第272話 ホラー要素再び
【 2日目 PM 7:30 車内 】
ーー終着駅である『儀式の間』へと到着した車両は停車し、ドアの開く音がする。
「着いたみたいだな。じゃ、気合い入れて行こうか!!」
「はい。」
「ええ。」
「はいっ!」
「はい!」
俺たちはホームへと降りる。辺りを見渡すと、とても駅とは言えないぐらいに朽ち果てているような場所だ。駅の構内は乗った駅である『境』よりも荒れ果てていた。いや、荒らされたのだろうか?劣化で荒れ果てたというより人為的に荒らされたに近い。
「すごい場所ですね…」
「そうね。戦争でも起きた跡みたい。」
「何の気配も感じませんね。近くにナニかがいるという事は無いと思います。ただ、相手が気配を消して潜んでいたり、ヘンカー級の強者なら話は違ってきます。注意はしましょう。」
「オッケー。流石にヘンカーとは遭遇したくねぇし、あんなのとしょっちゅうエンカウントしてたら命がもたない。ん?どうした美波?」
俺たちが状況確認をしている中で美波は一点だけを見つめて言葉を発しない。俺は心配になり美波に声をかけた。気分が悪いのだろうか。
「いえ…アレって何かなぁ、って思って見てたんです。」
美波が指差す方を見ると瓦礫に埋もれた中に人型の岩みたいなものが確認出来る。違うな、石像か。
「石像…かな…?」
「やっぱりそう見えますよね?」
「ああ。」
「どうされましたか?」
俺たちが何かを見ている事に牡丹が気づき、声をかけてくる。
「いや、美波がアレを発見したんだよ。そんで何かなーって思って見てた。」
俺は石像がある方角を指差す。
「石像…でしょうか…?」
「やっぱり牡丹もそう見えるか。」
「どうしたんですか?」
「何かあったんですか?」
俺たちが石像を見てるのを楓さんとアリスも気づく。
「美波が気づいたんですけどアレ何に見えます?」
俺は再度石像を指差す。
「石像ですね。」
「私にもそう見えます。」
「やっぱりみんなそう見えるんだな。あの石像を調べて見ますか?」
「た、タロウさん!!」
牡丹が目を輝かせながら俺に何かを訴えかけている。だが俺には牡丹が何を言いたいのかすぐにわかる。
「フッ、牡丹よ、言わんでも俺にはわかるぞ。」
「え?何がですか?」
俺が牡丹とツーカーの関係を築いていると美波が不思議そうな顔で尋ねてくる。
「美波、これは定番なんだよ。」
「定番??どういう事ですか??」
「ふふふ、このような朽ち果てている場所にある怪しげな石像、これが動き出して我々に牙を剥く。定番です。」
「「「えっ?」」」
「フッ、落ち着くんだ牡丹。慌てる乞食は貰いが少ないって言うだろ?」
「ふふふ、そうでしたね。今はこの雰囲気も楽しむ事にしましょう。」
ーー楓、美波、アリスの顔色が見る見る悪くなっていく。
「う、動くんですか!?」
ーーアリスが不安げな顔で慎太郎に尋ねる。
「安心しろアリス。必ず動く。」
ーー慎太郎の言葉にアリスは意識を失いそうになる。ちっとも安心出来なかった。
「で、でもタロウさん!石像が動くなんてそんな事あるわけないじゃないですか!?」
ーー楓は全力で否定する。非科学的だと否定する。
「大丈夫ですよ楓さん。石像や銅像は動くって相場が決まっているんです。」
ーー全然大丈夫じゃねぇよ。楓はそう思いながら足が震えていた。
「ま、そうは言う俺も我慢出来ないんだけどな。早速石像に突撃してみようぜ!!」
ーー慎太郎が子供のように目を輝かせながらはしゃぐ。
「ふふふ、お供致します。」
ーー牡丹も目を輝かせながらはしゃぐ。
「「「ーー。」」」
ーー楓、美波、アリスが白目を剥きそうになる。
ーーバカップル2人が屍3体を引き連れながら石像へと歩みを進めて行った。
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