第6話  報告そして開拓村へ

翌日は雨だったが街から出て南の森に来ていた。木が鬱蒼と繁ったここなら他の人には見られないだろう。いちおう街に落ち着いたことを両親に報告しにいこうと思う。


森の一番深いところまでくるとドラゴンの姿に戻る。人化に比べて随分と簡単に戻ることができた。しまったここからじゃ木が邪魔で飛び立てない。仕方がないので翼と足で何とか木のてっぺんまで登りそこから上に向かって飛び立つ。雨のなかとはいえそこはドラゴンものともせずに雲の上にでる。こうなると滑空がメインでいいので楽になる。行きはまっすぐ西に行ってここに来たから東を目指す。さらに高度をあげて地上から見えないようにする。



しばらくいくと雲のがなくなり地上が見えるようになる。かなりの速度がでているけど全然寒くは感じられない。空を飛ぶって気持ちー




飛びはじめてから一時間半、見覚えのある山が見えてきた。どうやら行きのときの母さんは私に気を使ってゆっくり飛んでくれていたようだ。

昼前の城に着地する。

「リリーぃぃー よく帰ってきた もう旅なんか行かなくていいんだぞ」

人化したのと同時に父さんに抱きつかれる。

「あら リリーちゃん帰ったの」

「あの山の近くの街に落ち着いたから報告をって」

「まあ 良かったわ それで今日は泊まっていく?」

「いや 今日はすぐに戻ろうと思う お父さんとお母さんに心配させたくなかっただけだし」

「そう  リリーちゃんいいこねぇ うれしいわ」

「リリー もういっちゃうのか?」

「うんっ じゃあ まあ今度」

そう言って龍化して 再び空に舞い上がる。

「リリー 待ってくれー」

後ろで父さんが何か言っているが気にしない




再び空高くを飛んで昼過ぎにはもとの森に帰ってきた。夕方には街に戻ることができた。



次の日の朝はミーティングが開かれた

「よーし 全員そろったな じゃあ始めるぞ」

「えーでは私から今年の入団試験は再来週に決定です。再来週の月火水の三日間の予定になっています」

「おう それで試験官だがオレとリリーの嬢ちゃんの二人だ。嬢ちゃんは知らないだろうから説明しとくと 試験官ってのは試験を受けるやつと戦ってそいつの実力を見るっていうのが仕事だ。北の方に10クラン合同の修練場があってな そこで戦って良さげなヤツがいたら声をかけるって流れだ  見極めはニックが担当だから嬢ちゃんは戦ってるだけでいい」

「分かりました」

「それで明日からなんだがベルンシュタイン男爵からの依頼で開拓村の周辺の魔物の掃討だ。期間は一週間ってところだ。」




ミーティングは詳細を詰めてから解散になったのでミーナさんにベルンシュタイン男爵について聞いてみることにした。

「ミーナさん ベルンシュタイン男爵ってどんな人ですか?」

「ああ そうね 簡単に言うとこのクランと懇意にしている貴族っていえばわかるかな  男爵からの依頼を最優先で受ける代わりにクランに箔をつけたり揉め事があったときの後ろ楯になってくれるっていう関係ね」

「ああ そうなんですか」

「何でもこの領を治める伯爵家の分家だってことでそれなりに力は持ってるから門を通るときほぼフリーパスで通れるって前リーダーが言ってたわね」

「へー」

あれは男爵のおかげかぁ 足を向けて寝れないな





「毛布とタオルはこっちにまとめて乗せて」

「はい」

「予備の矢はどうする?」

「こっちに誰か縛るひもちょうだい」

そんなわけで現在荷造りの真っ最中で慌ただしい。さすがに一週間の遠征にもなると必要になる物資の量も多い。

「砥石はここいけるかな?」

「こっちはこれ以上はまずい あっちにしろ」

武器の予備や整備用品も必要になるから大八車を総動員して運ぶ予定だ。

「おーし 大体できたな 明日は日の出と共にでるから早めに寝とけよー」

「了解でーす」


人間になっていると眠るのが気持ちよくてたまらない。睡眠は思ったよりいい娯楽だ。今日は早めに寝るかな💤




次の朝 日が上る前に恒例のほっぺプニプニで起こされてホームの前に集合する。今回は入団試験の準備をするニックさん以外はドーラさんやマリナさんもみんな一緒に開拓村に向かう。

「ニック 留守は任せた」

「任された」

「よーし 出発!!」

明け方の赤い空を右手に見ながら北門からの道を進む。こないだグレイウルフを狩りに来たときに通った川まで来ると休憩だ。

ドーラさんのサンドイッチを食べてエネルギーを補給すると先を急ぐ。

しばらく歩くと両側が切り立った崖になった隘路に差し掛かる。

「おーい 嬢ちゃん ちょっと来てくれ」

先頭にいるリーダーが私を呼ぶ

「ミーナさんちょっとお願いします。」

「わかったわ」

大八車をミーナさんに変わってもらい前にいくと

「うわぁ」

通路の右半分が一昨日の雨で崖が崩れたのか大きな岩のせいで通れない。

「嬢ちゃん 見ての通りだ  どうにかなるか?」

「分かりました やってみます」

小声で唱えているふりをしてから魔法を発動する

「アイスランス」

バキィィィー

猛スピードで飛んでいった氷の槍は岩にひびを入れて突き刺さる。

魔法じゃらちが開かないか

髪を後ろでたばねてから荷物として持ってきた鎧の頭部を被る。

「リーダー ちょっと下がっていてくださいね」

そう言うと助走をつけて岩に向かう。体の開きを意識しながら左足が岩の直前になるように最後の一歩を踏み込んみ、体の勢いと回転 腕の伸びを全て使って岩のひび割れたところを撃ち抜く。

ズガァァァン

ものすごい音がしてひびが岩全体に広がり細かい破片に砕け散る。

「さっすが嬢ちゃんだぜ よくやってくれた   凄まじいな」

「ぷはー さすがに疲れました」

頭部を外してから答える。魔法より殴るほうが早いというのもなんだかな

「おう 嬢ちゃんは休んでてくれ  おうしっ この破片をさっさと片付けて村に向かうぞ」

「了解!」




クランメンバーには随分感謝された。何でも私がいなかったら何重にも縄を掛けて少しずつ全員で引っ張って谷から運び出す必要があったんだとか。




30分ほどで破片が片付いて再び開拓村に進み出す。一時間もいくと開拓村らしきものが見えてきた。村は川のほとりに位置していて川の向こう側と上流には森が広がっている。


「おー 見えてきたな ちょっとここで待っていてくれ 先に行ってくる」

そういってリーダーは一人で村に入って行く。


マリナさんとミーナさんに髪をいじくられること30分ポニーテールに結い上がったときようやくリーダーが一人の男と一緒に出てくる。男の年齢は30代ほどど身なりの整った落ち着がある。


「おーい ちょっと集合」

リーダーがメンバーを集める。

「紹介しよう ベルンシュタイン男爵の家臣のギリアム様だ。」

「ギリアムという。今回はよろしく頼む ではケインどのこれで」

必要なことだけ言うとすぐに踵を返して急ぎぎみに村に帰っていった。どうやらかなり忙しいらしい。

「よし 今日は村に入って少し周りの調査って感じだ」


村に入って未使用の倉庫を宿として使う。私たちが荷物を整理しているとリーダーと何人かが肉と果物を持ってどこかに行くようだ。

「リーダー どこ行くんですか?」

「おう嬢ちゃん ああこれか? これは調査用のエサだよ。森の中に適当に置いておいてどれが食べられているかとか歯形とかからどんな魔物がいるか分かるんだよ まあそれを読み取るのは俺じゃなくてこのヨーゼフだがな」

リーダーは右にいた茶髪でパッとしない男の人の肩に手を置く。こんな人いたっけ

「ってやっぱり覚えてなかったみたいだな」

ヤバイっ 顔に出ていたらしい

「新人恒例の ヨーゼフを忘れる だな」

「改めましてヨーゼフです。得意なことは魔物の識別です。」

「なんかスミマセン」



森に入って行くリーダーを見送って再び倉庫の荷ほどきをする。

「あっ リリーちゃんこの鍋外にいるドーラさんのとこに持ってってくれる?」

「はーい」

大きな鍋を担いで倉庫の外に出ると、井戸の近くでドーラさんが何かを組み上げてる。

「ドーラさん この鍋どこに置けばいいですか?」

「おや リリーちゃん  えーとそうだね」

そう言って荷物から絨毯を取り出して石でできた倉庫の基礎部分にしく

「ここにおいて」

「よっこいしょっと」


「ドーラさん それなんですか?」

ドーラさんが組んでいるものを聞いてみる

「ああ これは竃だよ  倉庫には煮炊きするところはないから外でやるのさ」

「なるほど」


そのまま荷ほどきを続けて日の暮れる前に終わった。夕食を食べてそのまま就寝になった。


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