第8話 豚そして基地
次の日、小舟に乗って対岸に渡る。
渡った先で木の板と紐で簡単なベースキャンプを作る。
「よーし ミーナと嬢ちゃんはオークを引っ張る囮だ。残りのやつは弓はあそことあの枝の上、槍と剣はそことあそこに隠れてくれ でミーナ、嬢ちゃんこれが薬だ」
茶色い小さな壺が渡される。
「薬ですか?」
「ああ オークのメスの匂いを集めたもんだ 髪に塗ってくれ」
うーん 少し臭いけどそこまででもないか
ミーナさんとお互いに塗り合う。
「ここに引き寄せればいいんですね?」
「ああ これでオスだけが釣れるはずだ ただ相手はオークだ。何かあったらすぐこの笛で知らせろ」
そう言って魔物の角で出来たらしき笛が渡される。
「オークってそんなに強いんですか?」
「いやっ 強さと言うより女性の場合 そのやつらは目があまり良くないから オークのメスと勘違いしてな えーと なんといったらいいか とにかく笛で知らせろ」
ああ あっち系の話か やっぱりあるのか
「リリーちゃん いくよ」
逃げる道を覚えながら慎重に進む。
昨日の森よりいっそう深い森を五分ほど歩いたところでミーナさんが足を止める。
「この辺で待とうか」
「はい」
20分ほどたって
本当にこんなんで出てくるのか?
と思い始めた時
ブモォォォォオ
森の奥から大きな鳴き声が聞こえてくる。
「リリーちゃん 逃げるわよ」
「はい」
ミーナさんと共に森の中を走る。時々後ろを振り替えるとピンクっぽい肌色で豚鼻、上を向いた鋭い牙 身長は二メートルを優に越えている これがオークか
パッと見ただけでも10頭はいる。
「あと少しよ」
そう言ってミーナさんがピッ ピッ ピッ と三回短く笛を鳴らす。
「よーし こっちだ」
リーダーの声のほうに走る。
「よくやった」
という声と同時に後ろで網が放たれてオークが絡め取られる。さらに矢がオークの顔に突き刺さり次々に倒れていく。
「一体を除いて皆殺しだ」
リーダーの掛け声で足を止められたオークは槍で突き殺される。
五分もしないうちに一体を除いて死に絶えた。
「フランツ レイン」
「了解です」
「ミーナと嬢ちゃんは川で頭を洗って来てくれ」
川でスッキリしてリーダーのところに戻る。
「フランツさんたちは何しに?」
「んっ ああ 傷ついたオークは自分の巣に帰るからそれをつけて巣の位置を特定するって訳だ。もう少ししたら出発してオークの巣を潰すから準備しておいてくれ」
「了解です」
オークの体は肉になる部分が多いので即席の小屋に運び込んでヨーゼフさんが主になって解体して船で対岸に持っていきドーラさんとマリナさんが塩漬けにして樽に詰めている。
三十分ほどしたところでレインさんが戻ってきた。
「リーダー! 見つけました。メス10子供15くらいです 巣は洞窟です」
「よしっ いくぞ ヨーゼフは解体を続けておいてくれ 嬢ちゃん」
「はいっ」
「オークの巣からここまでの道を作ってもらいたい。」
「道ってどういう?」
「人が数人横に広がって通れるくらいだ。オークを運ぶためってのとオークの巣をキャンプとして使いたいってのが理由だ。」
「分かりました」
「道は赤い布が巻いてあるからそれが目印だ頼むぞ ミーナ 嬢ちゃんを手伝ってやってくれ 残りは討伐にいくぞ といってもメスと子供だからな レイン 案内してくれ」
「ファイアー」
切り取った切り株を燃やす
「おりゃー」
ドゴォォォン
大きくて動かしにくいので蹴りで砕く。
そういえば聞きたいことがあった
「ミーナさん オークのメスって弱いんですか?」
ミーナさんは切り倒した木を道の脇に避けながら答える。
「オークのメスは基本子育てしかしないから弱いって聞いたわ でもお肉はメスの方が美味しいそうだからそっちは期待していいと思うわ」
「へー じゃあ心配しなくて大丈夫か」
ガウッ
と思ったらいきなりグレイウルフが飛び出してきた。
「アイス」
棍棒を作って殴り潰す。
グチャァァ
「イタッ」
「ミーナさんっっ」
ミーナさんは丸太を運んでたせいで反応が遅い。
ボコォォ ズゴォォ
狼どもを叩き殺して
「ミーナさん 大丈夫ですか?」
ミーナさんの鎧は斥候がメインなこともあって薄い。肘の辺りの鎧の隙間に爪があたったのかかなり深い傷だ。
「リリーちゃん 大丈夫よ お姉ちゃんに診てもらえばすぐに治るから」
そうはいってもいつ次の襲撃を受けるか解らない
「ヒール」
光とともに傷ついた部分が治っていく
光属性は適性が低い人が多く実用的に使うのは難しい。あまり知られたくなかったがミーナさんなら大丈夫だろう。
「リリーちゃん これって」
「ミーナさん 内緒にしてもらえますか」
「もちろんよ さすがリリーちゃん ありがとうね」
そう言ってミーナさんは私に抱きついてくる
「おーい 嬢ちゃんたちこっちは終わったぞ って 何してんだ?」
ようやくミーナさんから解放される
「リーダー ここでどのぐらいですか」
「そうだなあと残り三割くらいだな」
「意外と進んでたんですね」
「いやー さすが嬢ちゃんだぜ 本当はクラン全員でやって丸一日掛かることをこんな短時間でってな」
20分ほどしてオークの巣まで道が繋がる。
早速大八車がベースキャンプとオークの巣があった洞窟を往き来する。ベースキャンプから資材や道具を積んで帰りはオークの死体を積んで戻っていく。
私はリーダーたちと一緒に洞窟の周りに丸太で柵を作ったり堀を掘ったりして第二キャンプを整えている。
「嬢ちゃん 西側にあと三本 東側に十本だ」
「了解です」
ザクッ
剣で切り倒して枝を落とし、上を尖らせて丸太を切り出す。
「リーダー 洞窟の奥に湧水が有ります」
「よくやったフランツ 早速樽を設置しろ ミーナ 調理場はどうだ?」
「あと大きい石がいくつかと屋根用の板が必要です」
「そうか 石については東の方にまとまって転がってたぞ 板は嬢ちゃん あるか?」
さっき切ったのが余ってた気がする
「さっき 多目に切ったので門の辺りに有りませんか?」
「おっ これか ミーナ これでいけるか?」
「大丈夫です」
「解体場の方はどうだ?」
「難しいですね 井戸がないと水源が足りません」
「水源か わかった アルノルトはいるか?」
「リーダー アルノルトさんはヨーゼフさんと浮き橋作ってるはずですぜ」
アルノルトさん 確かもう五十才くらいの弓使いで 知識が豊富で頼られてる人だっけ
「そうだったか じゃあ井戸は明日にするか」
「リーダー」
「どうしたレイン」
「見張り台を忘れてます」
「おう しまったな 場所はどこにする?」
「門の脇にしては?」
「そうだな おーい嬢ちゃん」
「はーい」
「見張り台を作るから長くて柱になるやつを頼む」
「でもリーダー この辺は低くて曲がったのか柵にするならいいけど柱にはならない細い木ばっかりですよ」
「そうか うーん」
無いものはさすがに無理だ
「あっ リーダー そういえば道のそばにまっすぐな木がまとまって生えてるところがありましたよ」
「本当か?」
「はい リーダーと話した辺りなので少し距離は有りますが」
「あそこか 確かにあった気がするな よく覚えてたな ミーナ 嬢ちゃん 明日はその木を頼むぞ」
「分かりました」
「よーし そろそろ暗くなるから柵が終わったら 一旦村に戻るぞ」
ズズーーーン
バキッ
「よーし 運ぶぞ」
次の日私たちは見張り台用の木を切り倒していた。
「これで終わりですね?」
「ああ そうだな じゃあ次は第二キャンプの回りの木を伐ってくれ」
「回りの木ですか?」
「キャンプからすぐ森だと襲撃に気づきにくいからな 柵から出来れば五十メートルほどは更地になっている方がいいんだ 切った木は薪にでもしてくれ」
「はーい」
なんか昨日から木を伐ってばっかりな気がするな
第二キャンプに向かう途中でさっき伐った柱用の丸太を運んでいるのを追い越してキャンプの周りの伐採に取りかかる。
夕方、あらかた木を切り終えるころには井戸も完成して第二キャンプは拠点として申し分なくなった。
「おうしっ ミーナ グレイウルフをよせるぞ盛大にやれ」
「はい」
ミーナさんは作業中に出てきて倒したゴブリンの死体をまとめて火の中に放り込む。さらにウルフを寄せる匂いをだすブラッシカ草を火にくべる。
辺りには肉の焼ける臭いと独特の臭いが漂う。
待つこと五分
「来ました右から五体です。」
「アルノルト」
「構えろっ まだだ 引き付けろ…… 今だ! 射て」
弓から放たれた矢は三体を倒すもまだ向かってくるが柵に阻まれて足が止まったところを槍で突き殺される。
「まだ来ます左から七 正面から十です」
「やっぱり木を伐ったおかげで見やすいな 嬢ちゃん 左は頼んだ アルノルト目標は正面のやつだ 」
「「了解」」
堀を掘ったときに出た土の山の上に立つ。
「アイスエッジ」
柵の上から魔法がウルフたちに降り注いで中央の三体がズダボロになる
「アイスエッジ」
やや後ろを走っていた四体が倒れる
「アイスカッター」
薄い氷の刃が飛ぶ
ズシャァァア
一体を真っ二つにするがもう一体は上にとんでかわす。
「くらえっ」
そばにあった手頃な石を投げつける。
放たれた豪速球は飛び上がって姿勢を整えられないグレイウルフの頭に
グチャァ
あたり絶命させた。
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