第354話 栄光
【 美波・楓・アリス・牡丹 組 ??? ??? ??? 】
ーー楓が桃矢に猛然と襲い掛かりゼーゲンを振るう。防御など一切しない。獣のように桃矢へと剣の嵐を繰り出す。
「お前を殺せば転送が始まるッ!!!さっさと死になさいッッ!!!」
ーー苛烈に攻め続ける楓。
だがその言葉とは裏腹に楓の顔には焦りの色が隠せていない。彼女の心は折れる寸前だ。諦めてしまいそうな心を必死に支えながら剣を繰り出していた。
「ははっ!イイですね!!その表情!!ソソられます!!貴女のような気の強い女性の心が折れる寸前だ!!」
ーー桃矢は防御に徹するのみであえて攻撃をしない。楓を相手にただ遊んでいるだけ。もう勝敗は明らかだ。万に一つも楓に勝機は無い。今までのように窮地に陥った時の定番である仲間の救援なんて事は起こらない。慎太郎やみくがここに現れる事は無いのだ。
「うわぁぁァァァァ!!!」
ーーそれでも楓は剣を振る。振って振って振りまくる。そんな楓を桃矢は煩わしく思い始めた。
「…なんか興醒めだな。芹澤さんってもう少し上品な方だと思ってました。これじゃ獣を相手にしているようだ。」
ーー桃矢の目に失望の色が宿る。
それは非常に冷たいものであった。先程までウキウキとしていた表情の面影など一切無い。
「貴女は僕のサンドバッグにもいりません。ただの塵だ。もう終わりでいいですよ。」
ーーそう宣言すると桃矢の身体を包む金色のエフェクトが輝きを強め、斥力の力で楓の身体を吹き飛ばす。
「ぐうッッ!?」
ーーそして引力の力により一気に桃矢の元へと吸い寄せられる。
「僕のせめてもの情けです。騎士として貴女を斬ります。さようなら、芹澤楓さん。」
ーーザシュッ
「があッッ…!!」
「楓さん…!?」
ーー桃矢の剣により楓は身体を斬られる。引力による加速度と合わさり、軽く振っただけの剣が致命傷の威力を醸し出す。
楓はその威力によりその場へ倒れ込み、雪が鮮血に塗れる。
だが楓はどうにか身体を捻り、即死だけは避けられた。避けられたが、もはや戦える状態では無い。起き上がる事さえも難しいだろう。勝敗は決した。アリスの悲痛な叫びが雪原に響く。
「あれ?胴体を真っ二つにしたつもりだったんですけど…意外とタフなんですね。ま、ほっといても死ぬだろうし、もういいです。さてと、相葉さんはギリギリ生きてるようだから手足を切り落としてから治療して連れ帰るか。島村さんは…もう死んでるかな。勿体無いなぁ。結城さんは処分でいいでしょ。僕はロリコンじゃないので。」
ーー楓が歯を食いしばりながらどうにか身体を動かそうと懸命にもがく。
動きなさいよ。
動いてよ。
私しかいないんだから。
あの子たちを助けられるのは私しかいないのよ。
このままじゃみんな死んじゃう。
もう嫌なの。
私の大事な人が死ぬのは見たくない。
私の大事な人を死なせたくない。
だからーー
「ーーだから動いてよ…!!!」
「…うるさいなぁ。もう貴女は終わったんですよ。それでもまだ格好がつかないんですか?わかりました。責任をもって僕が貴女の首を落とします。」
ーー桃矢がゼーゲンを鞘から再び抜き、楓の元へと足を進める。
ーー楓は立ち上がろうと懸命にもがく。
だが腕に力が入らないのだろう。途中まで起き上がるが雪の上に倒れ込んでしまう。
「惨めですね。ははっ!でも最期は格好良く斬首してあげるから誇って下さい!!」
ーー楓はもう一度起き上がろうと腕に力を込める。その時に気づく。手に何かが当たった事に。
「何これ…?玉…?」
ーー楓が雪の中から見つけた物は野球ボールぐらいの大きさの玉のような物だ。
すると、
ーーティロン
ーー楓の脳内に通知音が鳴り響く。
そして音声アナウンスが強制的に開始する。
『俺'sヒストリー運営事務局です。当該エリアの最優秀プレイヤーに芹澤楓様が選ばれました。よって”特殊装備”を付与*×36〆=€5|+÷9〆%』
ーーノイズが鳴り響く。
『”神具グローリエ”を付与させて頂きます。』
「”神具”…?何よそれ…それに今のノイズも…」
『”グローリエ”は芹澤様の魔力により最大10基まで召喚出来ます。使用数が増えると”グローリエ”自体の強さも変化していきます。また、芹澤様の強さが上がる事によっても”グローリエ”が強くなります。使用回数、使用時間はございません。ただ、”グローリエ”を召喚する時に膨大な魔力を使いますので現段階の芹澤様では連戦は難しいと思います。スキルを使う際にも魔力を消費しますので、使用回数があるスキルでも使用出来ない等のトラブルが発生すると思いますのでご注意下さい。詳しい使い方は”グローリエ”を所持すれば理解出来ます。もし”グローリエ”が不要でしたら破棄して下さい。それでは今後とも俺'sヒストリーをよろしくお願い致します。』
ーーアナウンスが終了する。
楓の答えは決まっている。
「不要なわけないじゃない…これでアイツに勝てるなら…みんなを守れるなら…私はなんだってするわッ…!!!」
ーー楓が手に持つ玉が粒子のようなモノへと変貌し、楓の中へと入って来る。
「何を独り言を言っているんですか?とうとう精神までおかしくなったのかな?でも大丈夫です。僕がーー」
ーー桃矢が楓から距離を取る為、後ろへと跳躍する。なんとも云えぬ恐ろしさを楓から感じたからだ。
ーー楓がその場で立ち上がる。出血も止まり、凛とした表情で桃矢を見る。
「私がみんなを守る。来なさい、グローリエ。」
ーー楓の掛け声に呼応し、ラウムから小型のテトラポットのような形状のモノが3基現れる。それらは半透明で環状の帯を周りに纏い、不規則な動作で楓の周りを飛び交っている。
「これ…夜ノ森葵のカノーネに似てる…いや…そんなレベルじゃない。カノーネなんかよりも遥かに凄い圧を感じるわ。」
ーー楓がグローリエを見ていると、桃矢が驚きの声を上げる。
「ぐ、グローリエ…!?話が違うだろ…!?」
ーーそんな桃矢を見て楓は確信する。
勝てると。
「よく分からないけど行くわよ、グローリエ。」
ーー楓と桃矢の戦いは佳境を迎える。
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