リピート~君たちの行く末に一筋の涙を~

さつき

1.記憶

黒い鬼は、人を恨んで死んだ魂。

赤い鬼は、人が好きだったけれど憎んで死んだ魂。

黄色い鬼は、死んだ後も残った人に帰ってきてほしいと望まれた魂。

緑色の鬼は、世界と会話できる魂。

青い鬼は、人を愛しすぎて人間ではなくなってしまった魂。

白い鬼は、生まれてすぐに死んでしまった魂。


それが、雨音が祖母から聞かされて育ったお伽噺。特に、黒い鬼と赤い鬼は強いのだと祖母は教えてくれた。人を鬼に堕とす影と、恨む気持ちや憎む気持ちの相性がいいからだと言っていた。


『悲しい魂なんだよ』

寂しそうな顔で、話していた。

『大切にされることを知らない魂なんだ』

そう言って、優しく頭を撫でてくれた。

『うちの祠に眠っている赤鬼様は、自分が人間だった時の記憶が無くなってしまうくらい悲しいことがあったんだって』


『鬼は、人間だった時のことを覚えているの?』

幼心に聞いた覚えがある。


『覚えているんだって。自分がどういう人間だったか、どんな名前だったか、どうして鬼になったのか、全部全部覚えているんだって』

そう話す祖母の顔を、ただじっと見つめていた。


『だから、もし、雨音が赤鬼様と会ったら、優しくしてあげてね』

優しい笑顔でそう言われれば、頷くしかない。

『うん。私、赤鬼様と仲良くするよ』


それがどういう意味かも分からずに、どうすればいいかなんて考えもせずに言葉にすれば、祖母は嬉しそうに笑った。

―思えばそれが、雨音への祖母からの遺言らしい遺言だった。

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