第188話 夜に外出すんなよ


 俺はおらおら、おいおい、せいせいの三人組をこってり絞ると、やつらはボロボロと話し始めた。だが、さほど大事な話は一切なかった。

 せいぜいが昔馴染みのやつらの話をチラッと聞けたくらいだ。


 「おいおい、あんた、ロスト・シティのキレ野郎の知り合いかよ!」


 「まぁ。たまに依頼受けてた程度だな」


 キレ野郎というのは、ロスト・シティの一角を担っているどんくさい女だ。まぁ、こいつらは兄の方を指して言ってるんだろうが。


 「せいせい! あの野郎! うちのボスが居ないからって調子に乗ってんだよ! しかもあのうるせえハザマの野郎も戻りやがって! こちとら商売あがったりでよ? 女の一人や二人連れていかないとボスに面目たたないんだよ!」


 「知るか……と言いたいところだけど、ここでの用事済ませたらお前らのボスんとこ行く予定だ、偽装通行証とか貰ったからよ。俺たちを案内したことにすればまぁ、面目躍如にはなるだろ」


 「おらおら! マジかよ! 最高だなあんた!!」


 「ついでだ。ついで」


 その後、やることあるからその辺うろついてろと指示を出し、やつらを解散させた。今日一日で元王様の伝令係を見つけれるなんて思ってはいないし、夕方くらいにお邪魔しよう。夜のこの国では暗黙の了解だが、外出禁止だ。


 「ガリレス、この国の方がしっくり来てるぞ」


 「別段うれしくねえけど、まぁ、一応故郷だしな」


 「へ~! ここに住んでたんですか~!」


 「いや、ここじゃねえけど、ロスト・シティっていう場所で生まれたんだよ」


 「ロスト・シティ? あ~! あの、色々怖いもの知らずさんたちが集まる自由街ですか~?」


 「そんな良いとこじゃねえけどな。まぁ、そんなとこ。一応、さっきのやつらのボスとか他の区画の長的なやつらとは未だに依頼とかでつながりがある。一つだけ絶対関わりたくない連中も居るけど。まぁ、どこを取ってもどいつもこいつも悪人だ」


 「そんなやつのところへ行くのか?」


 「しょうがねえさ、俺たちをすんなり通してくれる魔法の書類を用意してくれたおっさんに挨拶くらいしないとな」


 説明を一通り終わらせ、探索作業に戻る。だが、未だに魔力反応が見られない。一応、範囲を広くして探しているが、全然だ。隠れるのが上手い手練れか、たまたまこの街に居ないか。そんなこんなで夕方に差し掛かった。


 「そろそろ撤収するか」


 「え~! 早くないですか~?」


 「この国で普通の人間が外出なんてしたら食ってくれと同義だぞ」


 「ん? どういうことだ?」


 「そんなん後々。さっきの三バカ捕まえておっさんとこ行くぞ」


 裏路地の店でたむろって居た三バカを見つけ、声を掛ける。するとせいせい野郎が震えながら俺を見つめた。


 「せいせい遅いぜ! あのクソったれどもに見つかっちまうよ」


 「慌てるな。あいつらならまだ現れないさ。まだ夕方だ」


 「おうおう! ならさっさと行こうぜ!」


 「みなさん~、何をそんなに怖がってるんですか~?」


 「おいおい! 知らねえのかよ! そういえばおたくらどこ出身だよ!」


 「俺たちは……いや、後でお前らのボスと会談した時、分かるだろ」


 「せいせい! 俺らはあんたら信じて連れてくんだぜ!」


 「降伏条件だっただけだろ。それともまた殴り合いがしたいのか?」


 「お前はしてないくせに威張るな」


 「今、そういう無粋なツッコミ要らないから」


 ならばとツイルは足蹴りをし、何もない空中を裂いた。それを見た三バカは諦めた様に俺たちの案内を始め、ロスト・シティまでは少し掛かるため、俺たちはやつらの用意していた馬車に乗り込み、ロスト・シティへ向かった。


 「ロスト・シティに付いたら、速攻おっさんとこ行くから。おっさんとこ行って外出るなよ。まぁ、あのおっさんの敷地内なら大丈夫かもしれねえけど。万が一な」


 ロスト・シティ初めての二人の浮世離れした女性二人に説明するが、二人はぽかんとしたままだ。そういえば、あいつらの説明をしていないせいかと思いなおった俺は再度口を開いた。


 「このロスト・シティには四つの派閥がある。一つは馬車の前の方で居るやつらのグループ。俺たちが向かうグループだ。ロスト・シティの西に位置している。そして、掃きだめみたいな東の隅に居るのが人道的なグループ。比較的まともだ。そして、北全域を治めているのが最大派閥だ。だが、派閥的には大したことは無いが南にはあるクソどもが居る。それは――――」


 「おいおい! 付いたぜ!」


 話の途中だが、付いてしまったようだ。ロスト・シティ。俺たちは降りて、まるで牢獄のような街の西入り口を見つめた。白骨死体がぶら下がっている看板がある。


 「本物ですかね~……」


 「さぁな。どちらにしろ、悪趣味な街だ」


 何の色合いもない灰色の街。壊れてない店なんかほとんどない。街の道もボロボロだ。補整なんか誰もしやしねえ。コンクリートの下から生えている草が生々しい。


 「せいせい! 急いでくれよ~!」


 「ああ、分かった」


 俺らはそんな荒廃した街にやって来てしまった。俺は戻ってきた。このふざけた街に。


 

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