第243話 模擬戦 芹澤楓 VS 島村牡丹 2

【 マイページ モニター前 】



「な、なんか牡丹ちゃんいつもと少し違うねっ?」


「そ、そうですね!」


少しじゃないだろ。完全にヤンデレモード入っとるやん。


『さて、この一戦は見ものだな。』


ーーノートゥングが当たり前のように慎太郎の横でモニターを見ている。


「…お前ってココでも自由に出られるんだね?なんでもアリかよ。」


『あ?お前?』


ーーノートゥングが激怒し、慎太郎へ暴行を加える。


「痛い!!痛いって!!」


『妾に殴られて嬉しいだろう?この変態め。』


「あぁ!?嬉しいわけねーだろ!!バカなんじゃねーの!?」


『なんだその口の利き方は?』


ーー慎太郎が調子に乗る事で更に暴行は激化する。そしてそれを美波は冷ややかな目で見ていた。


「痛ててて…くそったれめ。んで?何が見ものなんだ?楓さんと牡丹の戦いがか?」


『妾がそんなものを愉しみにするわけがなかろう。剣神の戦いがだ。』


「えっと…どうして?」


美波が不思議そうな顔をしてノートゥングに尋ねる。


『面識は無いが少なくとも妾は剣帝ブルドガングの事は知っていた。それだけの強者ならば噂にはなる。だが剣神クラウソラスという名は聞いた事が無い。そもそも剣神などという位は存在せぬ。』


「存在しないって…どういう事だよ…?」


『だから見て見たいのだ。奴が何モノなのかをな。』



********************



【 模擬戦 現代エリア 東京 】



ーー楓と牡丹との戦いの場から離れたエリアへと移動し、剣帝ブルドガングと剣神クラウソラスが対峙する。


『この辺りでよろしいかと。ここならボタンたちにも被害が及びません。』


『ねぇ、アンタって何モノ?』


『どういう意味でしょうか?』


『強者の名は私は記憶してるわ。でも剣神なんて位は聞いた事が無い。それにアンタの名もね。それなのにアンタは相当な実力を持っている。一体何モノなの?』


ーーブルドガングが怪訝な顔をしてクラウソラスへと尋ねる。

クラウソラスは数秒考えるかのように沈黙をしたが、特に表情が崩れる事も無く口を開く。


『剣神などというのは私が付けたものではありません。人々が私に対して崇拝の念を込めて付けたものです。』


『どういう意味…?理解出来ないんだけど。』


『理解なんて必要ありませんよ。大した事ではありませんので。私たちは仲間、それだけで十分かと思います。』


ーーブルドガングはその意味を考えようとしたが、面倒臭くなったので数秒で諦める事にした。別に剣神クラウソラスが何モノであっても仲間ならいいか、そう思ったのだ。


『ま、いっか。さーて、そろそろ始める?』


『提案があるのですがよろしいでしょうか?』


『提案?』


ーーヤル気満々だったノートゥングだが、クラウソラスの言葉に出鼻をくじかれる。


『私の役目は貴女を抑える事です。もし貴女がここから動かないでいてくれるのでしたら私たちは戦う必要ありません。鍛錬する為ならいざ知らず、これはタナベシンタロウとの仲を深める機会を得る為の余興です。それならば仲間同士で戦わなくてもよろしいかと思います。』


『まぁ…剣王も同じ事言ってたし。アタシは正直カエデを勝たせたいから手伝いに行きたいけどアタシらは戦わないって取り決めするなら別に構わない。』


『ありがとうございます。』


『でも…アンタはボタンの加勢に行かなくていいの?』


『必要ありません。ボタンの圧勝だと思いますので。』


ーークラウソラスの言葉にブルドガングは眉をひそめる。


『それに私は戦う事は好みません。痛めつける事も。特に仲間である貴女を痛めつける事はしたくありません。ここでお話でもして結末を見届けませんか?貴女と語り合いたいです。』


『へぇ、その言い方だとアンタの方が強いみたいじゃない?』


ーーブルドガングが不愉快そうな顔でクラウソラスに言い放つ。


『はい。随分上だと思います。』


ーークラウソラスが即答する事でブルドガングの苛立ちが更に高まる。


『…つまりはケンカ売ってるって事?』


『その様な事はありません。私は事実を述べただけです。』


『ゼーゲンの差を理解してんの?力の解放度が1段階違うのよ?』


『それを入れても私と貴女では実力が違い過ぎると思います。』


『カッチーン。その澄まし顔絶対ヘコませてやる。』


ーーブルドガングの怒りのキャバがオーバーフローした。

ブルドガングは基本的に思考が子供なのでキレやすい。それが前回のノートゥングとの一戦にも表れ、敗北の要因になった。ブルドガングの最大の欠点である。


『どうしてそんなに怒っているのですか?私、何か気に障る様な事を言ったのでしょうか?』


『無自覚なのが更に腹立つわね。どいつもこいつもアタシの事をナメすぎなのよッ!!』


ーーブルドガングがラウムから聖剣を取り出す。


『とっとと剣を抜きなさい!!』


『争いたくはありません。どうか剣を収めて下さい。』


『ケンカ売っといて何言ってんのよッ!!』


『気に障ったのでしたら謝ります。許して下さい。』


ーークラウソラスが頭を下げる。その謙虚な姿勢にブルドガングの怒りの火は鎮火しつつある。


『……まぁ、良いけど。』


『良かった!弱いものイジメはしたくありませんので安心しました。』


『絶対ボコボコにしてやるッ!!』


ーーブルドガングを包む金色のオーラが輝きを強める。そして地を蹴りあげ、クラウソラスへと突っ込む。


『やめて下さい。』


ーーブルドガングの聖剣をクラウソラスが躱す。連撃を加えるが涼しい顔でクラウソラスはそれを処理する。


『さっさと抜きなさい!!ワザと躱しやすくしてやってんだからッ!!』


『…仕方ありませんね。』


ーークラウソラスがそう呟いた次の瞬間、


『うっ…』


ーーブルドガングの首筋にクラウソラスが手刀を突きつける。

一瞬の出来事だった。動く素振りも、気配も、何も感じさせる事が無くクラウソラスはブルドガングの間合いへと入り、勝負をつけた。


『勝負はつきましたね。ではお話をしましょうか。』

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