第12話
「結ちゃん、入学手続きが終わったら制服を取りに行ってね」
土日の休みはとても早く過ぎていき、
入学までには僕の制服は間に合わなかった。
恭也と神社で別れたあの日の夜は、
僕の第一高校入学祝いを開いた。
お母さんが泣きながら喜んでくれた。
お母さんの泣いている姿は初めて見たからびっくりした。
僕ももらい泣きしてしまってお母さんと一緒に泣いていた。
お姉ちゃんも、とても喜んでくれて私を抱きしめてくれた。
すごく優しくって包み込まれる感覚があって柔らかかった。
入学までに制服が間に合うといいわね。と言ってくれたけど、
月曜日の初登校日は、お母さんのシャツを着て、
お姉ちゃんの制服スカート履いて
お姉ちゃんの赤色の学年色のタイをしていくと思う。
お姉ちゃんは毎日リボンをつけていくからタイは使ってない。
制服が間に合わない以上、学年色にこだわってはいけない。
そして一夜明けて月曜日の今日。
僕の初登校日です。私立城北第一高校の一年生になります!
編入試験のお姉ちゃんの職員室の入り方にはとてもびっくりしたけど、
土曜日と日曜日にお姉ちゃんから教えてもらった。
初登校にはお姉ちゃんが付き添いで、
職員室まで付いてきてくれるとの事だ。
「結ちゃん、頑張ってくるのよ。由依ちゃんは結ちゃんの事よろしくね」
お母さんがぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
「結ちゃん、頑張ってね」
抱きしめながら優しく僕にささやいてくれた。
僕はとても嬉しかった。
「行ってきます。お母さん」
僕はお姉ちゃんと家を出た。
家を出てからまず電車に乗る。
そしてバスに乗り換えて学校に向かう。
通学通勤ラッシュで電車は混む。混む電車はすごくイヤだ。
それ以上にバスはもっと混雑する。
女性の身体には慣れて来たと言うもののやっぱり混雑は苦手だ。
駅のホームでお姉ちゃんの友人と出会った。
名前を久藤
お姉ちゃんと電車待ちをしていると、
「由依さん、ごきげんよう」と挨拶してきた。
お姉ちゃんも「明音さん、ごきげんよう」と挨拶した。
この『ごきげんよう』が学校での挨拶となっているようだ。
「由依さん、そちらの方は?」と言われてお姉ちゃんが紹介してくれた。
「従妹の三浦結です。今日から一年に編入学します」
僕が自己紹介すると明音さんがきつい目をして僕を睨んだ。
自己紹介の方法がまずかったのか?
お姉ちゃんに後で聞くことにしよう。
後はお姉ちゃんと明音さんのお話を私は聞くことで精一杯だった。
なんか聞いているだけで疲れる。バスに乗っているときも
お姉ちゃんと明音さんが話していることを聞いていた。
無事に学校に着いたときはなんだか疲れてしまった。
「結ちゃん、これから毎日通う学校の入り方を教えるね」
お姉ちゃんの言っている意味が最初はわからなかったが、
門に入ってからそれは判った。編入学試験の時に来た道が無い。
そして違った通路を通っていった。
JRの駅の改札口のようなところに出た。
明音さんはそのまま学生証を取り出して認証のところに当て、
そのままゲートを抜けていった。
お姉ちゃんの後に付いていくと警備員室に向かった。
「編入学者一名を連れてきました。」
お姉ちゃんがそう言うと威圧的に名前を聞いてきた。
「三浦結です。本日から一年に入ります。」
僕がそういうと“VISITOR”と書かれたカードを渡された。
「帰りに返却すること」
「結ちゃんこっちに来て、そのカードでゲートをくぐるよ」
お姉ちゃんは学生証で、私は渡されたカードでゲートをくぐった。
職員室に着いてから私は担任の先生と教室に行くこととなり、
お姉ちゃんは自分の教室に向かっていった。
お姉ちゃんは二年生なので二年の学年棟に向かっていき、
私は一年の学年棟ということらしい。
学年で建屋が違うのなら当初の目的がずれてこないかい?
私にもしもの事があったらいけないからということで、
編入学しようっていうことだったはず。
この件については家に帰ってから
じっくりと納得のいく説明を受けることにしよう。
私は一年B組のクラスに入ることが決まった。
担任は米倉恵子先生だ。
今日は8時半に学生証の写真撮影、11時頃に私の学生証が届いた。
そして生徒手帳もそのときに届いた。
教科書は隣の人に見せてもらいながら今日は授業をした。
お隣の子は
学校生活や学校外での生活のルールなるものが存在するらしい。
今日聞いたことは職員室の入室、退室のマナー
アルバイトの禁止、学校外での外出は基本的に制服の着用義務、
学校内での携帯・スマホの使用禁止と電源OFF等々
なんか倒れそうです……。
放課後になり佐武さんが私の部活動選択に必要な、
部活動の見学をするとのことで一緒に見て回ります。
こういう場ではストレスが溜まってくるので、
もうすでにこの校風に慣れることが無くストレスが溜まっているので
運動部をまわることにした。
サッカー、水泳、バスケットボール、ソフトボール、硬式テニス
剣道、柔道、空手、居合、アーチェリー、ハンドボール、バレーボール
他にもたくさんの運動部があったが、
まずは体験入部でアーチェリーと武道部居合道を選択した。
佐武さんに制服を受け取れる場所を教えてもらうと
一緒に行ってくれるとの事。とても助かった。
「三浦さんが上級生の制服を着ているから
一体どういうことだろうと思ったけど、
三浦由依先輩の従妹さんだったのですね。」
「私の制服が間に合わなかったので、由依お姉さんの制服をお借りして
今日の登校日を過ごしていたのですよ」
佐武さんは疑問がやっと解けたという感じで僕に話しかけてくれた。
「この学校でいきなり運動部を見ると言われたときに
早く気が付くべきでしたわ」
佐武さんにどういう意味?と聞くと、由依お姉さんは学校内で有名な
ハンドボール部とバレーボール部のスター選手で
みんなの憧れだという事実を僕は知ることとなる。
両方の部活の掛け持ちってありえねえだろ……。
久藤明音先輩はどういう人か知ってる?と聞くと、
剣道3段、そしてハンドボール部の選手だと言うことを知った。
ハンドボール部ね……。なるほど。
僕の中で闘争心が芽生えたのは言うまでも無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます