。だからネーミングセンスが………とか、言わないでほしいな。」
そして、佐藤先生は続けた。
「男女病とは何かのきっかけでホルモンのバランスが崩れ、性別が変わってしまう病気のことなんだ。ただ、本当にまだ何もわかってなくてね。なんせ世界でこの病気の人、二葉ちゃんあわせないで3人しかいないんだもん。それに、全員二葉ちゃんの逆で元々男だったのが女になったから二葉ちゃんのパターンは初めてなんだ。あと、日本には誰もいなくてね、研究機関も少ないんだ。だから研究してるのは僕と僕が特別研究顧問をやってる
「何ですかそれ。私は治るんですか?」
「治るんですか?か、正直言ってわからない。あと、これは本当かどうかはわからないから仮定なんだが、もうひとつ後遺症があるかもしれない。それはいつどこでどこの器官が止まるかわからないってやつ。名前もまだ決まってないくらい珍しい病気。もし明日、心臓が止まったら…二葉ちゃん明日死んじゃうってこと。」
「いつ死ぬかわかんないってことですか?」
「そういうこと。」
二葉はこのとき思った。
(どっちにしろ男女病とか変なのになっちゃったし、これ以上お母さんに心配かけたくないな。なら…)
「先生、その、男女病はしょうがないから母に言います。でも、いつ死ぬかわかんないやつは言わないでください。これ以上家族に心配かけたくないので。」
「わかったよ」
そこまで話したところで梓が戻ってきた。
「二葉ちゃんのお母さん、今すぐに来るみたいですよ。」
「そう、わかった。梓ちゃんここにいてもらってもいい?僕、資料持ってくるから。」
「はい。」
先生が部屋から出ていくと梓が口を開いた。
「兄弟とかいるの?」
「弟が2人います。」
「そうなの?いいなぁ私、1人っ子なんだよ。弟か、ほしいなぁ。今からでも遅くないかな?20歳差っておかしいか。」
梓が笑ってそう言った。
「鈴木さんって20歳なんですか?大学生?」
二葉は確かに若そうだなと思った。
「大学生ではないんだ、高校が専門学校だったら5年間通って卒業したの。今年から正式に働き始めたんだ。でもね、実習で働いてたから5年目かな?」
梓はそう言って笑ってから続けた。
「鈴木さんって呼ばないでよ。なんか呼ばれなれてないから気持ち悪いな。普通に梓でいいよ。あと、敬語じゃなくていいよ、そんなに年もかわんないんだから。」
とそこへ1人の看護師が入ってきた。
「梓ちゃん、
「やだな…」
二葉はそう呟いた。
「え?嫌?なにが?なんで?」
梓は気になって聞いてしまった。
「その、うち結構特別で複雑なんです。多分、私が男の子って知ったら手のひらがえしだと思うな。」
「そんなことないよ!だってお母さんなんでしょ。大丈夫だよ!今、迎えに行ってくるね。」
梓は気になりつつも千和を迎えに行った。
「二葉ーーーー!もう心配したんだよ!お母様も二葉が逃げ出したんじゃないかって怒ってたよ。次会ったらただじゃすまないかもね。大丈夫?」
千和は二葉がケガしてることも忘れて二葉に抱きつきいった。
「お母さん、痛いって。」
二葉がそう言ったとき病室に佐藤先生が戻ってきた。
「あ、二葉ちゃんのお母様ですか。私、二葉ちゃんの主治医をさせていただく佐藤伸一といいます。こっちが看護師の鈴木です。よろしくお願いします。」
「若林千和です。こちらこそよろしくお願いします。」
「早速ですが、二葉ちゃんのケガについて説明させていただきます。二葉ちゃんにはさっきも説明したけど資料なかったから漏れがあったかもしれない。だからもう一回聞いておいてね。二葉ちゃんのケガは、骨のひび割れ20箇所、骨折8箇所、複雑骨折2箇所、全身打撲、頭部損傷、出血多量となっていて、死んでもおかしくない状況でした。それでも死なずに生きているのはある病気のせいなんです。それは男女病と呼ばれています。男女病とは何かのきっかけでホルモンのバランスが崩れ、性別が変わってしまう病気のことなんです。今の研究でははっきりとした原因はわかってないです。」
佐藤先生は一気にここまで少し早口で言った。
「え、ちょっと待ってください。どういうことですか?二葉は今、男の子ということですか?ありえない。だってこの12年間女の子だった。私が産んで育ててきたのになんでですか?この子は男の子になったらいけないんです。この子が女の子であることに意味があるんです!何とかして今すぐにでも二葉を女に戻してください!」
千和は身を乗り出して先生にそう訴えた。
「無理なんです。まだ薬も開発されてません。」
先生がそう答えると千和はそれ以上はなにも言わなかった。
「そうですか。少し母に連絡してきます。」
千和はそう言って部屋を出ていった。
「二葉ちゃん、お母さんは手のひらがえししなかったよ。大丈夫。」
梓は少しでも二葉を安心させようと先生に聞こえない程度の声の大きさで言った。
「違うんです。お母さんじゃなくておばあちゃん。おばあちゃんの言うことにお母さんは逆らえない。おばあちゃんは女の子じゃない私はいらないの。さっきお母さん言ってたでしょ?私が女の子であることに意味があるの。意味のない私はいらないから捨てられる。」
「なんでそんなこと言うの?家族なんでしょ?そんなに簡単に自分の孫をいらないとか言うかな?」
梓の答えに二葉は泣きそうになりながら昔のことを思い出して言った。
「おばあちゃんの孫は私、弟ふたり、私のいとこふたりの5人なんだけど、その中で私だけダメなの。だからおばあちゃんは私のことはいらないんだって。」
二葉がここまで言ったとき、千和が戻ってきた。
「二葉、お母様からの伝言よ。『あなたは穢れた血。男の子ならいらない。二度と私たち家族の前に現れないこと。弟やいとこに会うことも禁じます。今日からあなたは家族ではありません。今までなんの見返りもなしに育ててやったことをありがたく思いなさい。あなたは最低の孫でした。もう会うことはないでしょうね。あなたが水野家の人間だったということは他言無用です。』いい?わかったわね。それじゃあさようなら。」
二葉はやっぱりなと思いながらもショックだった。
「お母さん待って!」
「あなたのお母さんはここにはいないけど?」
千和は冷たく言った。別にお母様に言われたからとかじゃなく、本心から二葉のことを他人と思っていた。
「千和さん。
二葉はわざわざ千和と呼んだ。氷河とは弟の名前である。二葉には三つ下に氷河。五つ下に
「そうね、あなたは死んだことにしましょう。」
千和はそう言うと病室から出ていった。
「え、どういうこと?」
佐藤先生が戸惑いながら聞いた。
「説明しないとわからないですよね。説明しますね。」
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