第235話 模擬戦 芹澤楓 VS 相葉美波 1

戦いが終わり、模擬戦部屋から牡丹とアリスが出て来る。2人は互いを認め合い、絆が深まったような雰囲気を出してやがる。クソチケットを争ってただけのくせに。


「おつかれさまっ!」


美波が元気よく2人を出迎える。


「お疲れ様です。」

「お疲れ様です!」


「流石だねっ、牡丹ちゃん!アリスちゃんは…残念だったけど…」


「仕方ありません!お姉ちゃんは強かったです!きっと私の分まで優勝目指してくれます!」


「ふふふ、可愛い妹の想いを汲む、良い響きですね。」


でもまあいいか。自分でこんな事言うとアレだけどアリスはもっとガッカリすると思ってたからな。この三人みたいに欲に塗れて無かったって事だな。やっぱりアリスの俺への想いは父親への愛みたいなモンなんだよ。純粋だねぇ。

問題なのは、欲に塗れた変態美人どもが残っちまったって事だ。この三人の誰が優勝してもかなり困る。一番困るのは牡丹だな。未成年はやっぱり色々とマズい。最悪、美波か楓さんなら成人してるからなんとかなるか。どっちが勝つかな。やっぱ楓さんだよな。美波は”具現”出来ないわけだし、ゼーゲンも解放してないし。それに楓さんはさっきの”サブスキル”ガチャで、


《 レア スキル解除 効果 相手の身体に触れるか、魔法陣を踏ませる事で掛かっている効果を解除する事が出来る。但し、1日1回のみ。Lv.1 》


《 レア 腕封じ 効果 効果 相手の身体に触れるか、魔法陣を踏ませる事で30分間腕を使う事が出来ない。但し、1日1回のみ。Lv.1 》


この2つを手に入れた。俺たちが引いたガチャの具合から考えて”サブスキル”ガチャは相当シビアな当たり振り分けだ。確率が低い中でレアを2つも出すのは流石としか言えない。これだけを見てもやはり楓さんが一枚も二枚も上手だ。

果たしてどちらが勝つのか。勝負の行方は神のみぞ知る。


「第二試合、始めましょうか美波ちゃん。」


「はいっ!負けませんからねっ、楓さんっ!!」


「ウフフ、望むところよ。」


ーー楓と美波が模擬戦部屋へと入る。


模擬戦第二試合、芹澤楓 VS 相葉美波の戦いが始まる。




********************




「森か…微かに太陽の光が届いているけど随分と暗いわね。」


私はエリアの確認を行うと、周囲は厚い木々に覆われた森の中だ。太陽の光が微かに届いてはいるが夕方のような暗さが森全体を包んでいる。


「決して美波ちゃんを侮る訳では無いけれど、絶対に負けられないわ。」


ゼーゲンやエンゲル、そしてブルドガングの”具現”も会得している私が負けたなんてあっては皆の不安にも繋がってしまう。何よりタロウさんとの既成事実確定チケットを手にしなければならない。美波ちゃんには悪いけど瞬殺させてもらうわ。


「でも”サブスキル”には注意しないとね。美波ちゃんのトラップ発動条件はなかなか厳しいけど、発動させられたら形成が一気に傾くわ。それには注意しないと。」


私は周囲の気配を探る。だが誰かがいる気配は感じられない。近くにいないか気配を消しているかだ。いや、2段階解放ゼーゲンを持っている私の身体能力の上昇度から考えれば恐らく後者だろう。


「ノートゥングの指示かしら。これは一筋縄ではいかなそうね。」


私は周囲を警戒しつつ森の探索を開始した。トラップへの注意は必要だがそちらへばかり気がいってしまうと美波ちゃんへの対応が後手に回ってしまう。なかなかに厄介だ。”サブスキル”の導入はパワーバランスのリセットにはうってつけの制度かもしれない。


ーーしかし意外な事に楓が想像したよりも早く戦いの火蓋が切って落とされる事となる。


「意外ね。正直真っ向勝負に来るとは思わなかったわ。」


木々を掻き分けた先に美波ちゃんは立っていた。私を待っていたといわんばかりな表情をしている。何処かにトラップがあるのかもね。警戒しないと。


「安心して下さい。まだトラップは仕掛けていませんっ。」


「へぇ、それじゃあ降参してくれるのかしら?」


「それはできません。お泊まりイチャイチャ券は絶対に手に入れます。でも、卑怯な真似をして手に入れたくはないですっ。正々堂々と対峙した上で勝ち取りますっ!」


「なるほど。美波ちゃんの騎士道精神は分かったわ。でも…正直ナメすぎじゃないかしら?私と美波ちゃんではスキルにも差がありすぎるし、ゼーゲンの差もありすぎる。とても真っ向勝負で勝てる程の力量差では無いわ。それでもそう思ってるならオシオキをしなくちゃね。」


美波ちゃんは真面目すぎる。それはここから先の戦いにおいて危険を誘発しかねない。死にました、奴隷になりました、なんて事を間違ったって起こしてはいけない。ここでそれを正しておくのが私の役目でもあるわ。決して実は美波ちゃんをちょっと性的にイジメてみたい願望があるとかでは無いわよ。


「ふふっ、私が楓さんをナメるはずがありません。真っ向勝負で勝てる作戦があるからこそ挑んだんですっ!!」


そうか、美波ちゃんは”具現”を直に見てないから理解出来ないのね。ただ知らないだけ。それならば仕方ないわ。”具現”を見せてから少しオシオキしましょう。性的に。


ーー(注意)

楓は酒が入ってる事により若干暴走しています。


「いいわ、見せてあげる。これが”具現”よ。」


ーー楓がスキルを発動する事により金色のエフェクトが発動する。そして、前方に出現した魔法陣から剣帝ブルドガングが姿を現わす。実態を伴った姿で。


『仲間同士で戦うなんて変な感じね。』


「そうね。」


『しかも相手はミナミと剣王か。』


「美波ちゃんは少しオシオキが必要よ。2度とこんな悪い事しないように身体に教えてあげないと。ウフフ♪」


ーー更に酒が回ってウキウキしている楓を見てブルドガングは、

『ダメープルね。』

と、思っていた。


「さて。どう?美波ちゃん。相当な圧を感じているでしょう?降参する?」


ウフフ、今更謝っても変なスイッチ入っちゃったから少しオシオキしないと引っ込みつかないけどね。


「ふふっ、私だってこの2ヶ月ただ遊んでいたわけじゃありませんっ!!いくわよ、ノートゥング!!」


美波ちゃんの身体を金色のエフェクトが包み込む。前方に魔法陣を形成し、中からノートゥングが現れ……え?


「それは……”具現”!?」


今までのノートゥングは半透明の状態だった。いわば”半具現”だ。だが私の眼前にいるノートゥングは身体の透けが完全に無くなっている。そしてピリピリと肌を刺すような凄まじい圧。間違い無く”具現”だ。


「これでスキルの上では互角ですっ!!一泊イチャイチャ券は私がもらいますっ!!」


「…流石に酔いも醒めたわ。本気でやらせてもらうわよ。」

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