人外転生 転生したらドラゴンになってしまったようです
スース・S・ドメスティクス
第1話 転生そして成長
「ああ 疲れた」
会社から帰って家に帰る。
「いつかあんな家に住みたいもんだ」
地元の駅から家に帰る途中のタワーマンション群を見てぼやく。あるマンションの横を通りかかった時目の前にいきなりフォークが降ってきた。マンションからのイタズラか?「危ねえ!!」そう叫ぼうと上を見たとき目の前に見えたのは迫り来る目覚まし時計のシルエットだった。
ガツンッ
という音とともに俺の意識は沈んでいった。
うんっ
目を開けると真っ暗で狭いところに押し込まれているようだ。あれっ何があったんだ?会社を出たところから記憶がない。助けを呼ぼうにもどうも声も出ない何とか出ようともがく。
コツンッ コツンッ
「あらっ いよいよ生まれるわ」
「どっ どうすれば」
何か聞こえるがいまいち聞き取れない。そんなことよりここから出たくてしょうがない
コツンッ ピキッ ピキピキッ
もう少し
パキンッ
ようやく外に出れる!何とかもがいてひび割れから外に首を出して初めて見たのは
「あっ 女の子だわ 私がお母さんよ」
と話すモ〇ハンのレ〇ア亜種のような化け物と
「女だと ならばお前はリリーだ 私はお前の父だ よろしくリリー」
と言いながら近づいてくる金髪碧眼の美青年だった。
俺は気絶した。
あれから五年たった。そのなかで色々わかった。「俺」はおそらく死んで異世界に生まれ変わったこと。あの化け物と青年が今の俺の両親であること。そして今の俺の体リリーという名前のがドラゴンでさらに女であること。
「リリーちゃん ごはんよー」
「はーい お母さん」
今俺を呼んだのが母親のレイナだ。俺が生まれたときにはドラゴンの姿をとっていたが普段は大抵人の姿になっている。人の姿では桃色の髪に琥珀色の目をした美人だ。人の姿をとることを人化と言うそうだが俺には未だに出来ない。この母さん、何とこの大陸の北半分を縄張りにしているドラゴンらしい。あるときちょっと暇になったので住処の山の頂上に百年ほどかけて巨大な城を作ったのだが、それを見た人間が魔王が現れたと騒ぎ魔王を倒そうと騎士と冒険者からなる20000人の軍勢を送り出した。しかし母さんの住む魔の山の周りには魔物が多く城にたどり着いたときにはついに一人になってしまった。城の外で行き倒れていた青年に一目惚れした母さんはそのままその青年を夫にした。まあ要するに俺の父さんだな。そしてドラゴンと人では寿命が桁違いに違うので父さんは老化を抑える薬を毎日飲んでいる。
妙に豪華な皿で焼いただけの魔物の肉を食べる。この皿も母さんが城と一緒に暇にあかせて作ったものだそうだ。伯爵家の子息であった父さんでさえ驚いたそうなので相当高級なものらしい。今の俺はもちろん手で食べることは出来ないので直接かぶりつくことになる。
「リリー 口の周りがベタベタだぞ」
そう言いながら父さんが俺の口の周りを拭く。今の俺の大きさは一メートルもないので父さんに簡単に抱き抱えられる。膝の上にのせられて撫でられるとだんだん眠くなってくる。最後に小さなあくびをしておやすみ💤
ドラゴンは寿命が分からないほど長いが成長は人間のそれより少し遅い程度だ。だから今の俺の年齢は人間に換算すると三才から四才にあたるのだ。何が言いたいかと言うと俺がお漏らしするのは自然なことだということだ。
「あらあら ドライッ クリーン」
母さんが魔法を唱えると俺のお漏らしは乾いてなくなりお尻はスルッと洗われていた。そうこの世界には魔法がある。最も父さんによると魔法名だけで発動するのは見たことがないそうなでもっと長い呪文を唱えるそうだ。ちなみに俺は今のところ氷を出すアイスの魔法しか使えないが呪文は唱えないのでドラゴンは呪文を唱えなくても魔法が使えるのかもしれない。
「リリーちゃん そろそろ飛ぶ訓練をする時期だわ」
「飛ぶ訓練?」
「そうよ なんたってドラゴンなんだから飛ばなきゃはじまらないわ」
ということで母さんと俺は今城の外の開けたところに来ている。外から見ると余計に城の巨大さと美しさがわかるな。全体が真っ白な石で作られておりあちこちに金や銀の美しい装飾が為されている。一番高いところは十階建てのビルほどもあり遠くからでもよく見えそうだ。
「さあ 先ずは翼を上下に羽ばたくのよ」
ドラゴンの姿に戻った母の声で城から意識を戻す。
「はーい」
言われた通りに翼を上下する。
少し体が軽くなったと思ったら
フワリッ
あっさり体が浮き上がる
「わわっ」
「リリーちゃん飲み込みが早いわ もう浮き上がるなんて さすが私の娘」
「お母さん きついっ」
だんだん疲れてきた もう落ちると思ったとき
「ウィンド」
母さんの魔法でゆっくり地面に下ろされた。
ふぅー助かった
まあ今の体は頑丈だから落ちたとしても痛くはないだろうけど
「じゃあ今度は私が持ち上げるから一緒に飛んでみましょうか」
そういうと母さんはがっしりとした足で器用に俺の翼をつかむと
「えっ ちょっちょっとまっ」
ブワリと空に舞い上がった。ゆっくり羽ばたいてくれるので数分もすると下を見渡す余裕も出てきた。真下にはさっきまでいた城と広場がみえそこから下がっていくと
「あれは?」
「ああ 霧の森よ」
「霧の森?」
「私たちが住んでるこの山は麓には魔の森っていう魔物の多い森が広がっててね。そこから山にむかって大蛇の森っていう蛇だらけの森があってその上に霧の森っていうその名の通りに年中霧に包まれた森があるのよ」
へーえ この山随分物騒な山なのか
「じゃあお父さんはあそこを?」
「ええ 人の身で登ってきたのよ」
うわぁ 父さんも相当だな
魔の森の外には小さくてほとんど見えないが街らしきものがある。
「あれは街ですか?」
「そうよ 私もときどき行っているわ リリーちゃんも大きくなったらいきましょうね」
「はいっ」
相変わらず城からほとんど出ない生活を続けて二十才になった。
体もずいぶん大きくなって今ではだいたい尻尾を含めて四メートルは超えていると思う。使える魔法も氷系統に加え火系統風系統と治癒魔法と呼ばれる光系統を使えるようになった。
そして
「良くできたわ リリーちゃん」
「レイナに似てかわいいぞ」
俺はついに人化に成功した。
振り替えって鏡を見る。年の頃は中学生くらいだろうか。龍のときの私の体を表すかのような白い肌、腰の少し上まで伸びる銀のストレート、目は母さんと同じ琥珀色、幼いながらも美しさをみてとれる可愛らしい少女がそこにいた。
これが俺 いやそろそろ前世とは区切りをつけよう 私の体かぁ
少し跳ねてみる 違和感は以外とない。手足を動かしたり言葉をしゃべったり うんっ 問題ない。最後に思いっきり壁を殴りつける。
ドゴォォォン
壁は少しへこむが龍のときと同じように痛みはほとんどない。下手したら龍のときより丈夫かもしれない。
よしっ 少し溜めてから吐き出す
「お父さん お母さん 私一人で旅がしたい」
「ええ いいわよ」
「やっぱ ……え? いいの?」
「あら言ってなかったかしら ドラゴンは若いときに何度か外の世界に出ていくのよ あなたは外に興味が強いからそろそろ言い出すと思ってたわ」
「えっ 危ないとか 寂しいとか……」
「危ないってあなたはドラゴンなのよ そんなわけないでしょ それに寂しくなったら飛んでいけばいいんだから」
「リリー レイナ 父さんは飛べないんだぞー 寂しいぞ」
「あなた それじゃリリーちゃんの為にならないの我慢しなさい さあリリーちゃん 準備をするわよ っとその前にいくつか約束して欲しいことがあるわ」
「約束?」
「一つ目、この大陸の北半分からはでないこと。つまり私の縄張りからでないこと」
「はい」
前に縄張りは庭みたいなものって言ってたっけ、つまりこの旅は自分の家の庭で子供が駆け回るのを見るようなものか。
「二つ目、常に人間の姿でいること。そして竜人だってことにして龍であることを知られないこと。」
「竜人?」
「竜人っていうのは生まれつき力や魔力が強い人のことよ。珍しいけどいないことではないわ、ちなみにあなたのお父さんもそうよ わかったかしら」
「うん」
「じゃあ最後に今からあげるものは人にあげたりしちゃダメよ」
「まずは私の鱗で作った鎧よ」
といいながら出てきたのは騎士が身につけていそうなピンクがかった全身鎧だった。
「これを着るの?この体に鎧って要らないと思うんだけど」
「いいじゃないの 自分の娘に鱗で作った鎧を着せるのが夢だったのよ それにこれを着ていれば自分の鱗で作ったからか何となくあなたの場所がわかるのよ そしてこの剣よ」
次に出てきたのはいかにもファンタジーですって感じの西洋剣だった。
「お隣のイリスちゃんの逆鱗から作った剣よ。そこまで派手ではないけど切れ味は抜群よ」
「逆鱗ですか?」
逆鱗ってとったら怒るところじゃなかったっけ
「あら知らなかったかしら たまにね鱗が逆向きに生えちゃうことがあってそれを逆鱗って言って美容の敵よ だから定期的にお互いの逆鱗を取っていたのよ」
「へっ へー」なんか思っていたのと違う。白髪とかの感覚と近いのか?
まあありがたく受け取っておこう
「それからこの本よ 人間界のことをよくまとめておいたのよ」
「ありがとう」
これは嬉しい あまりにも知らすぎると困るからな
「それから人間のお金と」
ずっしり重そうな袋がドンと置かれる
「代えの服と回復用のポーションと予備の剣と え~とそれから」
「ちょっと待って母さんそんなに持っていけないよ」
「これがあるから大丈夫よ」
といって出してきたのは背中に背負う袋 ナップサックというやつだろうか である。
「袋 ですよね」
「そうよ ただ普通の袋じゃなくて見た目の20倍も入るのよ」
アイテムボックスみたいなやつか
「袋の中にいれたものを無理矢理潰して収納する魔法がついているから生き物いれると死んじゃうから気をつけて あとこの袋から取り出すところは見られちゃダメよ」
「はい」
なんか強引だった。空間を広げるんじゃなくて物の方を潰すのか。逆転の発想だな。
鎧を身につけて剣を腰につるしてもう一度約束を確認して準備は整った。
「それじゃあ 夜までゆっくりしましょ」
「えっ 出発するのでは」
「ここから出発したら魔の森から出てくる変な人になっちゃうわ
遠くにいくのに昼に出たら飛んでるとこをたくさんの人に見られちゃってリリーちゃんがドラゴンだって気付かれるかも知れないわ」
「はーい」
仕方ないもらった本でも読むか
辺りが暗くなって来た。いよいよ出発だ。今私は母さんの背中にまたがっている。
「行ってくるね お父さん」
「リリー 何かあったらすぐに帰ってくるんだぞ それからリリーはかわいいから男に絡まれると思うが迷わず殴り飛ばしていいんだぞ それから…」
「あなた いい加減に」
「わっわかった ではリリー 楽しんでくるんだぞ」
「うん わかった じゃあ行ってきまーす」
こうして私の異世界ライフが幕を開けた
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