第67話 僕の傍に居るなら怒る理由はない


 「ああ!! アニスッ! や、やめ!」


 俺は情けない声を上げてしまう。だが、アニスがこんなに上手いとは思わないだろ。だが、上手い。


 「ふふん、アービス、可愛いな、気持ちいのかい?」


 アニスの挑発的な声が下の方から聞こえる。くそっ、悔しい。ここは見栄を張ろう。


 「い、いや、き、気持ちよくなんか……」


 「……ふーん、じゃあ、これは?」


 「ああ、ああああっっ!」


 ああああああああああ!!! そ、そこはやばい! まずい!! マジで気持ちよすぎる!!


 「アービス!」


 「んぎゃっ!? なっ! なんで尻を揉んだ!?」


 「つい興奮してしまった」


 「あのなぁ……」


 「ぼ、僕にもしてくれ……」


 アニスの照れきった声が俺の耳に入ってくる。そう、アニスは俺の足を揉んでいたのだ。クライシスさんの見舞いの後、デートと言いながら来たのは俺の家。なぜか入ってきたときにメイドのセルディアさんが居なかったのが気になったが、アニスは俺を大きいベッドに寝転がらせると足を出せと強要し、素直に足を出したらこうなった。

 次は俺の番か。仕方ないな。


 「ほら、アニス、足を向けろ」


 「ん」


 アニスはベッドに寝転がると、足を俺の膝に乗せた。アニスの背中はとても薄く、お尻も小さい。短パンのせいで思い切り見えている足も白くて綺麗だった。


 「さ、触るぞ」


 「ああ、頼む」


 「ここか?」


 「ああっ!」


 足の裏をくすぐるように触り、少し押すとアニスが色っぽい声を出してくる。おいおい、勘弁してくれ、どんな声出してんだ。ていうか、こいつの足、すべすべしすぎだろ。ずっと触ってたいくらいだ。


 「おらおら」


 「ああっ! ああんぅ!」


 気を紛らわそうと声を出して押すがアニスの喘ぎ声がどんどん大きくなる。耳を塞ぎたくなる……。


 「あの、アニ――――」


 「はぁはぁ、な、なんだい? も、もう終わり……?」


 や、やばい、こいつ、足揉まれるの実は苦手だろ! めっちゃ涙目でこっち見てきやがった。頬が赤くなりまくりじゃねえか。


 「いや、終わりなわけないだろ?」


 「あ、ああん! んっ! んんっ!! ああっ!」


 なんか嗜虐心が沸いてしまい、すごい勢いで揉んでしまったが、アニスの肩がめっちゃ上下してやがる。薄っすら汗を掻いているのが俺の心が沸き出っていく。


 「お前、なんでそんな声出すんだよ……」


 「な、なにがだい? 僕は平気……だよ?」


 「じゃあ、太ももだな」


 「へ?」


 「おらおらおらおらら!」


 「あああん! やっ! そ、そこ! やっ!」


 た、楽しい! アニスにこんなにマウント取れたの初めてだぞ。超楽しい。調子に乗ってどんどん揉んでいく。太ももめっちゃ触るの気持ちいい。


 「ア、アービス、も、もういいよぉ、や、やめてぇ」


 「……へ、平気なんだろ?」


 「む、無理ぃ、ごめん、アービス、無理だからぁ、強がってただけだからぁ」


 「ず、随分、素直だな……な、泣いてる?」


 「泣いてない!」


 アニスの足を揉むのを辞め、顔の方を見ると完全に顔を紅潮させ、息を荒くし、涙目だった。アニスがこんなになるとは……。


 「わ、悪かった、アニス」


 「はぁはぁ、良いんだよ……アービス、ありがとう、気持ち良かったよ」


 アニスはベッドの上で這うように動くと俺の腹部に抱き着いてきた。俺はそれを快く受け止め、頭を撫でる。


 「アービス、アービス」


 「あいよ」


 「アービス、アービス、アービス」


 俺の名前を連呼しながら俺のお腹に頭を押し付けるアニス。さすがに今回はやりすぎた俺が悪いからな。好きなだけ甘やかしてやろう。まぁ、いつもだけど。


 「えいっ!」


 「うおっ!?」


 するとなぜか俺を押し倒し、俺の頬を掴んで伸ばしたり、押したりしてきた。


 「ら、らに?」


 「お返し、アービスが意地悪なのと僕を置いて他の女の子と仲良くなっていたから」


 そう言うと俺の頬から手を離し、俺の目を見てきた。綺麗な瞳と俺の瞳が交わるとさきほどの行為の後だと恥ずかしく目を逸らしてしまった。


 「やっぱり、怒ってるか? 悪かったなデート中に」


 「ううん、こうやって僕の傍にいてくれるから良い、ほら、目を逸らさないで」


 そう言うとアニスは俺の頬を優しく掴むと目を合わすように顔を真正面に戻された。


 「目が綺麗ですね……」


 「あ、ありがとう、アービスの目も好きだよ」


 「まじか、ありがとう、アニス」


 俺とアニスはそう言って笑い合う、すると、なぜかバイオリンの音が聞こえてきた。綺麗な音色だ。


 「な、なんだい? この音は?」


 「さぁ?」


 「ほら、二人とも、気にせず、やっちゃってください」


 「おい、クソメイド何をしている」


 俺とアニスがバイオリンの音に困惑していると寝室にやって来たのはバイオリンを片手に弾くセルディアさんだった。アニスが不快感を表していく。


 「こんな事もあろうかと、バイオリンを用意しまして、この前のゴスロリ服のお礼に二人のムード作りをしてあげようかと思いまして」


 「いや、そんなムード出されても……」


 「気にせずイチャイチャしてください」


 「お前が……」


 「いえ、私への感謝は後で聞きますので、さぁさぁ!」


 「お前が邪魔だ!」


 アニスの喝が飛ぶと、セルディアさんはバイオリンで低く悲しい音を出しながら出て行った。なんだったんだあの人。


 「なんだったんだ……」


 「さぁな、まったく……」


 アニスと俺はそう言い合い、抱きしめ合った。

 

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