第277話 姉妹

【 2日目 PM 9:23 儀式の間 】



ーー戦いを終えたバルムンクがゼーゲンを鞘へと収める。同じく戦いを終えた仲間たちがバルムンクの元へと集まりだす。


『ナイス!よくやったわね剣聖!!』


先程の慎太郎同様にブルドガングがハイタッチの構えを取りながらバルムンクを待つ。それに気づくバルムンクはブルドガングの呼びかけに応じるようにハイタッチを交わす。


「ふむ、お前たちの援護があってこその結果だ。暫く振りだな剣帝、息災であったか?」


『そ、ソクサイ…?』


ーーバルムンクの言葉の意味がわからず困ったブルドガングは助けを求めるような目で楓を見る。


「健康かって事よ。」


『あー!ソクサイよソクサイ!!』


ーー意味のわかったブルドガングは得意げにバルムンクへと答える。


「ふむ。それなら良かった。カエデも息災か?」


「ええ。あなたも元気そうで何よりだわ。」


「シンタロウは少し警戒心が足りぬ所があるからな。主が支えてやってくれ。」


ーーこの時楓は思った。私に託されたという事は私は特別枠という事だ。それにバルムンクは謂わば慎太郎の姉みたいなもの。その姉に認められたという事は嫁として認められたという事と同じ。この勝負、勝ったわ。そう思っていた。


「任せて!!」


ーー楓はご機嫌で返事をするが、そんな楓を牡丹が後方から凄い目で見ていた。


「バルムンクっ!!」


ーー続いて美波がバルムンクへと駆け寄って来る。所謂ぶりっ子走りで。


「おぉ!ミナミ!久しいな!」


「ふふっ、そうだねっ!バルムンクにはあんまり会えないから寂しいなっ…」


「フフ、我が呼ばれないという事はそれだけ安全という事だ。それに情けない話だが我とシンタロウは主らのように”具現”が出来ん。力が無ければ呼ばれる事も必然として減ってしまうな。」


「そ、そんな事ないよっ…!!バルムンクもタロウさんもちゃんとがんばってーー」

『ククク、その通りだ。貴様は役立たずだバルムンク。』


ーーノートゥングがバルムンクに対してマウンティングをしながら近づく。


「ちょっとノートゥングっ!!」


『貴様は黙っておれミナミ。バルムンクよ、貴様は役立たずなのだから隅で大人しくしておれ。』


「久しぶりだなノートゥング。息災か?」


『フン、気安く話しかけるな。』


ーーノートゥングが剣呑な目つきでバルムンクを見ている。


「やれやれ、随分と嫌われたものだな。我らは仲間ではないか。」


『誰が仲間だ。貴様は仲間では無い。』


「ちょ、ちょっと!?怒るわよ!?」


ーー美波が止めに入りどうにかノートゥングの剣呑な空気が収まりを見せる。


「昔は可愛かったのに、どうしてこうなってしまったのだろうな。」


『あ?』


ーーバルムンクのその一言により状況が一変する。


「2人ってそんなに昔から知り合いなの?」


「うむ。この世に生を受けた時からの仲だ。」


『おい、黙れ。』


「幼馴染って事?」


「我らは姉妹だ。」


「「『えっ?』」」


『おい、黙れ貴様!!』


ーーバルムンクの衝撃の一言により、美波、楓、ブルドガングは驚きを隠せない。


「し、姉妹なの…!?」


「うむ。」

『違う!!』


「本当の姉妹なの…?」


「うむ。」

『違うと言うとるだろうが!!


『前から似てるとは思ってたのよね…双子…?』


「うむ。」

『貴様ら妾の話を聞いておるのか!?』


「そうなんだ。どっちがお姉ちゃんなの?」


「我が姉だ。」

『妾が姉だ。……あ。』


「なんだやっぱり姉妹なんじゃないっ!」


ーーノートゥングが非常に不愉快そうな顔つきに変わっていく。


『大人しく聞いていれば良い気になりおって!!貴様など姉ではない!!強いて言うなら妾が姉だ!!』


「ふぅ…」


ーーバルムンクがやれやれといったような仕草をする。それによりノートゥングの怒りのボルテージは更に高まる。


『…やはり貴様はここで殺すしかないようだな。』


ーーノートゥングがラウムから聖剣を取り出す。そして自身の力を解放し、紅炎のエフェクトを発動させる。


「ちょ、ちょっと!?バルムンクには攻撃しないって約束したでしょっ!?」


『ククク、これは攻撃ではない。ただの喧嘩だ。』


「へ、へりくつじゃないっ!?」


ーーどう見てもノートゥングの目は殺す気満々だ。どうにかしないて止めないといけない、そう美波が思っているとバルムンクがより一層挑発的な態度を取る。


「案ずるなミナミ。どうせノートゥングに我はやれんよ。」


『あ?良い度胸だな貴様。”具現”も出来ん貴様がどうやって妾に勝つと言うのだ?』


ーーバルムンクに煽られる事でノートゥングは血管が切れてしまいそうなぐらい苛立つ。だが、整った顔が歪むぐらいに苛立つノートゥングにバルムンクが意外な言葉を投げかける。


「フフ、我が何かをする事はない。お前は我に攻撃など出来るはずがないからな。」


『何を言っておるのだ貴様は?気でも触れたのか?妾が攻撃出来ないわけがなかろう。』


「つまらん意地を張るな。」


『フン、もういい。貴様を斬り捨てて仕舞いだ。』


「ちょ、ちょっと!?待ちなさいって!!」


ーー不穏な空気が出ている場を美波が止めようとする。だが、


「本当に出来るのかノートゥングよ?」


『…何が言いたいのだ貴様は?』


「本当に我を斬るのか?」


『くどい。』


「シンタロウの身体なのにか?」


ーーバルムンクの言葉に一瞬だけノートゥングは心臓を掴まれたような気分に陥る。だがすぐに平静を保ち言葉を発する。


『…当然だ。』


ーーそれでもノートゥングは、一瞬間が空いてしまった自分を叱責したい気持ちだったがどうにか気持ちを落ち着ける。


「フフ。」


『何がおかしい…!?』


ーー笑われた事への恥ずかしさについ、ノートゥングは声を荒げる。


「すまんすまん。根っこの部分は昔と変わらなくて我は安心したぞ。」


『…だから、何が言いたいのだ貴様は?』


「大好きなシンタロウを斬る事などできぬものな。」


「「えっ!?」」

『へー。』


『はっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』


ーーバルムンクが核弾頭をぶん投げる事により場の空気はめちゃくちゃになる。後方からの牡丹の殺気も凄い事になる。もはやめちゃくちゃ。この場の雰囲気をめちゃくちゃに引っ掻き回しながらバルムンクのターンが始まる。

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