第185話 全滅じゃね?
【 慎太郎・牡丹 組 2日目 AM 7:00 洋館 本館 3F 客間 】
目が醒めると安定の牡丹の膝枕だった。うん、予想してたけどね。俺より先に起きて膝枕してるって予想出来てたけどね。
「おはよう、牡丹。」
「おはようございます。よく眠れましたか?」
よく眠れるも何もあんな悶々とした状況なんだから寝るしかねーだろ。
「まあ…一応…」
「ふふふ。今日も外の天候は悪いですね…朝だと言うのに真っ暗です。」
俺は膝枕状態から首だけ動かして外を見ると、ドス黒い空と雨風が未だ終わる事無く続いていた。
「でもさ…晴れると雰囲気無くなるよね?」
「そうですね。不謹慎ですが面白くありません。」
ーー2人の目がキラキラと輝き出す。
「流石は牡丹、理解してくれると思ったぜ。さぁて!!朝メシ食ったら早速探索に乗り出すか!!」
「はい、どこまでもお供致します。」
ーー2日目も安定のバカップルであった。
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ーー朝食を終えた慎太郎と牡丹は客間を出て洋館の探索を開始した。
1日目は銀のペガサス座の鍵を手に入れ、西棟方面の探索を始めた。
西棟は少し見ただけでもかなり入り組んだ作りと、広大な面積を有しているがわかった。この探索を進めなければならないのはかなり面倒だとは思うが慎太郎と牡丹には関係無い。彼らはこの状況をかつて無いほど楽しんでいるからだ。
「てかさ、冷静に考えて2人で寝ちゃったのはマズかったよな。襲われたら終わりじゃん。」
「寝る前にトラップスキルを仕掛けて置きましたので大丈夫です。」
「そんなの持ってるの?」
「はい。私はクラウソラスと
「うん、最後のセリフが無ければ牡丹の事超尊敬してたけどね。でも流石は牡丹だな。ちゃんと考えてくれているんだね、ありがとう。」
ーー慎太郎は定番の頭ナデナデを牡丹にする。それを牡丹は幸せそうな顔で受け入れる。また今日も牡丹の慎太郎への依存度が強くなるのであった。
「でもさ、結構不思議じゃない?」
「何がでしょうか?」
「俺たちってまだプレイヤー2人にしか遭遇してないんだよ?30組のクランと500以上の敵が配置されてるのにも関わらずだ。時間だって半日以上が経過してるのに。それにさ、それだけの人数がこの洋館に集められていたらもっとバンバン出くわすだろ。」
「つまりタロウさんが仰いたいのは、この洋館だけがステージでは無く、まだ派生している場所があるという事でしょうか?」
「恐らくな。この洋館エリアは極端に配置された連中が少ないのかもしれない。楓さんたちの方に集中してなきゃいいけど。」
「楓さんたちならきっと大丈夫です。皆さんお強いですから。」
「そうだな。だがここからは俺たちも気を引き締めよう。昨日はちょっとふざけすぎちまったからな。」
「そうですね。私ーー」
ーーその時だった。
『イヒヒヒヒヒヒヒ!!!!』
ーー奇声が慎太郎と牡丹の耳に届く。
そしてそれを聞いた2人はーー
「…この展開ってさ、アレだよね?」
「…はい、お約束のパターンかと。」
「…最初に謝っとくね、俺さ、ワクワクが止まらねぇんだけど。」
「…私も同じです。とても興奮しております。」
「…あのさ、この声の主だけ確認してから気を引き締めるって事にしていい?」
「…私も是非そうして頂きたいです。」
「…急ごうか?」
「…はい。」
「あははは!」
「ふふふ。」
ーー慎太郎と牡丹は走り出す。目を輝かせながら走り出す。やはり安定のバカップルであった。
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【 楓・美波・アリス 組 2日目 AM 8:13 洋館 東棟 2F 通路 】
ーー楓たちは交代で休息を取る事で体力の回復を図った。ノートゥングも入れて4人でローテーションを組める事により充実した睡眠を取る事が出来た。
睡眠は大事。睡眠が不足すればパフォーマンスは圧倒的に下がる。慎太郎たちも含めて睡眠をしっかり取れるという事が彼らにとって非常に大きな事である。
ーーそして彼女たちが向かう先は昨日進めなかった鍵のかかった両開きの扉である。
私たちは昨夜手に入れた銅のペガサス座の鍵を使って扉が開くかを確認せねばならない。万が一これで開かないとなると私たちにとってはかなり問題になる。誰かが開けてくれないとここから出る事も出来ない軟禁状態なのは御免だ。その時はブルドガングを呼び出して扉を壊してもらおう。
「さてと、みんな、準備は良いかしら?」
「大丈夫ですっ!」
「私も平気です!」
『…貴様らの何処が大丈夫なのだ?妾の背後に隠れているだけではないか。』
ーー楓、美波、アリスはノートゥングの背後に隠れ、扉を開けてもらう気満々である。
「しょ、しょうがないじゃないっ!!」
「そうですよ!お願いします!」
「ウフフ。」
『…はあ。』
ーー疲労感漂うノートゥングが銀のペガサス座の鍵を使って扉を開ける。
すると、
ーーガチャン
「開いた!?」
ーー扉の鍵が開く。
『開けるぞ。気を引き締めておけ。』
ーーノートゥングが両開きの扉を開く。
そしてその先の光景は、
「ぐあぁぁぁぁぁァァァ…!!!」
「やっ、やめテェェェエ!!!」
『イヒヒヒヒヒヒヒ!!!』
『ギャギャギャギャ!!!』
ーー大食堂のような大きな部屋が血に塗れていた。壁やテーブルはおびただしい程の血がベッタリと付着している。床には肉片らしいモノがそこらじゅうに転がっている。
そして今もまたプレイヤーたちがゲシュペンストとゾルダードにより死へと誘われていた。
『フン、ようやくお出ましか。おい、奴らを蹴散らーー』
ーーノートゥングが背後を振り向くと楓たちがお互いに身を寄せ合ってブルブルと震えていた。
無理も無い。こんなホラー要素満載の洋館で、しかも薄暗い大食堂の様相、そしてホラー定番の大量虐殺。こんなものを見せられたら彼女たちの恐怖耐性はオーバーキルだ。
『……』
ーーノートゥングは思った。
全滅じゃね?
と。
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