人狐のRaid

ロア

第1話 始まりの音

「ゴス!ゴス!」

ある場所で奇妙な音が鳴り響いていた。


寒夜。

サークルの飲み会が終わり、メンバーがちらほらと

帰って行き人混みの中へと混ざっていった。優という男もその中の一人だ。クリスマスが近いこともあり町は盛大な盛り上がりだった。

町中が浮かれているクリスマス………

そのクリスマスに最悪が起きることを誰も知るはずはなかった。




「なあなあ優!次のサークルの試合いつだっけ?」

学校からの帰り道でそう尋ねたのは優の親友で同じサークルの忍だ。他にも、幼馴染の華那、サークル仲間の周一、隆、美穂がいる。忍の問いに優は、12月25日午前7時から 妖狐島 と答える。

「えーー!よりによってクリスマスかよ!信じらんねー…。てか、たかが試合で島に行くなんて変じゃね?」

忍は悲しそうに空を見上げながら叫んだ。周一も忍の意見に賛同し、肩を落としていた。

「隆君はともかくあんた達はまず彼女がいないんだから、どっちにしろ暇なクリスマスを送ってたわよー。」

と華那は意地悪そうに言った。

忍と周一は、お前にも彼氏いないだろ!と言い返し、いつものように言い合いが始まった。

美穂は気が弱いなりに一緒懸命言い合いを制止しようとしていた。

「隆は彼女と一緒にクリスマスを過ごさないで試合に出てて大丈夫なのか?」

「ああ、デートが出来ないのは残念だけど、舞が応援に来てくれるって言ってたから全然大丈夫だよ。」

「そうか、いい彼女さんだな。というか相変わらず仲が良いな。羨ましいよ。」

「ああ!自慢の彼女だからな!!」

隆は幸せそうに言った。

隆の恋人は、舞という女性でサークルは違うが同じ大学だ。舞と隆は子供のころから仲が良かった。

高校でも共通の趣味があり、お互いひかれあい付き合ったらしい。よく試合の応援に来ていて、サークルメンバーにも差し入れをくれるので、ある一人を除いて皆舞のことを隆の彼女として認めていた。



「優〜!」華那が、走り寄ってきた。

言い合いが終わり、疲れた様子で残りのメンバーが追いついてきた。

「ねえねえ、優はもしクリスマスに試合がなかったら何してたの?」

と華那は優に問いかけた。

「俺は……、寝るかな。最近寝不足で…」

優はそう答えた。続けて、

「寝るといえば、最近変な夢を見るんだ。俺はずっと血まみれな場所に立っていて…。周りには沢山の死体があって………この世のものじゃない化け物がいるんだ。その化け物は体が人間で、首から上が狐なんだ。でも俺は恐怖を感じるわけでもなく、ある女と背を合わせて刀を持っていたよ…。」

「やだ…。なんか怖い……。」

美穂は不安げに呟いた。

「ある女って?知ってる人?」

華那が問う。

周一は興奮気味に、

「美人か?!なんか漫画みたいだな、おい!!」

と言った。

優は周一の発言に苦笑いしながら答えた。

「わからない…、でも顔は見えなかったけど後ろ姿を見た感じ綺麗な人だったよ。俺はその人をすごく信用してる感じがしたよ。」

華那は「へぇ……、そうなんだ。そんなに信用できる人なんだ…。」

と寂しそうに言ったがそのセリフは誰の耳にも届いてなかった。






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