第319話 私の扱いってまた雑じゃないですかっ?
今日はサークルがあるので家の事はアリスちゃんとみくちゃんに任せて大学のテニスコートに来ていますっ。夏の日差しが強くて汗いっぱいかいちゃってますけど気持ちイイですっ。タロウさんもテニスやってくれたらいいのになぁ。今度聞いてみようかなぁ?タロウさんとテニス…手取り足取り私が教える…うへへぇ…
ーー女の子がしちゃいけない顔してるぞ。
でも私には不満がありますっ。それは、また私の扱いが雑だからですっ!!
なんかおかしくないかな?私、正ヒロインだよ?正妻だよ?それなのに空気になってないかな?この前のイベント以来、私がメイン回って一度もないんだよっ?変じゃないかな?一体作者は何を考えてるのかしら。
※ 別に何も考えてません。
それにタロウさんは洗濯をさせてくれないし、触らせてくれないし。一体私が何をしたって言うのよっ。
※ 変態的奇行による制裁です。
ジップロックしておいたタロウさんのタンクトップがあるからなんとかなってるけどこれがあと2日も続くのはつらいなぁ…
ーーやっぱりこのクンカーはなんとかしないとダメだな。
けど、私は負けないっ!周期から考えてそろそろ私がメイン回に来る番っ!!私の正妻力を見せつけちゃうからねっ!!
ーー
ーー
「ふぃー…疲れたー…」
「ふふっ、お疲れ様っ、夕美ちゃんっ!」
彼女は私の親友の高森夕美ちゃん。小学校から大学までずっと一緒の仲良しだよっ。練習が終わり、私たちは汗を流す為にシャワー室に来ていますっ。
「せっかくの夏なのに中学の時からずっとテニスばっかりやってる気がするー。」
「そうだねっ。中学から夕美ちゃんとずっとテニスやってるもんねっ。」
「美波ちゃんが私の彼氏みたいだよー。あー、今年の夏も彼氏が出来なくて終わりそうだー。」
…彼氏かぁ。来週の旅行でがんばらないとねっ!私は今年の夏に勝負をかけるって決めたんだからっ!美波、がんばりますっ!
「お盆明けに合宿だけど気が乗らないよねー。美波ちゃん、今年も参加するんだよね?」
「うんっ、夕美ちゃんも行くでしょ?」
「うーん、美波ちゃんが参加するなら参加しないとなー。4年生と3年生の毒牙から美波ちゃんを守らないとだし。」
「ふふっ、ありがとうっ、夕美ちゃんっ!」
「本気で言ってるんだからねー?なんか茨大のテニスサークルの男たちって本気でテニスをやってる感じじゃないじゃん。出会い求めてるの見え見え。」
「えっ?そうなの?」
「もー、美波ちゃんは鈍いんだから!結構評判も悪いんだよー?」
そ、そうなんだ…知らなかった…
「やたらと飲み会も増やして何かしようとしてるし。これだから男って嫌だよねー。でも彼氏は欲しいなー。」
「そういえば夕美ちゃんも彼氏いた事ないよね?夕美ちゃんぐらい可愛かったらいくらでもチャンスあると思うのに。」
夕美ちゃんはすごく可愛い。楓さんや牡丹ちゃんみたいな綺麗系ではなく、みくちゃんと同じ可愛い系の美少女だ。女の私でもドキッとするぐらい可愛いんだよっ。
「あははー、ありがと!誰でもいいわけじゃないんだよねー。ずっと前から好きな人がいるの。」
「えっ!?そ、そうなのっ!?誰誰!?」
「食いつくねー。でも残念だけど美波ちゃんが想像してる人じゃないかなー。小学校入る前から好きなんだ。今もずっと。これからも。」
ということは幼稚園の時って事かな?ずっと好きな人がいるなんて知らなかったなぁ。
「その人と良い関係になれるといいねっ。」
「……そうだねー。」
そう言う夕美ちゃんの表情が曇る。なんだろう。何かまずい事を言ったのだろうか。
「夕美ちゃん、私何かダメな事言っちゃったかな…?」
「…ううん、なんでもないよー!お腹空いちゃっただけだよー!ファミレス行こうかー!」
夕美ちゃんが努めて元気に振る舞うが何かを隠している事は確かだ。でも夕美ちゃんがそれを隠している以上は私が何かを言う権利はない。夕美ちゃんが話してくれるのを待つだけだ。
「そうだねっ!お昼は久しぶりにファミレスにしよっかっ!」
「でもちょっと我慢出来ないからエヴリバーガー食べちゃおー!」
そう言いながら夕美ちゃんは鞄からお菓子を取り出す。
「ふふっ、夕美ちゃん昔からそれ好きだよねっ。」
「美味しいんだよー?私は童心を忘れない女だからさ!美波ちゃんも食べる?」
「じゃあもらおっかなっ!」
ーー
ーー
ーー
夕方になりバイトを終えた私は小山へと戻って来た。もうここに帰って来る事が当たり前になったなぁ。二ヶ月前にはこんな事になるなんて想像していなかったもん。ずっとこのままこの生活が続くといいなぁ。
駅から少し歩くと見慣れたマンションが見えてくる。冷静に考えるとすごい高級マンションだよね。間取りも広いし、最上階だし。タロウさんと将来結婚したらどんな生活になるのかなぁ。タロウさんは今の仕事を続けるのかな?私は専業主婦?それとも共働き?2人とも英語が出来るんだから英会話教室を開くっていうのもいいよねっ!
ーーそんな妄想を抱きながら歩いていると前から慎太郎が歩いて来る。
「お!美波!」
「タロウさんっ!」
よかった!間に合った!タロウさんが仕事に行く前に一嗅ぎしたかったから急いで戻って来てよかった。
「お疲れ。行く前に会えたね。美波に言いたい事あったんだよ。」
「え…?」
い、言いたい事…?な、なんだろう…?ていうか、なんだかいい雰囲気じゃないかなっ…?これが冬で薄暗かったら最高だったんじゃないかなっ…?やっぱり私は正ヒロインで正妻…!!
「言いたいことって…なんですかっ…?」
きっとこれは愛の告白っ…!!こんな感じになるんじゃないかなっ!?
ーー
ーー
【 美波's妄想ストーリー 】
『美波、俺は美波が好きだ。愛してる。毎日美波の匂いを嗅がせてくれ。』
『はいっ!私も愛してますっ!毎日クンスカさせて下さいねっ!』
『じゃあ美波、早速だけど美波の匂いを嗅がせてくれ。身体中を隅から隅までくまなく。』
ーーそう言いながら慎太郎が美波の両手を掴んで抵抗出来ないようにし、首元から匂いを嗅ぎ始める。
『だっ、だめぇぇ…こんなところじゃ人に見られちゃうぅ…』
『じゃあお城のようなホテルに行こう。そこで一晩中美波の全てを見させてくれ。』
『それならいいですよっ!!いっぱい愛して下さいねっ!!』
ーー
ーー
みたいな感じになっちゃうんじゃないかなっ!?
ーーなるわけねーだろ。
ーーそして、慎太郎が口を開く。
「俺のタンクトップが無いんだけど知らない?」
「しししししししし、しりませんよっ!?」
ーー美波に戦慄が走る。
ど、ど、ど、どうしようっ!?ば、バレたのっ!?ちゃんと新品のと交換しておいたのにっ!?
ーーその周到さにはドン引きである。
「おかしいな。美波が知ってるって牡丹が言ってたのに。」
う、裏切ったわね牡丹ちゃんっ!!私は師匠なのにっ!!
ーー牡丹はもう慎太郎の信頼を裏切らないと誓ったし、何より指輪を貰ってご機嫌なので慎太郎に背く訳がない。せめてもの義理立てとして美波が持っていると言わなかっただけでも感謝するべきである。
…落ち着くのよ。まだバレたわけじゃないわ。クールよ。クールになるのよ美波。
「ど、どこかに紛れちゃったんじゃないですかっ!?」
「……美波、本当に知らない?」
ーー慎太郎が疑惑の目で美波を見る。
「し、知りませんっ!!私は盗ってませんっ!タロウさんは私を疑うんですかっ!?」
ーー美波がテンパりまくり動揺が隠せていない。
「だって美波ならやりそうなんだもん。」
「ひっ、酷いですっ!!訴えますっ!!」
「それは楓さんの台詞だから取るのやめような。」
あわわわ、どうしよう…?!!やっぱりバレてるぅ…!!???!
ーー追い詰められ後がなくなった美波。やはり悪は栄えぬという事だ。
「もう一回聞くね。美波、俺のタンクトップ知らない?」
「知りませんっ!!」
即答よ。即答こそが人の目を疑惑から逸らす事が出来るのよっ。確かにタロウさんに嘘を吐くのは心が痛むわ。でもね、ここで真実が露見してしまえばきっと私はもっと罰を受ける事になる。きっと1週間どころか1ヶ月は洗濯もさせてもらえない。オマケにタンクトップやシャツ、ハンカチ、パンツといった秘宝も全て没収されてしまう。そんな事になったら私はもう生きていけない。タロウさんごめんなさい。でも美波はあなたを想う故に嘘を吐くのです。
ーー己の欲の為に嘘を吐くとはとんでもない。正妻が聞いて呆れる。
「そっか。俺は美波を信じるよ。ごめんな疑って。」
「いいんですよっ!信じてくれて嬉しいですっ!」
ーーチョロい男だ。
ごめんなさいタロウさん。このお詫びは美波がご奉仕して償いますから許して下さいねっ。
「それじゃ仕事行ってくるよ。家の事頼むね。あ、今日はいつもより早く戻るからよろしくね。」
「はいっ!いってらっしゃいっ!」
ーー美波がぶりっ子のように手を振って慎太郎を送り出す。
「ふぅーっ…危なかったなぁ。でもなんとかバレなくてよかったぁ…さてと、家に帰ってタンクトップをクンスカしてから夕飯の準備しなきゃねっ。」
ーー相変わらずの自称正妻の一日であった。
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