第236話 模擬戦 芹澤楓 VS 相葉美波 2

まさか美波ちゃんが”具現”を会得しているとは思わなかった。完全に酔いが醒めたわね。


「悪いけど”具現”を使っている以上は手加減は出来ないわ。全力で行くわよブルドガング。」


『わかったわ。剣王が相手なら不足は無いわね。』


それでもまだ私に相当分があると思う。私のゼーゲンは2段階解放、美波ちゃんは未解放。この差が表すのはブルドガングたちの力だ。彼女たちの力を解放する為にはゼーゲンが必要だ。単純に考えれば2本の差は30%以上の力量差が出る。トラップを張っていない以上は私の勝利が濃厚であろう。


ーーブルドガングとノートゥングがラウムから聖剣を取り出し、それを合図として互いに斬り掛かる。両者の聖剣による剣戟で雷と焔のエフェクトが周囲へ弾け飛ぶ。


『ククク、愉しめそうだな剣帝よ。』


『そうね、簡単にやれたりしないでよね!』


楽しんでいる所悪いけど私は直ぐに終わらせるわ。術者である美波ちゃんを倒せば戦いは終わる。

私は鞘からゼーゲンを引き抜き、全力で地を蹴り美波ちゃんの背後を取る。


「ごめんなさいね、美波ちゃーー」



ーーキィン



ーー完全に美波の背後を取った楓だが、美波が瞬時に背後を振り返り、自身のゼーゲンで楓の一撃を捌く。


「な…!!どうして…!?私は手加減をしてはーー」

「楓さん、本当に全力でやる事をオススメします。私のゼーゲンも2段階解放済みですから。」


「2段階…!?そんなはずは…!?」


「話せば長くなりますが2ヶ月前に手に入れたんです。ですから少なくとも身体能力に関してはほぼ互角だと思います。」


私たちは互いに斬り返しを行う。ハッタリでは無い。確かに美波ちゃんは私の動きについて来ている。


「…本当に本気なのね。」


「はいっ!絶対既成事実作成券、手に入れたいですからっ!!」


「わかった。でもね美波ちゃんーー」


ーー楓がゼーゲンを巧みに使って美波へと怒涛の攻めを開始する。


「うっ…!!あ…!!くっ…!!」


「身体能力は五分でも剣技に相当の差がある。これはどうやって補うのかしら?」




********************




『…あっちも始まったか。カエデが負けるとは思わないけど剣王をアタシが倒して2人でミナミを叩くのがベストよね。』


ーーブルドガングを包む金色のエフェクトが輝きを強め、ノートゥングへの攻撃の手をより一層激しいものとする。


『ククク、どうした剣帝よ?勝負を焦っているのか?』


『ハァ?何でアタシが焦るのよ。』


『カエデがミナミに敗れるかもしれぬから焦っているのだろう?』


ーーノートゥングが薄ら笑いを浮かべながらブルドガングへと問い掛ける。


『何言ってんの?カエデが負けるわけないじゃない。』


『妾自らが2ヶ月稽古をつけてやったのだからな。負けても仕方はあるまい。気を落とす事はないぞ。』


ーーノートゥングの物言いにブルドガングは苛立ちを感じる。


『…ふーん、仲間同士だからちょっと手加減してあげようって思ったけどやーめた。どっちが強いかハッキリさせてあげるわ。』


『ほう!術者と英傑が共に敗れてしまうと完敗となってしまうな。このクランのアタッカーの座は交代せねばならんか。』


『…前から思ってたけどアンタのその態度、カンに障るのよッツ!!』


ーーブルドガングがそのまま猛剣を振るい、ノートゥングのガードを下げさせる。そして少しの隙が空いた所でブルドガングが一歩後退し技を放つ。


『ーー跪きなさい、ブリッツ・シュラーク。』


ーーブルドガングが剣を振りかざすと雷鳴が轟き遥か上空から一筋の稲妻がノートゥングへと落ちて来る。


だがノートゥングは、


『ーー消え失せろ、グラナートロート・フェアブレンネン。』


ーー頭上へ剣をかざし、紅き火球を3つ発生させ、ブルドガングのブリッツ・シュラークを相殺する。互いの技が上空で弾け飛び、地上へと落ちて来る火の粉が木々へと引火する。辺りはたちまち火の海に包まれ始めた。


『チッ…!!』


『ククク、その程度の小技で妾を討ち取れるとでも思っておるのか?』


ーーノートゥングがドヤ顔でブルドガングを煽るような口調で挑発する。その煽りにブルドガングは見事に乗ってしまう。表情は苛立ちMAXといった具合にこめかみ辺りがピクピクと震えている。


『絶対その顔引っ叩く…!!』


『出来るのならばやってみるが良い。出来るのならばな。』


ーー剣帝ブルドガングと剣王ノートゥングの戦いが更に激しさを増していく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る