俺以外みんな異世界転生者だったんだが。

@NONASI

1.俺の親友が異世界転生者だったんだが。

 ○月×日、それは俺にとって大きな意味を持つ日だ。

 ーなんて大げさに言ってみたが、俺〈伊能

忠梨〉の十七歳の誕生日と言うだけである。

 誕生日くらいはキメてこうと鏡で自慢のマッシュヘアーを整え、長年連れ添ってきた相棒をかけ、学校へと向かった。

 

 教室に着くなり俺はおもむろに教室のドアを開けた。

 クラスメート数人が、

「おはよう!誕生日おめでと!」

 と挨拶に添えるように言ってきた。

 まあ…仲の良い友達でもなければそんなものだろ。と俺はさわやかスマイルで

「ありがとう!」

 とだだけ言って鞄を置いて、自分の席に座るなり後ろを向いた。

 後ろの席には俺の親友、〈飛騨 翼〉がいるからだ。さぁ親友よ俺に祝福を!

 「なぁ忠梨」

 どんな祝い方をしてくれるのだろう、そう思うとにやけが止まらなくなる。だが、あくまでも鈍感な感じで。

 「どうした?」

 翼は俯いたまま口を開いた。

 「俺は今、お前に言おうか迷っていることがあるんだが」

 おいちょっと待て。祝ってくれるんじゃないのか?

 だが、「気づいていない俺」はそれを口には出せなかった。

 「なんだよ、そんな言い方されると気になるだろ」

 言い方なんて正直どうでもいい、親友である俺の誕生日より大事な事ってなんだ。そんなの気になるに決まってる。

 「俺、実は…あー実は…えー」

 翼はまだ迷っていて、肝心なところを言おうとすると口が止まる。

 ええぃもうじれったい!俺は机をドンッと叩いた。

 「なんだよ、言ってくれ!俺たち親友だろ?」

 机の大きな音で教室中の視線が俺たちに集まっていた。

 普段注目されない分、俺はこの状況に戸惑っていた。

 だが、俺と違って翼は至って冷静だった。というより、たぶん今はあいつの中でもっと優先すべき事があるのだろう。

 「忠梨、場所を変えよう」

 俺はコクリと頷き、翼と教室を後にした。


 「よし、ここにしよう」

 ドアを開けて振り向いた翼はもう決心が付いた様子だった。

 それはいいとして、階段を上り始めた時点で察してはいたが、なにも屋上まで来る必要はないだろ…。

 「それで、結局なんなんだ?」

 屋上にまで来たんだ、くだらないことだったらただじゃおかないぞ。

 翼はさっきまでためらっていたことが嘘のようにはっきりと言いきった。

 「俺、実はー異世界転生者なんだ!」

 ……は?

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