第408話 それぞれのトート・シュトライテン 2

ーー血の匂いが漂う砦。


ーー男の快楽による喘ぎ声。


ーー男たちの急かす声。


ーー女の泣き叫ぶ声。


ーー両手両足を剣と槍で貫かれ磔にされている者たちによる呻き声。


ーーそれらを見ながら狂ったように笑う気持ちの悪い声。


ーーそんな地獄のような場所がここにはある。




「くぅぅぅ!!堪んねえ!!クッソ気持ちいい!!」



ーー100名近い男たちが3人の女を取り囲んで強姦している。男たち4人が女の両手両足を押さえつけ、1人が女の上に乗り腰を振る。男が射精を終えるとまた別の男へと代わりそれが繰り返される。



「オイ、早く代われよ!!いつまで腰振ってんだよテメェ!!」



ーーこれが負けた者たちの末路。男は殺され女は強姦される。それはこのゲームに限った事ではない。歴史上敗者には訪れていたであろう出来事だ。



「殺してやる…!!絶対に殺してやるッッ!!!」



ーー女が涙を流しながら自分の上で強姦する男に対し恨みの言葉を述べる。

だが男たちにそんな言葉は何の意味も持たない。かえって興奮を助長させるだけだ。



「オラッ!!殺してみろよ!!出来もしねぇクセによ!!クヒヒ!!」



ーー男がより一層激しく腰を振る。愉しそうに。



「生意気な女だな。コイツ、澤野様にも楯突いてやがったぜ。」


「よし、この女ヤリ殺してやろうぜ。何人目で死ぬか実験してみんの面白くね?」


「ブハハ!!それナイス!!」



ーーそんな地獄のような光景を奴隷たちに建てさせた櫓の上から馬鹿笑いをし、楽しそうに眺めている者がいる。



「カカカカカ!!この光景!!滑稽やな!!男からすれば天国!!女からすれば地獄!!傑作や!!」



ーー男は爬虫類のような眼をギョロつかせ腹を抱えて笑っている。



「やっぱり女は素直やないとあかんな。ああいうブスなくせに生意気な女はあかん。お前もそう思うやろ麻里奈?」


「はい。宏之様の仰る通りです。」



ーー女が魂の無いような目で男の問いに答える。



「カカカカカ!!うーん、麻里奈は素直やなぁ!!ワイは素直な女は大好きやで!!

特にお前みたいな顔のイイ女は大好きや!!」


「ありがとうございます。」


「安心しとき。お前はワイ以外の相手なんかさせへんからな。美波ちゃんや楓ちゃんを手に入れた後もワイだけのモンにしたる。良かったな、お前の顔が極上やなかったらあの2人手に入れたら捨てとったで。」


「宏之様に容姿を褒められて嬉しいです。」


「そかそか。お前は本当に素直やなぁ。」



ーーこの女は藤堂麻里奈。楓と同級生であり”雛鳥五摂家”に名を連ねた1人である。そんな彼女だが澤野たちに負け奴隷に堕ちた。楓に劣らぬ容姿故に澤野の性奴隷となり身も心もズタズタにされた。そんな麻里奈にはもはや感情というものは無いのかもしれない。これが敗者の末路なのだ。



「オイ、澤野。いつまでこのイベントやる気だ?」



ーー澤野と藤堂がいる背後から声がする。

三國だ。慎太郎のライバルである三國裕太。”三拳”という位に就き、俺'sヒストリーのトッププレイヤーの1人として君臨している彼は澤野宏之と行動を共にしていた。



「カカカカカ!三國君は短気やなぁ。アイツらにもガス抜きさせてやらなあかんやろ。オイシイ思いをさせといてやればビシビシ働く。んで、さらに功績上げたらクラン預かりにしてやるゆーとけば死ぬ気で働くやろ?」


「雑魚なんかいくらいても同じだろ。現に敵の主力を潰したのは俺じゃねぇか。」


「うんうん、流石は三國君や。ホンマお強いで。ワイの頼みを聞いて全員磔にしてくれたもんなぁ。」



ーー澤野が三國を褒め称えご機嫌をとる。



「チッ、まあいい。俺ァ他の部屋にいるぜ。気色悪くてしゃあねぇ。」


「三國君も混ざったらどうや?射せばスッキリすんで?それとも麻里奈貸したろか?三國君なら特別に貸したってもええで。」


「前にも言ったろ。そんな便所女なんざやる気もしねぇ。」


「カカカカカ!!そんな可哀想な事言わんといてや。麻里奈泣いちゃうやん。」



ーー藤堂の表情に変化はない。何の感情もないのだろう。



「さっさと切り上げさせろ。俺ァ強え奴をブチのめしてぇんだ。こんなくだらねぇ事に時間使ってっとテメェをブチ殺すぞ。」


「わーった!わーったて!そんな怒らんといてや!」


「チッ。」



ーー三國は苛立ちながら櫓を飛び降り別の部屋へと移動していく。



「…ケッ。いつまでも威張ってられる思うなよワレ。お前はワイの駒や。頭の悪い駒っちゅう事をわかっとらん。何の為にお前に敵の主力を磔にさせた思うとるんや?アイツらワイが殺して”特殊装備”もらう為や。」



ーー澤野が隻眼となっている眼を触りながら低く声を出す。



「…お前を使うて”特殊装備”とゼーゲンを掻き集め、田辺慎太郎を殺させたらお前も用済みや。せいぜい今の内にお山の大将気取っとけや。」



ーーこれは澤野宏之側の一幕である。

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