第2話 俺の使命

真っ暗な場所に居た。

どちらが上かすらも分からないその空間にどれ程の時間漂っていたのかは分からない。


『残念だ』


突然聞こえたその言葉に返事をしようとするが何も話すことができなかった。


『しかし、困ったことになった』


何を言っているのか分からないが段々と意識が闇に沈んでいった。




「朝か…」


目を開くと自分が暮らしているアパートの一室であった。

外から聞こえるざわめきに少々苛つきつつ体を起こした。

そして、カレンダーを見て考え込む。


「はぁ…本当にやらないと駄目なのかよ…」


溜め息を一つ吐いて愚痴を出す。

生まれたあの日から自分には使命があった。

ぼんやりと頭に残る記憶、それはその日にその人物を殺さなければならないと言う事実。

誰にも話したことは無いのだが、自分に定められた使命なのだ。


「やるよっやればいいんだろ」


スッと透け始めた手のひらを見て慌てて口にする。

生まれてからこの使命を止めようとするとこの世から消えそうになるのだ。

だから俺は一つの仮説を立てた。


パラドックス、俺の記憶に前世の事が少しだけ残っている。

そこで俺は誰かに刺されて殺された。

鏡を見る度に感じていた違和感はこの数年で確信へと変わっていった。

つまり、俺は前世の俺を殺した人間なのだ。

そして、歴史を改変してしまうと今の俺は存在しなくなってしまう。


「アニメの世界かよ…なんだよ…これ…」


吐き気がするほどモヤモヤが頭を支配して困惑する。

卓上に置かれた包丁に反射した自分の顔。

それは間違いなく記憶に残る自分を殺した男の顔であった。

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