お婆ちゃん

 狭い部屋でお婆ちゃんと二人でミカンを食べていると、お婆ちゃんは僕にこう言った。


「肩叩きをしてくれたら、1叩きにつき10円あげるよ」


 僕は大体100回くらい叩いてあげてて、1000円を要求した。


「まだ5回しか叩いてないよ」


 お婆ちゃんはそう言うと、もっと叩けと自らの肩をポンポンと叩く。仕方ないので僕はさらに95回肩を叩いてあげると、再度1000円を要求した。


「ありがとね。でもまだ30回しか叩いてないよ」


 お婆ちゃんはニコニコしながらそう言った。僕は面倒臭くなったので、さらに100回肩を叩いてあげてから、トイレに行くために天井についたドアを開いた。するとそこは戦車の砲塔になっていて、先ほどのドアはキューポラであった事に気が付いた。先ほどお婆ちゃんの肩を叩いていた場所は戦車の中だったのだ。


 その事に気がつくと、急にお婆ちゃんに申し訳なくなった。再度狭い部屋に戻ると、そこはハムスター小屋になっていて、お婆ちゃんがハムスターと戯れていた。そんなお婆ちゃんに声をかけると、僕は深々と頭を下げ、お婆ちゃんに謝った。


「大丈夫だよ」


 お婆ちゃんは優しくそう言うと、手に持ったハムスターを食べた。


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