第166話 私の扱い変わってきましたねっ!

【 美波・慎太郎 組 ?日目 ???? 】



私たちは地下2階層へ到達し、ゲシュペンストとの戦闘に突入した。ゲシュペンストが醸し出すホラー感はとてつもないものだが怖いだなんて言ってられない。ノートゥングが使えない以上は持てるものを全部使わないと勝機は見出せない。


「美波、アイツは不死身だから気をつけろ。」


「不死身…やっぱりそうだったんですね…動画では音声は聞こえ無かったのでタロウさんの言葉は聞こえ無かったのですが雰囲気的にそうだと思ってました。」


「あ、音声は聞こえ無かったのね、良かった。」


「良かった?」


「いや?ナンデモナイヨ?」


何か隠してる…私に聞かれたらマズい事があるのかな…


「そ、それにアイツはアルティメット級の強さがある。ゼーゲンで強化されてるからって言っても俺たちのチカラはSS級が良いところだからな…何か考えないと勝負にすらならねぇ…」


そうだった。タロウさんはあの時はSSスキルを使用してゲシュペンストと戦っていたんだった。ゼーゲンの強化と合わせればアルティメット級になっていたはず。それでも決め手には欠いていたから最後はバルムンクに任せるしか無かった。そこから考えれば私たちに勝機なんてあるのだろうか…


「ダメ元でバルムンクを召喚してみるか…」


タロウさんがバルムンクの召喚を試みる。だが金色のエフェクトが発動しない。やはりダメなんだ…


「くそ…やっぱダメか。SSだって同じだよな…ーーえっ!?」


タロウさんがSSスキルを発動させる。身体が銀色のオーラに包まれアルティメットと遜色無い程の圧を感じる。


「なんで…?」


「もしかしてアルティメットだけ使えないんでしょうか?」


「いや…安易に考えるのはやめよう。何か条件があるのかもしれない。だから美波は《身代り》が発動するとは思わない方がいい。それをアテにしてて発動しなかったらとんでもない事になる。アリスがいないんだからダメージの程度によっては死に繋がるからな。」


「そ、そうですねっ!」


「でもSS使えたのはありがたい。これならアイツと渡り合う事ができる。美波はなるべく離れて見ていてくれ。」


「で、でもっ!?」


私だけ見ているなんて嫌だ。私だって戦えるんだからタロウさんの力になりたい。


「美波はここぞって時にだけ参戦してくれ。」


タロウさんが諭すような目で私に訴えかけてくる。そんな目をされたら何も言えない。


「…わかりました。」


「ありがとう。じゃあ行ってくる。」


「気をつけて下さいねっ!?」


タロウさんはニコっと笑ってゲシュペンストへと向かって行く。タロウさんには申し訳ないが危険だと思ったら参戦する。こればっかりは聞かない。


「言葉なんか通じないと思うが始めさせてもらうぜ。」


『イヒヒヒヒ…!!コロ…ス。!!』


喋った!?知性があるというの…?そういえば楓さんがフェルトベーベルも監獄では喋っていたと言っていた。ここの生き物は他とは違うの…?


「この前の奴と違うって事か…?会話できんのかお前?」


『イヒヒヒヒ…キサマ…ナニヲ…イッテイル…ワカラナイ…オレ…ヒトリ…』


「スゲーな会話できんのかよ。そんならこの戦い終わりにしねーか?無駄に戦いたくはねーからよ。」


『オマエ…コロス…オレ…カイホウサレル…』


「避ける事は無理って事ね。ならやるしかねーな。かかって来いよ。」


『イヒヒヒヒ…!!コロス…!!フタリ…コロス…!!』


ゲシュペンストがチェンソーのエンジンをかけてタロウさんへと向かって行く。そのスピードは相当なものである。ゼーゲンを持っていない時のバルムンクと同等に近いぐらいの速度だ。アルティメット級というのは間違いない。


だがタロウさんも負けてはいない。ゼーゲンとSS身体能力強化による大幅アップでアルティメット級の力を手にし、ゲシュペンストの攻撃を華麗に躱す。そしてその去り際にゲシュペンストの胴体へカウンターの一撃を入れる。完璧に入ったその一撃にゲシュペンストは両膝を着いた。


「やった…!勝った…!」


『いや、決まっておらん。』


私の心に直接誰かが語りかけてくる。ううん、誰かじゃない、ノートゥングだ。


「ノートゥング!?無事だったの!?」


『妾とした事がしてやられたわ。この部屋自体に結界の邪符を張っておったのだ。』


「邪符?」


『黒い魔法陣の事だ。アレには能力を抑える効果があるのだ。妾が抑えられた事から考えれば召喚系に近いものを抑える邪符であろうな。だから誑しのSSは使えたのだろう。』


「じゃあ私の《身代り》も使えるの?」


『恐らくは使えるだろうがアテにはするな。万が一にも発動しなかったらお前は終わりだ。』


「うん…わかった。」


『先ずはあの木偶人形を倒す事が先決だが…誑しは負けるぞ。』


「えっ!?そ、そんな!?」


ノートゥングの一言は私を奈落に突き落とすような衝撃的なものだった。


『あの木偶人形は再生力が尋常では無い。誑しの攻撃では木偶人形の再生力を上回る事がないのだ。』


「それじゃあタロウさんは…!?」


不死身の相手ならいずれは体力が尽きてタロウさんは殺されてしまう。一体どうすれば…


『案ずるな、手はある。』


「あるの!?」


『ああ。やるのはお前だミナミ。お前があの木偶人形にトドメを刺すのだ。』

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