第2話 俺の使命
真っ暗な場所に居た。
どちらが上かすらも分からないその空間にどれ程の時間漂っていたのかは分からない。
『残念だ』
突然聞こえたその言葉に返事をしようとするが何も話すことができなかった。
『しかし、困ったことになった』
何を言っているのか分からないが段々と意識が闇に沈んでいった。
「朝か…」
目を開くと自分が暮らしているアパートの一室であった。
外から聞こえるざわめきに少々苛つきつつ体を起こした。
そして、カレンダーを見て考え込む。
「はぁ…本当にやらないと駄目なのかよ…」
溜め息を一つ吐いて愚痴を出す。
生まれたあの日から自分には使命があった。
ぼんやりと頭に残る記憶、それはその日にその人物を殺さなければならないと言う事実。
誰にも話したことは無いのだが、自分に定められた使命なのだ。
「やるよっやればいいんだろ」
スッと透け始めた手のひらを見て慌てて口にする。
生まれてからこの使命を止めようとするとこの世から消えそうになるのだ。
だから俺は一つの仮説を立てた。
パラドックス、俺の記憶に前世の事が少しだけ残っている。
そこで俺は誰かに刺されて殺された。
鏡を見る度に感じていた違和感はこの数年で確信へと変わっていった。
つまり、俺は前世の俺を殺した人間なのだ。
そして、歴史を改変してしまうと今の俺は存在しなくなってしまう。
「アニメの世界かよ…なんだよ…これ…」
吐き気がするほどモヤモヤが頭を支配して困惑する。
卓上に置かれた包丁に反射した自分の顔。
それは間違いなく記憶に残る自分を殺した男の顔であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます