第451話 失念
ちっくしょ…俺の事バカにしやがって…だいたいからして運が1ってなんだよ。それにここで奪三振とか完璧無意味だろ。攻撃当たらねーって事じゃん。ナメてんのか。でもレーザービームならワンチャンいけるかもしれん。目からビームが出せる可能性もなくはない。ふむ。緊急事態の時はやってみるか。
『てか笑ってる場合じゃないわよ。どーすんのよアレ。』
『笑っていたのは貴様だけだろう。』
「呑気にしゃべってる場合じゃねーよ!!ほら!!さっさと逃げるぞ!!」
『なんで妾が逃げねばならんのだ。』
「そういうのいいから早く行くぞ!!」
俺に促され不満そうな顔をしながらノートゥングは駆け出す。ブルドガングは素直に従ってくれるから一緒に駆けてくれる。よし、とにかく逃げねば。あんなのに捕まったら大変だ。逃げながら打開策を考えねば……ん!?クラウソラスは!?
俺は後ろを振り返る。いた。一歩も動かずこっちを見ながら澄ました顔をしてやがる。何してんだよあのクソ女神。
俺は急いでクラウソラスの元へ戻る。幸いオークとはまだ距離がある。動きも鈍いし。これなら余裕だ。
「ちょっと!?何してんの!?」
『何がでしょうか?』
「逃げるの!!わかる!?」
『ついて来いという事でしょうか?』
「ああもう!!行くぞ!!」
のらりくらりとするクラウソラスの手を強引に引いて俺は駆け出す。クラウソラスって何考えてんだかわかんねぇ。
待っていてくれたノートゥングとクラウソラスに合流して俺たちは駆け出す。
『タロウ、どーすんのよ?』
「わからん!とりあえず逃げてアイツらから距離を取って考えよう!」
『距離か。』
ノートゥングが含みのある言い方をしやがる。なんだよ。俺のオーダーに文句があんのかよ。
「なんだよ?ダメ?」
『その作戦には穴がある。』
「穴?」
『後ろを見てみろ。』
「あん?」
ノートゥングがわけわからん事を言っているがとりあえずそれに従う。オークだ。オークが走っとる。さっきまでスローリーだった動きがアスリート並みのキレッキレなものに変わっている。
「えっ!?なにあれ!?速っ!?」
『な、無理であろう?』
「人ごとみたいに言ってんじゃねぇよ!?捕まっちまうだろ!?走れ!!とにかく走れ!」
俺たちは走る。とにかく走る。クラウソラスの奴がやる気ないから俺が手を引いてとにかく走る。走るがオークとの距離が開かない。むしろどんどん差が縮まっている。
「ダメだぁ…!!動きが遅い…!!もうスタミナ切れてきた…!!」
ーー絶望色濃いめの慎太郎にノートゥングが声をかける。
『よし、妾に作戦がある。』
ーー自信たっぷりに言うノートゥングに慎太郎が頬を染め、可愛い顔をしながらすがるように言う。
「なになに!?流石は女王様だよ!?信じてた!!」
『貴様が囮になれ。その間に妾たちは安全な場所まで撤退する。』
「俺が犯されちゃうよね!?バカなの!?」
『フッ、安心しろ。貴様は男だろう?ならその身体を少しぐらい遊ばれても構わないのではないか?』
「構うに決まってんだろ!!!バカなんじゃねぇの!?」
『貴様…その態度…もはや我慢できん…』
「ちょっと!!!今そんな事やってる場合じゃないから!?マジで少しは考えてくんない!?」
『アンタらふざけてる場合じゃないわよ!!どーすんのよアレ!!追いつかれるわよ!?』
『だからこの屑を囮にする。』
「嫌だ!!ヤダヤダヤダヤダヤダ!!!」
ーーこいつら何遊んでんの。
『タロウ、何故私たちは逃げているのですか?』
クラウソラスが不思議そうな顔をして俺に話しかけてくる。なぜ?オークが追いかけて来てるからだろ。捕まったら孕ませられるからだろ。
「オークが来るからだろ!!お前もちゃんと自分で走れ!!」
『ウンゲテュームが追いかけて来るから走るのですか?』
「そうだよ!!マジでスタミナ切れてるからせめてお前も走って!?もう俺の肺と心臓爆発しそうだからさ!?」
『ならば止まれば良いのでは?』
「だから止まったらオークに犯されるでしょ!?後ろ見てみ!!あのキモいツラに孕ませられるんだよ!?」
『だからお前を囮にすれば妾たちは助かる。それで良かろう。』
「ノートゥングは黙っててくれる!?」
『タロウ、何故蹴散らさないのですか?』
「さっきのちゃんと見てた!?俺もノートゥングもダメだったよね!?」
『ブルドガングに任せれば良いのでは?』
「え?」
『タロウのゼーゲンをブルドガングに渡せばあの程度のモノに遅れをとることはありません。雷耐性は恐らくないかと。』
「……。」
『……。』
『……。』
ーーそうだよね。”憑依”相当の力はあるんだから。お前らふざけてるだけだから気づかないんだよ。
「…ブルドガング。」
『…ん。』
ーー慎太郎がゼーゲンをブルドガングへと渡す。全員が走るのをやめ、オークたちへと向き直る。
ーー鞘からゼーゲンを抜き、ブルドガングが両手でゼーゲンを握り締めると、疾風の如くオークたちへと駆け出す。すれ違いざまにオーク3体を斬り裂き、あっという間に敵を沈黙させた。こんな雑魚相手にこいつらは何をやっていたんだろう。
「…オークめっちゃ弱いやん。」
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