神様のオルゴール

こうやとうふ

勇気と後悔

八月三十日。


午後八時、二十七分。


僕は、決意を固めて。



午後八時、三十二分。


私は、どうすればいいか、わからなくて。



そして、決着の日を迎える。



***



その日は、鬱陶しいくらいの青空で、僕の心はなんだか苦しかった。


何があったのか。思い返す。




まあ、僕は告白したんだ。


この学校で一番の美少女で、僕のクラスメイト、雨宮加奈子。



流れるような黒い髪に、スタイルの良い体。


笑顔は眩しいくらいに輝いていて、見る人を笑顔にさせる。


男の目を嫌というほど惹きつけるだろうというのは、想像に難くない。



僕は生まれて初めてラブレターを書いて、直接本人に手渡した。


誰かに恋をして、それを実行するのは生まれて初めてだったから、何をすれば良いのか分からなかった。


結果、マトモに喋ったことのない相手にラブレターで告白した。ハナから期待はしてなかった、と言えば嘘になる。


でもクラスのマドンナと、底辺の僕とでは雲泥の差だ。僕と彼女じゃ釣り合うわけがない。


「あぁ、くそ……」


期待半分、恐れ半分でいつもより三十分早く教室に到着した。


そして、僕の机の上には、白い便箋が置かれていた。


それは間違いなく、僕が彼女に送ったラブレターで。


その便箋には一言、『ごめんなさい』とだけ書かれていた。



ーーそれだけで、全部を悟った。



「なんだよ、もう……」


便箋を机の上に放置したまま、窓に近づく。


僕の席は、ちょうど真ん中の一番後ろだった。


「ふぅ……」


登校ラッシュまであと二十分も時間がある。



窓の外の青空を、空っぽの心で眺める。


口から出るのは、後悔の溜め息ばかり。



──────こんな結果になるなら、やらなければよかった。



そんな後悔が、もう心の底から湧き上がっていた。

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