向かい風
目を開けても辺りは真っ暗で、自分が目を開けているのか閉じているのかも分からない。ただ意識はしっかりとしていて起きているという意識はあるし、足元には踏みしめる地面も感じられる。
歩き出そうと足を前に踏み出すと、フッと地面を踏み外すような感覚とともに体全体が浮き上がるような、落ちていくような感覚に襲われた。
しばらくすると遠くのほうで光がゆらゆらと揺れていて、そこから強い風が吹いているのがわかった。
その風があたったところから、何かが持ってかれる感覚があった。切り取られたような喪失感。腕をまるごと持って行かれたような感覚が走った。
でも腕自体はそこにあることはわかっていて、持って行かれたものは、母親とトランスフォーマーとスペーシアだった。
そのことがとても悲しくて、涙を流せば流すほど、風がどんどん強くなった。
了
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