第457話 無双終了
「ほんじゃ第2試合始めるぞ。」
俺の呼びかけにノートゥング、アリスペアが反応を見せ、卓球台に向かう。第1試合を見て不安に思ったのかアリスは明らかに元気がない。だがそれとは対照的にノートゥングはいつものノートゥングだ。勝気な目は一切の不安も感じていない。
『アリス、俯くな、胸を張れ。気持ちで負けていたら勝てるものも勝てんぞ。』
「ノートゥング……。うん、そうですね!すみませんでした!!」
ノートゥングの言葉によりアリスの闘志がみなぎる。この暴力女王も性格はアレだけどリーダー適正は高いよな。流石は王と呼ばれるだけはある。
『さてミナミよ。随分と得意になっておるようだが、まさか妾に勝てるとでも思っておるのか?』
ノートゥングが剣呑な雰囲気で終始ドヤっている美波を目を細めて見る。
「フッ、御託はいいからかかってらっしゃい。」
だからなんでお前らはケンカすんの?ノートゥングはそんな事しなかったのに。
ーーお前が絡むからだよ。
「はいはいはい。さっさと始めるぞ。じゃんけんして。」
『じゃんけんなど必要無い。ボールは貴様らにくれてやる。』
「え?いいの?でもそれだと不利じゃね?美波の変化球のキレ見てた?」
『相手の最大奥義を打ち破って勝つ、それこそが戦いにおいての醍醐味であろう。それを相手の最大奥義から逃げて勝っても何も誇れるものなど無い。妾は誇りをかけてミナミと戦おう。』
おぉ…カッケーなこいつ…流石は王だ…俺なら相手の最大奥義なんか受けたく無い。出来るだけ楽をして生きていきたい。
「フッ、後悔しても知らないわよ。」
『フン、そんなものを妾がすると思うか?さあ、かかって来い。』
美波がボールを卓球台に軽く弾ませ、それを取る。精神を集中させ第1投を放る。事実上の決勝戦の幕が開けた。
ーー
ーー
ーー
ーー
と、思ったら、ものの数分で試合は終了した。美波の変化球の前に文字通り手も足も出ず、ラリーになる事も無くノートゥング、アリスペアは完封負けを喫した。
『き、汚いぞミナミ!!!そんな手で勝って嬉しいのか!?何が変化球だ!!!』
相手の最大奥義を打ち破って勝つのが醍醐味じゃなかったのかよ。
「変化球は立派な戦法よ。汚い事はしてないわっ。」
ズルはしてないけど卑怯ではあるんじゃない?
『ぐぬぬ…!!おいボタン!!!そもそも貴様が妾と卓球勝負を持ちかけて来たのにこんな結末で良いのか!?貴様はボールに触れてもいないのだぞ!?』
「全然構いません。2人きりとはいかなくても極めて少人数でタロウさんと一晩過ごせるのなら正直勝負なんてどうでもいいです。」
ーーこの欲望全開な牡丹ちゃん嫌いじゃないなぁ。
『だいたいからして変化球なんぞ誰も返せないではないかッ!!!ミナミしか返せないのでは勝負にならんッッ!!!反則負けだ!!!審判!!!公正に処罰しろッッ!!!わかったな!?』
「そんな脅しかけたってダメだろ。卑怯だとは思うけどズルはしてないから反則ではないし。」
「ノートゥングの言う通りです!!!再試合を要求します!!!でないと訴えます!!
!」
「どこに訴えるんですか。」
落ち着いた楓さんまでまた加わって来やがった。まったく面倒臭い事になったな。子供が2人もいやがる。何をそんなムキになってんだよ。どんだけ負けず嫌いなんだか。
ーーお前と一晩過ごしたいからだろ。
「早い話が美波の変化球を誰も打てないから不満なんですよね?」
「そうです!!」
『そうだ!!!』
「誰も返せないような球だから反則だと?」
「そうです!!!」
『そうだ!!!』
「そんじゃ返せればいいんですよね?」
「そうです!!!……え?」
『そうだ!!!………え?』
「俺が返しますよ。それで攻略出来ることが証明出来ればいいんでしょ?」
ーー室内が静まり返る。
「それは流石に無理じゃないですか…?」
『そうだ。妾たちがカスりもしないボールを弱体化してる貴様が返せる訳が無い。弱体化していなくても無理に決まっている。』
「なら俺が美波と牡丹に勝てばいいわけね?そんなら納得して下さいよ?終わったらすぐに観光行くって誓って下さいよ?」
ーー楓とノートゥングが顔を見合わす。
「わかりました。」
『良かろう。』
ーー2人は頷く。
『だが貴様も負けたら再戦だ。変化球封印の制約付きでな。』
「オッケ。んじゃ美波と牡丹もそれでいい?」
「フッ、別に構いませんよ。変化球なんて無くたって勝敗は変わりませんし。」
「私は何も文句を言える立場ではありませんのでタロウさんの御命令に従います。」
ーー美波と牡丹もそれを了承する。
「でも追加でご褒美が欲しいですっ。」
「ご褒美?なに?」
「私たちがタロウさんに勝ったらそれぞれ一つずつなんでもお願い聞いて下さいっ!絶対に断らないって約束で!!!なんでも言う事聞くって約束でっ!!!」
ーーコイツが余計な事を言うから楓ちゃんたちから負のオーラがオーバーフローし始める。
「美波さん、流石です。一生付いて行きます。」
「ちょっとなに言ってんのよ。駄目に決まってるでしょ。」
『あまり調子に乗るなよミナミ。』
「流石にウチも黙ってへんで。」
「私だって怒る時は怒りますよ。」
ーーうーん、このカオスな感じ面倒臭いなぁ。
「別にいいよ?その条件で始めよう。」
「タロウさん!?何言ってるんですか!?」
『この馬鹿タレが!!!頭がイカれているのか!!!』
ーー楓とノートゥングが怒りながら言うが、
「もういいからちょっと黙ってて!!!今ね、11時なの!!!午前中が終わるから!!!俺は観光行きたいの!!!」
ーー慎太郎が不機嫌モードに入ってるから流石の楓ちゃんもノートゥングも黙る。女化してる慎太郎は結構気が強いね。男の時なら楓ちゃんたちに文句なんか言えないもんね。
「んじゃちゃっちゃとやろう。美波サーブでいいよ。」
ーー楓ちゃんたちが不満そうな顔をしてるが慎太郎が不機嫌モードなので黙っている。
ーー美波がまだドヤりながら口を開く。
「フッ、タロウさんも甘く見過ぎじゃないですか?後悔しても知りませんよ?」
「大丈夫じゃない?後悔しないと思うから。」
「わかりました。手加減はしませんよ?」
「どうぞ。」
ーー美波が目を鋭くし、サーブを放つ。変化球だ。楓やノートゥングたちが敗れ去った美波の変化球。皆は当然慎太郎はそれに敗北すると思っていた。勝ち目なんてあるわけないと思っていた。
だが、
「オラァー!!!」
ーーパァーン
ーー慎太郎の強烈なリターンが美波と牡丹の間を抜け、一閃する。美波の変化球が敗れ去った瞬間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます