第13話 北風と太陽

「いやだ…死にたくない…」


病室に横たわる少年は痛み止めの麻薬の効果が効き始めて言葉を漏らす・・・

先程まで苦痛に苦悶するのみだったのが反射的に反応を示すだけとなっていた。

その薬の副作用もあり体は一切動かす事が出来ず涙ぐんだ目を少しだけ開けて天井を見詰める・・・


「お願いだ…神様、悪魔でも良い、僕を…助けて…」


そして、その命が終わろうとする時にそれは起こった。


『いいだろう』


その言葉と共に少年は見た。

自分がこの後完治して数年後に刺されて死ぬ光景を・・・

そして別の自分を刺殺した誰かに転生し同じ様に自分を殺してくも膜下出血でその日の夜に死ぬ。

更に転生は続き自分を殺した者に生まれ変わり前世の自分を殺した後に次の自分に殺される連鎖・・・

そして、最後は自分が生き残った事で数年後に死を自ら選択せざるを得なくなる事まで見終わった・・・


「これは・・・未来予知?」


生まれてからこんなモノを見た事なんて無かった。

さっきの声の主が見せてくれたのだと少年は理解した。


「僕は・・・生きてたら駄目な人間なのか・・・」


涙がこぼれる・・・

だが救いはある、自分は死んでも次の誰かに転生するのだ。

それが知れたからこそ次の人生は元気なまま大人になって奥さんを貰って幸せな人生を送りたい・・・

そう、死ねばこの苦しみから解放されると考えたのだ。


「もう・・・いい・・・・・・・死なせて・・・」

『分かった』


そして、少年はそのまま息を引き取った・・・










そこに2つの存在が在った。

1つは黒い霧で形成された体を持ち、もう1つは水の様な物が形を形成していた。


『なんでこんなにあっさり・・・』

『それが人間ってヤツなのさ、死を選ばざるを得ない状況に陥っても最後まで生き残る希望は捨てないのさ』


2つの存在は少年の死を確認して互いに視線を合わせた。

ある意味神とも言える存在の2つは少年の運命がループしているのを解決したのだ。

最初に黒い霧が少年に死の病を与えた。

だが直接人間を殺す事は禁じられている為に弱らせるだけ弱らせて自ら死を望む方向へ誘導しようとした。

その結果は少年が見たそのままであった。

死が近付けば近付くほど生を望む事で黒いモヤの狙いとは真逆の結果を引き寄せたのだ。


そして、後から手を出した水のそいつは少年に別のアプローチを行なった。

その結果少年は死を自ら選ぶ選択をしたのであった。

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