第66話
キエルとセドリック率いる魔道具師による威嚇戦線の結果はこのシフォニアに多大なる潤いをもたらした。
威嚇後に訪れるのは本格戦線だが、相手国のその意思を削ぐには十分だった。
その上、こちらの有利に結果で物流等融通が聞く結果となったという。
そう言った功績のもとの労い会だ。
パーティー規模から考察するに、かなりの効果だったとクララは笑う。
「宮廷内で働いている全ての人間が参加資格があるパーティーなんて、そうそう無いわよ」
「そうなんですね」
サラディアナは腕につけたブレスレットを見た。
キエルに貰ったブレスレットだ。
思った以上にしっくりして、見ているだけで何故だか安心した気持ちで満たされる。
キエルからもらったと言う感情がそうさせるのだろうか。
だが、いまのサラディアナには焦燥感があった。
「この三年で、キエルはとても遠い場所に行ってしまった気がします。」
「サラディアナ」
「現に彼は故郷を離れて王宮へ来てしまった」
突然の別れ。
キエルは知らないだろう。
気落ちしたサラディアナの悲しみを。
そしてそれは王宮に来た今でも変わらない。
色々な人から聞くキエルは、自分の知らないキエルそのものでその度に遠くに感じるのだ。
でも良いのだ。
沢山泣いて、沢山落ち込んで、沢山考えて決めた。
遠くに感じたならその分近くに行けるように努力する事を。
キエルが拒絶しない限り駆け寄る事を。
それが今のサラディアナを駆り立ててくれている。
「クララ!」
「....なにかしらぁ?」
ガッと顔を上げたサラディアナは、にこりと笑顔を浮かべてクララを見る。
「このパーティーでキエルにダンスを申し込みます!」
「..........まぁ」
サラディアナの唐突な決意宣言にクララが戸惑いの声を上げた。
サラディアナは尚も続ける。
「キエルにとってファーストダンスでは無いかもしれませんが、私にとってはファーストダンス!絶対絶対ファーストダンスは好きな人と踊りたいです。」
気合十分と言った様子で意気込むサラディアナ。
その様子をみて、クララは瞳を瞬かせた。
思わずと言った様子でクスクスと笑う。
「ふふ。サラディアナったら」
整った顔立ち。
線が細く人見知りで最初のうちは戸惑った表情も多かった
それが、ここ数ヶ月の間色々な表情を浮かべるようになった。
なにより、思った以上に純粋で一途で芯が強い。
クララはクスクスと一通り笑った後、サラディアナの肩を優しく叩いた。
「大丈夫よぉサラディアナ。あなたが思っている以上にきっとハワード殿にとってあなたは特別だわぁ」
「そうでしょうか?」
サラディアナはクララの言葉が信じられないと言った表情を浮かべる。
それでもクララは「ええ」と顔を縦に振った。
春寮の廊下が随分と騒がしい事にクララは気づいていた。
色々な人間が行き交う廊下で騒がしいのは常で、今夜はパーティーも控えている。
それでもこんなに騒がしいのは何か理由があるのだとクララは予想していた。
コンコンコン
クララ達といる部屋のドアが叩かれる。
ドアが開いて要件を伝えにきた人の言葉すら、クララは予想ができたのだ。
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