第3話 ジョージ・E 下
その十数年後。無事に復興し、いつもの日々を過ごす『ネオ・シカゴ』の街中、アンティークな曲を流す
「HAHAHAHAHAHA!そいつは傑作だ!サイグウ自身にも何故か分からんとはな!」
黒人の大柄で筋肉質の壮年の男は、そう言ってから、またHAHAHAHAHAHA!と白い歯を見せて豪快に笑った。
今、喫茶店で流れているメロディーは、大昔に地球で流行した、ジャズ、という種類の曲である。
「笑い事じゃないのよ、ジョージ・E」痩せすぎの細身に色気のない白衣をまとった、銀縁眼鏡がよく似合うシルバーブロンドの若い女が苛立たしげに、コツコツと深青色のハイヒールのつま先でカフェテラスの床を小突きながら、「やっとの思いでサイグウに接触できたと思ったら、全てが白紙に戻ったも同然なのよ!」
「『不屈の不退転の覚悟こそが学者の礎である』、おいおいそう言ったのは君だぜ、プロフェッサー・N?」
男はくわえていた葉巻を太い指先で叩いて、灰皿に灰を落とす。
「……分かっているわ。これしきの事で諦めるなんて死んだ後で間に合うもの。何度だってアタックするわ。ただ、アプローチの方法は変えた方が良いかも知れないわね」
女教授は運ばれてきた熱い珈琲を飲んで、ふう、と一息ついた。いつものように落ち着いたのを見て、男は訊ねる。
「外交的にはどうするつもり――つまり俺はどうすれば良いんだ?」
「あくまでも友好的に、親善的に。この姿勢は極力維持するべきよ。向こうだって馬鹿じゃない、既にこちらの目的は悟られている。万が一私達が敵意及び害意を隠して近接したならば、今までの良好な関係は一瞬で断絶するから。そうなったら超大型『独立コロニー』と
「じゃあそのサイグウを拉致するのはどうだい?」
「それも一度は検討したのよ。けれど召使いがためらうほど言動がキツい娘が拉致されたって、大人しくこちらの操り人形になる確率は非常に低いじゃない。第一そうした場合のこちらの利益と不利益を考察すると、現状の関係の方が圧倒的に利益的なの」
「よし分かった。強引な手段はギリギリまで止めておけ、だな。留意しよう。すると、俺の方はほぼ今まで通りで大丈夫か?」
「ええ、今までのように仲良しこよしの真似をしていれば十分よ。私が別の手段を試みるわ――何度でも!」
「――『
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