20時間目。居酒屋での勉強会


坂上先生が物凄く怖かったので、ちゃちゃっと、本当にはきはきと、テキパキ無駄なく行動して、ミヨキチが言っていたお店へ

店内はそこそこ広いが、チェーン店とは違う個店ごとの雰囲気が出ている

最初に女子高生二人がいることに、店員が不審な目つきで見られたがミヨキチがいるおかげで何とかなった感じだ

さすみよ(流石ミヨキチの略)


あれ?これ流行るのでは?


とりあえず、座る

俺の真正面は北野裕子、隣が麻倉舞、斜めにミヨキチ

勉強を教えるのでそんな感じである

雄太郎が来たら二人は帰らせるつもりなので、4人テーブルで問題ない


「とりあえず、何頼みます?」


「ビール一つ」

「ウーロン茶をお願いします」

「ビール!!」


制服!!

子供!!未成年!!!

何考えてるんだアホが!!!

とりあえず、頭にチョップだアホ


「いたっ!冗談だって冗談!!まいもウーロン茶!!」


ミヨキチがちゃちゃっとつまみとお酒と飲み物を頼む

さすみよ(流石ミヨキチの略)


「とりあえず、食いたいもんがあったら頼んでいいからな」


何しろ雄太郎の奢りだ

俺は酒とつまみさえあればいいし


「えっと、とりあえず、歴史で暗記があんまり得意ではないので、色々と紐づけて思い出しやすくしたいんですけど、今日の授業で点と点が線にならなくて」


なるほど、理解した

基本的に大体3パターン覚え方がある

1つが、詰込み型である。とりあえず、ひたすら書いて覚えて記憶に刻み付ける方法

1つが、紐づけ型である。覚えるのは全部ではなく覚えやすいものを覚えてそこに紐づけて記憶に刻み付ける方法

1つが、感覚型である。完全に天才型である。何か感覚で良い感じに覚えるらしい


北野裕子は勉強方法としては紐づけ型である

俺も紐づけ型であるので、覚え方は頭に本を作る感じになる。目次を作ってそこから物語を構築する感じかな

引き出しが無いと記憶が出てこないタイプだからしょうがない


まぁ、何がいいか、何が悪いかなんてないし、一番合った勉強方法が一番である


ちなみにミヨキチは詰込み型、麻倉舞は感覚型である

感覚型は教えてて面白い。よくわからん質問されて答えると、何故か本質が理解できているのだ

大人になって思ったのは論理派、感覚派とか分かれているが、そんなに違いなど無い

論理派は大多数にとってわかりやすい筋道を立てる。なので説明とかも向いている

感覚派はその人だけがわかる筋道を立てている。本質的には論理なのである。ただ口で説明すると感覚で終わるので理解ができない。

大体そんな違いだ


『かんぱーい!』


とりあえず、開幕乾杯後ビールを流し込みながら教え始める

北野裕子の分からない点は俺が大体結び付けづらいところだろうと思ったところなので、準備はバッチリである


「あっ!!わたるさんタバコ!!」


「む?」


ミヨキチに言われて気付くとタバコを加えていた。火をつけようとしていたところである


「あぶね!」


無意識って怖いよね

生徒の前で吸うのは流石に駄目だ。生徒が良くても俺が駄目だ

さすみよ(流石ミヨキチの略)助かりました。


「そういえば、ミヨキチせんせってわたるせんせと仲良いよね?名前呼んでるしー」


北野裕子が紐づけタイムなので、暇になっていると麻倉舞が話題を振ってくる

俺が言うのもあれだが、生徒にもミヨキチ言われてんのな


「あー、この間の男子バレーの合宿の時に原田先生って言ったときに、就業時間外だから先生はやめてって言われたんだよー。あんまり周囲が苗字呼びの文化が無かったから…」


「確かにそうだよねー、生徒だからせんせって言っちゃうけどせんせ達って結構仲いいもんねー」


始まるガールズトーク

俺は当然ながら、入れません。

ビールが進みます。


「あっ先生ここって、こっちと関連性あるんですか?」


はい、ここで素晴らしいアシスタント

その名は北野裕子、やはり素晴らしい

女神かな

いくつか教えていると…


「弘君って麻美ちゃん好きだよねー」


「ゲホゥ!!!」


ビールを噴き出してしまった

おい麻倉舞!!

それは衝撃的すぎる…いや、今日の感じでわかったけど、断言されると困るんですけど担任として

麻倉舞は何故俺にクラスの恋愛事情をリークしてくるのだ。やめてくれ。困る


「わたるせんせ何噴き出してんのー!」


バシバシと背中をたたかれて、肩を組まれる

こいつ酒飲んでんの?


「あっプリントに…」


「ほんと悪い!!」


噴き出したビールがプリントにかかってしまった…本当に申し訳ございません。

いや、麻倉舞が悪い。全ては麻倉舞が悪い

ポケットに入れていたハンカチで、気持ち程度に水分を吸い取る。多少はマシになるはずだ


「あっでも、麻美ちゃんが好きなの」

「ちょっ!!」

「あっ!」


「え?」

「?」


慌てるような麻倉舞と、失言してしまって口を抑える北野裕子と、よくわかっていない俺とミヨキチ

何を失言しようとしたんだろうか…ガールズトーク怖い…


「なんでもないです!」

「なんでもないよー!」


めっちゃ必死な北野裕子。珍しく、というか初めて聞く大声である

こんだけ必死なのであるから嘘なのか、良かった

危うく大崎麻美に対して距離を離すところであった


「おっすー、お疲れー!あれ?生徒いるけどいいのか!?」


「酒は飲んでないから大丈夫だ。ただ生徒の分も奢ってくれよ」


お疲れ雄太郎

Welcam雄太郎


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