ヤンデレ僕っ子幼馴染の勇者に愛され、無駄に個性が尖った魔術士たちに振り回される今日この頃。
四悪
1章
第0話 アメーバは永久欠番だ!
俺の名前は
――――――
「というわけで、よろしくお願いします!」
「はぁ、何をよろしくすれば良いのか分からんが、分かった、で、転生届は?」
「えっと書きました」
「どれどれ」
俺は死んだあと、気が付いたらこの変なオフィスに居た。六畳間くらいのオフィスにデスクが一つあり、そこに先ほどから偉そうな男が座っており、なぜか俺は正座をして、男を見上げる形になっていた。
そして、来た際に渡され、書いた紙を、デスクにふんぞり返った痩せ型の偉そうな男に手渡した。転生届というのはよく分からなかったが、字からして生まれ変わりなのだろう。そしたら今度こそ警察になり、悪人をこらしめるために頑張ろう。
にしてもこのオフィスは酷いな。デスクの背後はゴミ溜めだし、デスクにも濁った水が置いてあったりした。
「ふはっはははっは!!」
え? 怖い。なんで急に笑い出したんだこの人。
俺がデスクの評価をしていると転生届を見た男が笑い出した。
「あ、あの、なんで笑ってるんですか?」
「これが笑わずに居られるかっ!! 共犯者が居たのに気づかず刺殺ってバカかお前は! お前、前世警察のキャリア組のくせに一人で突っ走って犯人に殺されるって間抜けか! てゆうかお前死ぬ前、バッジも制服も貰ってないまだ警察未満の分際で立ち向かおうとかバカかっ! もう一度言おう、バカか!」
殴り飛ばしたかったが、図星だった。昔から後先考えずに困っている人を助けてしまう癖があり、学生時代に凶器を持った犯人などにあったら遅かれ早かれ死んでいたのかもしれない。
「まぁ、でもそんなバカが嫌いじゃないので、お前のアメーバへの転生を取り消して勇者にしようと思いますっ! 喜べ! ほら、勇者だぞ! 勇者!」
「はっ!? あの勇者って……」
てゆうか、それ検討する前アメーバだったの!? 来世、アメーバとかマジで嫌だぞ!? だが、勇者も分からん。
俺の疑問に男はまるで信じられない物を見るような目で見てきた。
「え? 勇者知らんの? ボロクエとかアサファンとかやったことないの? あ、もしかして、アサファンて呼び方じゃなくてAFの方が良い? アサファン派とAF派があるんだけど、俺は断然アサファ―――」
「そんなことより!」
「な、なんだ」
「ゲームの勇者は知っていますよ! でも俺がそれになるってどういうことですか!!」
「お前の
「俺、普通に前世の世界が良いんですけど!」
そんなゲーム世界に入りたいわけじゃないし、俺は警察になりたかったんだ! いや、なってたはずだったんだ!
「いや、あのな、お前の前世の世界の人間って転生倍率が高いんだよ、後、世界で五十万人くらい死んでやっと転生枠が空く感じだな、無理無理、あ、アメーバ枠なら空いてるけど」
「アメーバは絶対嫌です!!! 待ちますよ! 五十万人!」
「お前、最低だな、五十万人死ぬの待ちますって……本当に警察目指してんのかっ!!」
うっ、図星だ、今、俺は自分の事ばかり考えていた。説教を垂れるのが目の前の男じゃなかったらかなり落ち込んでいただろう。
「そ、それは……だからって勇者とか無理ですよ!」
「無理じゃない! 無理というやつは嘘つきです!」
どこの社長だお前は!! しかもさっきこいつも無理無理って言ってたよな?
「あんたもさっきから無理無理って言ってんじゃん!!」
「お前のしょうもないわがままの無理と世界のシステムの無理はな! お前の世界で言うヒキニートの明日から頑張ると、入院したプロ野球選手が退院一日前に退院祝いに来た同じチームの仲間に言う明日から頑張るくらいの差があるんだよ!!」
「いや的確すぎてわかりやすいですけど!! じゃあ、勇者になって俺にどうしろって言うんだよ!!」
「そんなもんは転生した場所で村人Aにでも聞いてみろ、きっと、ここは始まりの村だよってニコニコしながら教えてくれるだろ」
「完全にゲームじゃん!!」
「もううるさい! 俺、疲れた! 二十歳の警察キャリア組のくせに状況判断も何も考えずに刺殺されたバカガキ相手にすんの俺、すげー疲れた!! さっさと転生しろよー、もういいじゃん、勇者になったら魔王倒せばいいじゃん、なんならロシがポルーンしてラージすれば良いじゃん!」
この男、完全にデスクに顔を横に付け、だらけきった態度を出した。まずこいつは誰なんだ。神様だとしたら俺はこの世界に裏切られた気分になるぞ。てゆうかボロクエとAFから離れろ。
にしても断ったらアメーバなら、なるしかないのか……勇者に。
「じゃあ、百歩譲って勇者になりますけど、生まれ変わってすぐ死んだりとかは……」
「あるかもね、大丈夫! アメーバ枠は永久欠番にしといてるから安心しろ」
また野球か!? しかもそんな永久欠番嬉しくない!!
「え!? 困るよそんなの! なんか特典とか無いの!? 普通の人より耐久性が高いとかさ!」
「は? お前、あれか? チート欲しいの?」
チート? ゲームのチート機能の事か? そんなのがあるのか?
「チートとは?」
「チートってのはいわゆるあれだ、攻撃全部効かないとかボタン一つで世界を滅ぼせるとかそんな感じ」
「俺にもくれるんですか?」
「は? やるわけないだろ」
すごい低いトーンで返され、なにいってんだこいつみたいな顔までされた。
この野球大好き男を殴る権利くらいならあるのではないだろうか。俺は無意識に拳を固めていた。だが、目の前の男は突然、少し考えるような素振りをしだす。顔を上げ、顎に人差し指と親指を置き、足を組みだした。デスクの椅子がくるくる回りだした。
「そうだ、お前にチートはやらんが良い情報はやる、お前の転生先の世界でチート級の能力を持った女勇者がお前とちょっと僅差の差くらいで産まれるからそいつを仲間にしろ……以上!」
「以上じゃねえよ! なんですでに勇者が生まれる世界で勇者になるんだよ!?」
「じゃあ、なんですでにエースが居る球団にエースがやってくるんですか!! はい! 源次くん!」
「えっと、それは歳とか、故障とか、後は優れた選手を育てたいし、詳しくないですけどそうやって球団を後世まで残す的な?」
「そう、じゃあ、勇者もそんな感じだからよろ」
「こいつ、軽すぎだろ」
「まぁ、とにかく頑張れ、じゃあ、さらばだ!」
男は適当にそう言い、俺の目の前が暗くなっていく。
「え!? まだしつも―――あぁああ!?」
んが終わってないんだけど!! と叫んだつもりがなぜか言葉にならない。
俺は抱きかかえられていた。大きい男と綺麗な女性に。そう、俺は赤ん坊になっていた。
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