第460話 100万人突破
「……んじゃ寝るか。」
「はいっ!!」
「そうですね。」
もはや1人では寝られないという毎日を受け入れてはいる。受け入れてはいるが今日はなんかやだ。
だって俺と美波と牡丹の3人で寝ないといけないから。
なんでこうなっちゃったんだろう。いやね、別にこの2人が嫌とかじゃないよ?たださあ…身の危険を感じるというか…怖いんだよね。
「はやく電気消しましょうっ!!」
「……電気点けたままでいいんじゃない?」
「ダメですよっ!!電気は大切にしないといけないんですっ!!」
言ってることは正しいんだけど息を荒くして電気消す指示出してるから最高に消したくない。美波の頬が紅潮してるのがまたいやだ。
ーーお前の女化さ、かなり進行してるよね?男に戻っても去勢されてんじゃない?
「タロウさん、早くお休みになられないと明日がお辛いですよ?」
「うん、そうだね。だからさ、みんな別々のベッドで寝ない?一つのベッドだと狭くて熟睡出来ないよ?」
「それは不可能なので諦めて下さい。」
「……不可能ってなんだよ。」
牡丹まで頬を紅潮させてハアハア言ってやがるし。これで電気消したら俺はどうなるんだろう。
ーーヤられちゃうんじゃない?
「……てかさ、2人とも顔近いんだけど。少し離れてくれない?」
「いやですっ!!」
「無理です。」
いやとか無理ってなんだよ。前はこの状況だとムラムラして辛すぎたんだけど今はそんなの全然ない。むしろちょっと鬱陶しい。女になるのもそんなに悪くないかもな。
ーーこれは末期だな。早く男に戻さないとちょっとよくないぞ。
「……もういいや。電気消すけど何もしないでね。」
「……。」
「……。」
「無言やめてもらえるかな!?それなんかするって言ってるんだからね!?」
「しませんよっ。たぶん。」
「多分って何!?自分の行動だよね!?コントロールしようよ!?」
「タロウさんはおとなしくしていてくれればすぐ良くなりますよ。」
「ナニが良くなるの!?こっちなんかもう隠す気ないよね!?」
……もうダメだ。絶対なんかされる。でも向こうの部屋に行ってもダメだ。ダメープルのが怖い。ダメープルだと普通に俺の貞操奪って来そうだもん。
ーーレズセックスですな。
「……電気消すね。」
「はいっ!!はあ…はあ…」
「わかりました。はあ…はあ…」
もう本当にやだ。
ーーそう思いながら慎太郎はリモコンの消灯ボタンを押す。部屋の電気が薄暗くなり始める。慎太郎の心臓の鼓動が早くなる。もちろん美女2人がいるからドキドキしているわけではなく、恐怖でドキドキしている。何事もなく朝を迎えさせてくれ、そう願う慎太郎。
ーーだが、当然ながらナニかが起こる。むしろ起こらないわけがない。
ーー美波と牡丹が両手で慎太郎の片方の手を抑える。もちろん足もだ。それぞれが足を絡めて慎太郎の動きを封じる。
「ちょっと!?早いって!?せめて機会ぐらい伺おうよ!?」
ーー慎太郎が訴えるが2人は聞こうとしない。無言で慎太郎の拘束を進めていく。
「無言やめて!?怖いって!?」
ーー2人は無言をやめない。体で乗りかかって慎太郎の手を抑えつける事に成功した2人。これで両手は自由になった。息がさらに荒くなる。
「息荒いよ!?女の子はそういうのやめた方がいいって!?」
ーー2人は無言のまま恍惚とした表情を浮かべている。それを見て慎太郎は自分の身の危険を本気で理解した。
ーー慎太郎は暴れる。暴れるが2人のロックは外せない。
「外れねぇ…!?お前らどっからその力出してんの!?」
ーー2人の呼吸が更に荒くなる。慎太郎は足掻く。とにかく足掻く。だがなんと無力なのだろう。慎太郎の力は2人にとってなんの障害にもならない。2人の手が慎太郎のTシャツへと伸びる。
「待って!?俺女!!!今女!!!」
「そんなのどーでもいいですっ。」
「性別など大した意味は持ちません。」
ーー慎太郎は絶望を感じた。
ーーだが諦めない。
ーー必死に抗う。
ーー抗う。
ーー抗う。
ーー抗う。
ーーそこで意識は途切れた。
ーーまたいつもの声だ。
ーーホントタロウはダメダメだよね。
ーーダメダメ?
ーーデレデレしすぎ。
ーーデレデレなんかしてないよ。
ーーしてるよ。ホントバカ。
ーー酷い言い草だな。
ーーでも今回はいいや。許してあげる。
ーーなんで?
ーー決めたから。
ーー何を?
ーーそれは「タロウさん、起きて下さい。」
俺は目を覚ます。なんだか頭の中を掻き回されたように気持ちが悪い。誰かと話をしていたような気がする。なんだったんだろう。思い出せない。
「どうされましたか?ご気分がお悪いんですか?」
牡丹が心配そうに俺の顔を覗き込む。
「いや…大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
「無理はなさらないで下さいね?」
「おう。ところで…ここは…オレヒスか…?」
俺は周囲を見渡す。真っ暗な路地裏のような場所。三日月の僅かな月明かりだけが唯一の灯りだ。ここで俺は気づく。俺と牡丹しかいない事に。
「……ちょっと待て。なんで俺ら2人なんだ…?まさかまた誰かは1人になったのか…!?」
「タロウさん、落ち着いて下さい。こちらを見て頂ければお分かりになります。」
狼狽える俺に牡丹がスマホを手渡す。俺は渡されたスマホの画面を見る。すると、
『お世話になっております。俺'sヒストリー運営事務局です。この度はお陰さまで俺'sヒストリーはとうとうプレイヤー数が100万人を突破致しました。これにより特別開催のゲリライベントを行わせて頂きたいと思います。
ルールは今までとは少し変わっております。クランを結成しているプレイヤー方は、今までは基本的に2組に分かれていたかと思います。ですが、今回は3名以上のクランは3組に分かれて頂きます。
そして、3組に分かれてからは一つのゴールを目指して進んで頂きます。そのゴールの先にある”あるモノ”を手にしたクランの勝利となります。
ただし、”あるモノ”を手に入れるにはクランメンバーが全員揃わなければなりません。クランメンバーが欠けた段階でそのクランはゲームオーバーとなります。クランメンバー以外の支配下プレイヤーは消えてもゲームオーバーとならないのでご安心下さい。(クラン預かりの支配下プレイヤーはクランメンバーとして扱われる為欠けたらゲームオーバーです!!)
この文面から理解されたかと思いますが、エリアで残れるのは1クランのみです。
そして、ここからがこのイベントの最大の肝です。当然ながらエリアにファイントたちが配置されておりますが、今回はリッターオルデンが数名から数十名エリア内を徘徊しております。リッターは非常に強敵です。出会ったら逃げる事をお勧め致します。ま、逃げられればの話ですが。
今回の報酬はナシとなっております。ですが、リッターを倒せば”ナニか”を手に入れられるかもしれませんね。
それでは皆様のご武運を心よりお祈りしております。』
「ゴールってドコだよ。つーか頻度多すぎだって。ほとんど毎日やってんじゃん。それにこの組分けは運悪いとヤバくないか。俺と牡丹が組みになってるから『フリーデン』使えるからいいけど、楓さんとみくはバラけないと戦力的に厳しいぞ。」
なんだかんだで腐ってもみくは元”闘神”だ。牡丹と楓さんには及ばないがそれなりの実力はある。美波とアリスじゃどうしても火力に欠けるはずだ。
ーーお前みくちゃんになんか恨みでもあんの?言い方きつくない?
「美波とアリスが組んでたらリッターなんかに出くわしたら絶対マズい。早く合流しないとーー」
「ーータロウさん。」
俺の言葉に牡丹が言葉を重ねる。珍しいというか初めてだな。牡丹は俺をたてる傾向があるから失礼だと思ってそういう事は決してしない。
「どうした?」
「言葉を遮る無礼をお許し下さい。皆さんの事が心配なのは私も同じです。ですが、今は私たちの事に集中しましょう。」
牡丹が目を俺に向けず路地の先を見て話す。これも初めての事だ。ただ、なんとも言えない緊張感が漂っているのはわかる。
「…どういうこと?」
「路地の角に誰かおります。相当な手練れが。恐らくはリッターかと。」
牡丹の言葉に緊張が走る。意識をそこへ向け、探ってみると確かに誰かいる。嫌な圧が確かに感じられた。
牡丹の言葉に隠れている必要がないと判断したのかそのモノが姿を現わす。男2人だ。
「気配も無く隠れていたと思ったが……やるな、女。強者と見える」
「ハオラン、貴様はリストを見ていないのか?その女はシマムラボタンだ。”当代”の”闘神”に入っている。それにプレイヤー間で付けられた”五帝”という位に位置されているトッププレイヤーだ」
「ほう。ならば俺たちの気配を感じ取ったのも当然という訳か」
リリたちと同じ服装をしている。間違いなくリッターだ。カタコトの日本語を話してるし片方の奴の名前から察するに中国人か。
「おい、ユウチェン。もう1人の女はなんだ?奴も強者か?」
「奴は知らんな。リストに顔は無い。ただの雑魚だろう。」
「そうか。なら俺がシマムラボタンをもらう。ユウチェン、貴様は雑魚をやれ。」
「よかろう。だが遊ぶなよ?セイエンに知られれば逆鱗に触れる。我らの役目はセイエンを”大公”へ押し上げる事だ。」
「五月蝿い男だな貴様は。言われなくても分かっている。さて、やるか。」
男たちが俺たちへと足を進める。
「…のっけから激戦必至かよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます