第333話 予想外の遭遇

【 美波・楓 組 1日目 AM 9:16 工場 】



「はあぁぁぁッ!!」



ーー楓が攻め来るゾルダートをゼーゲンで薙ぎ払い、次々と無に帰す。



「やあっ!!」



ーー美波も同様にゾルダートたちを華麗なフットワークで斬り伏せる。



ーー戦闘が開始して十数分が経過した。

この工場地帯で美波と楓はゾルダートを約200体程葬った。いくら美波と楓といえども、S〜SS相当のモノたち200体をスキル、”特殊装備”無しで倒すのはなかなかに厳しかった。



ーー体力の疲弊



ーー2人には明らかにそれが見られる。最初から200体纏めて現れていればスキルを温存するような事はしていなかった。蛆虫のように次から次へと湧いて出る事により起きた失着。美波と楓にあるまじき、判断の甘さが出てしまった場面である。



「はあッ…はあッ…はあッ…これで終わりかしらッ…」


「はあっ…はあっ…そうみたいですねっ…!」


疲れた…サークルやって無かったらダメだったかもしれないなぁ。というより、こんなにたくさん湧いて出るなら最初からスキル使っておけばよかったかも。あっ。でも敵を認識しないとノートゥングを使っても効果が及ばないんだよねっ?それなら結局はダメなのか。うーん…これが召喚系の弱点なんだなぁ。”具現”が出来るなら召喚系は非常に強力だけど、伏兵が現れるパターンだと非常に脆くなる。やはり時空系がどこをとっても穴が無い。私も時空系か強化系のアルティメットが欲しいなぁ。



「流石に疲れたわね…私ももう歳なのかしら…」


「24歳なのに何言ってるんですかっ!」


「20歳の美波ちゃんに言われてもなぁ。最近運動してないからよね。やっぱり道場通うべきかも。」


「道場ですか?」


「剣道のね。前に牡丹ちゃんと通おうって話をしてたんだけど色々あって忘れてたのよね。」


「面白そうですねっ。いいなぁ。」


「美波ちゃんも一緒に行かない?」


「今からでも大丈夫でしょうか?」


「大丈夫よ。それに剣を学べば美波ちゃんの役に立つと思うし。」


「じゃっ、私も通いたいですっ!」


「ウフフ、それじゃあ決まりね!戻ったらアリスちゃんとみくちゃんも誘って見ましょう。タロウさんに聞けば道場知ってると思うし。」


ふふっ、なんだか面白そうだなぁ。このメンバーで一緒にやるとか絶対楽しいよねっ!

それに…タロウさんと一緒…もしかしたらーー




ーー




ーー




【 美波's妄想ストーリー 】




『なんだ、美波は道着もちゃんと着れないのか?』


『すっ、すみませんっ…袴の結び方とかが難しくて…』


『しょうがないな。俺が教えてやるよ。手取り足取り腰取りな。』



ーー慎太郎が美波に背中から抱きつく。



『た、タロウさんっ!?』


『ほら、ここはこうやってやるんだよ。ん?下着なんかつけてるからダメなんだろ。』



ーー慎太郎が美波のブラのホックを手慣れた手つきで外す。片手で。



『だっ、だめぇぇ…!!えっちなのはだめですぅぅ…』


『先ずは俺の竹刀の使い方から教えてやるからな。今日は寝かさないぞ。覚悟しろよ?』



ーー



ーー




ーーみたいな感じになっちゃうんじゃないかなっ!?



ーーならねーよ。



イイ…!!イイよっ!!これこそが王道パターンっ!!イチャコラしてそのまま既成事実を作る最高のチャンスっ!!



ーーイベント中なのに余裕だなこの自称正妻は。



「もう打ち止めみたいだから工場の探索でもしてみましょうか。もしかしたら何かあるかもしれないし。」


「そうですねっ!」



私たちは体力の回復がてら工場内の探索を行う。だが探索をしても特に何があるわけでもない。至って普通の工場というだけでプレイヤーや敵がいるわけでもない。敷地面積がかなり広いので全て探索するのにも時間はかかるだろうが、何かがあるようには私には思えない。楓さんも同じ事を思ったのだろう。口を開くと私と同じ事を言い出した。



「何もなさそうね。敷地が広いからまだわからないかもしれないけど私は無いと思うし、牡丹ちゃんとアリスちゃんもいないと思うわ。」


「私も同じ事を思ってましたっ!それなりに体力も回復しましたし移動しましょうか?」


「そうね。移動しまーー」

その時だった。曲がり角から何者かの気配を感じる。


「楓さんっ…」


「…ええ。」


相手が1人なのはわかる。だが、殺気も何も出ていないのが不気味だ。相手の力量さえわからない。ただ、それを隠すぐらいの事が出来るのならば相応の技量があるのは確かだと思う。楓さんや牡丹ちゃんクラスと思った方がいいかもしれない。覚悟を決めないと。



ーー美波と牡丹が互いに目配せをし、鞘からゼーゲンを引き抜き戦闘に備える。

曲がり角の先にいるモノが2人の様子に気づいたのだろう。其方も戦闘態勢に移る。


ーーそして、曲がり角から現れたのは、







「「えっ…!?タロウさんっ!?」」



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