第240話 模擬戦 インターバル 1
決勝戦を前に1時間の休憩を挟むという事で俺たちは一度マンションへと戻って来た。時間を確認するとPM11:14だ。マイページに行っている間は現実世界の時間は止まっている。明日は日曜だから良いけど平日だったら俺と楓さんは大変だよな。
楓さんと牡丹は空き部屋に行きそれぞれで戦略を考えている。その間俺と美波とアリスはリビングでビデオを見て待機中だ。夏だからホラービデオを見たいけど牡丹以外は付き合ってくれないからなぁ。
「あの…タロウさん…」
ビデオ鑑賞していると牡丹がリビングへやって来る。
「ん?どうした?」
「すみません…その…」
その表情はとても苦しげで辛そうなものだった。一体どうしたんだ。俺はそんな表情をする牡丹がとても心配になりすぐに駆け寄った。
「何があった?」
「すみません…来て頂いてもよろしいでしょうか…?」
「もちろん。」
俺は牡丹と共に空き部屋へと急行する。美波たちの前で言えない事といったら家の事かもしれない。どんな事でも俺が全力でサポートする。心配するなよ牡丹。俺に任せろ。
部屋に入ると俺は牡丹に優しく問い質す。
「どうした?何があった?俺は牡丹の味方だからさ。何でも話してよ。必ず牡丹を助けるから。」
「…先程からとても苦しくて…胸が張り裂けそうなぐらい苦しくて…」
「うん、大丈夫だよ。俺がついてるから。」
「…我慢はしていたのですが…もう…我慢出来なくて…」
「我慢なんてしなくていいんだよ。俺に何でも言って。」
「まだ夜の分の接吻をしてもらってないです。」
「それの話かよ!?心配して損したんだけど!?」
「私はそれだけが楽しみで毎日生きております。」
「もっと楽しみ見つけた方がいいよ!?」
「あ、タロウさん全般が楽しみです。」
「ありがとう!!でもそれ以外の楽しみ見つけなさい!!俺に依存しすぎ!!」
「無理ですね。」
「即答なんだ!?」
「そんな事より早くお願いします。」
「そんな事じゃないんだけどね!?結構重要な話題だよ!?」
「……。」
「わかった!!わかったからハイライト無くさないで!?」
「ではお願い致します。お詫びとしてキツく抱き締めながら頭を撫で撫でして下さい。」
「なんか要求が多くなってない!?控えめ清楚設定はドコ行ったの!?……まあいいけどさ。」
ーー文句を言いながらも慎太郎はしっかり牡丹とキスをする。そりゃあこんな美少女としたくないわけがない。スケベな男だ。
ーー暫くの間キスをし、どちらからというわけでもなく唇を離す。だが牡丹は抱き締める事を無言で慎太郎に要求する為、慎太郎は牡丹を抱き締める。
「…満足?」
「ふふふ、それなりに満足致しました。これでこの後の戦に勝てそうです。待っていて下さい。必ず勝ちますので。」
「…ま、頑張れ。」
「私に勝って欲しくないのですか?」
「…ノーコメント。」
「コメントが欲しいです。」
「…俺は牡丹も楓さんも大好きだからどっちとは言えない。」
「私の事が大好きなのですか?」
「おう。」
「愛してはいないのですか?」
なんかデジャブなんだけど。
「…愛してるよ。」
「聞こえません。」
「愛してるよ。」
「誰をですか?」
「俺は牡丹の事を愛してるよ。」
「ふふふ、そうですか。」
「満足?」
「はい、満足です。録音出来ましたので。」
「えっ?何を?」
ーー牡丹がポケットからスマホを取り出しボイスメモを再生する。
『俺は牡丹の事を愛してるよ。』
「最高ですね。」
「何してんの!?」
この花は何してくれてんの!?ダメープルといい、花といい、思考が同じなの!?
「私の目覚ましとして明日から使います。」
「やめて!?ノートゥングに殺されるから!?」
「冗談です。私が1人で楽しむ用です。これを聞くだけで私は頑張れます。」
…可愛い顔してそんな事言いやがって。消去できねーだろ。
「…みんなにはナイショな?」
「はい。私たちだけの秘密です。」
「んじゃ、俺は戻るよ。頑張れよ。」
「あ、すみません。私が勝ったら何処へお泊りに行かれるのですか?」
「うーん?せっかくなら牡丹が行きたい所で良いよ。」
「何処でもよろしいのですか?」
「おう。」
「わかりました。死ぬ気で頑張ります。」
ーー慎太郎は笑顔で牡丹に手を振りながら部屋を出る。
「…何処でも。ふふふ。ふふふふふふふふふ。ふふふふふふふふふふふふふふふ。」
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