普通の原田先生

17時間目。いたずら娘

男子バレー部の色々が終了し、無事に帰宅できた

それだけで一安心。

雄太郎からのお願いも完遂できた。万々歳である

運転は疲れたが、別に次の日に影響が出るほどではない

普通に学校に向かい、HRを始める

「はい、みんなおはよう！出席取るぞぉ」

教室を見渡すとやはり、立花弘はいない

あいつめまた遅刻かあの野郎。まだ遅刻数は猶予あるから確実に遅刻にしてやる

いつも通りに教卓の椅子に座り

ぶーーーー

と気の抜けた屁のような音が教室に響き渡った

「ぶは！！」

「先生屁こくなよー！」

「わたるせんせ屁はダメだよー！！」

「くっさいなー！！」

十数人が笑った瞬間である

朝会では滑るだけだが、人生で初めて十数人を笑わした

「…」

まぁ、そんなことはない

既に主担任になってから2か月、何度もこんなことは経験した

椅子の下にブーブークッションが置いてあった

とりあえず、本田ほたるは15回血管に空気入れてやろう

そんなことをする犯人は、考えるまでもない

立ち上がり、犯人の目の前に立ち、少し目がきょどっている一番笑っていたやつの顔面を掴みアイアンクローを決める

「お！お！さ！き！ま！み！またお前かぁぁぁぁ！！！！」

「先生ー暴力は体罰ですよぉ」

語尾が伸びながらタップをする犯人の大崎麻美(おおさき　まみ)

そこまで力は流石に込められないので、当人は余裕そうである

こいつはいたずら大好きっ娘である

小悪魔キャラというかなんというか、制服もギャルである麻倉舞より着崩しており、マイペースでいたずらを放つ問題児の一人

ただ、彼女としては何となく楽しそうだからという理由だけでいたずらは構成されており、人が嫌がるようなことはしないので怒るに怒れない

だが、今回は別である

生徒の前で教師が恥をかくわけにはいかない。大人として

それをブーブークッションとかふざけた玩具で恥をかかせおって！！

「何で私がぁ…犯人だって決めつけるんですかぁ？」

「いや、大崎麻美以外にこんなことするやつはウチにいないだろ」

もう、このやり取り何回目？ってほどに繰り返されている

最初の一度や二度くらいなら騙されてしまったが、既に2桁に届くほどいたずらをされている

犯人はお前だ。死んでないがじっちゃんの名にかけて！

特に探偵ではないんだけどね。普通にサラリーマンだったよ

「あれー？先生は私のこと凄く良く知ってるんですねぇこれは相思相愛ですかぁ？」

「あー？お！ま！え！は何回目だぁぁぁぁ！！！」

大崎麻美の額をツンツンと突きまくる

だが、流石に痛くはできないので、軽く突くだけだ

「はいはーい！！まいはわたるせんせのバイクに乗せてもらったからまいのが相思相愛ー！！」

「やかましいわ麻倉舞！！」

「えー！わたる先生私乗せてくれなかったのにー！！ふこうへーい！！だから彼女できないんだよー！！」

ほう、今お前は俺の頭の中のゴングを鳴らしたぞ

「本田ほたる…お前116回歯をぶち折るぞ」

「酷くない！！！！？ってかそんなに歯は生えてないよ！！！！」

これは俺が若いからなのか…生徒たちにからかわれてしまう…

くそぅ、俺は教師だぞ

「セーフですか先生！！！？」

ドアが勢いよく開く

しまった！！

確実に遅刻にできた立花弘が教室に入ってしまった！！？

出席さえ取れていれば遅刻確定だったが、間に合わなかった！くそがぁ！！

「大崎麻美ぃぃぃぃ！！！！」

とりあえず、腹いせである

これが体罰と言われたら甘んじて受け入れよう

再度アイアンクローをかけて頭を前後左右に揺さぶる

「ちょっ…先生ぇこれは流石に酔うぅ」

知らん！自業自得だこの野郎！！

もうこれは学級崩壊では？古里さんに聞かれたら俺死ぬのでは？

どうしようもなく困りながら大崎麻美の頭を振っていると、俺の唯一の癒し北野裕子と目が合った

普通に困ったように笑っている北野裕子と目が合った

俺はその瞬間に、全力で助けてください！！と祈りと願いを込めた

それを受け取ってくれた北野裕子は手を2回叩いて注目を集める

不思議なことに北野裕子の行動は動作は大きくもないし、音も大きくないが目立つのだ

「そろそろ皆出席取ろうよ？原田先生いじるのは帰りのHRで」

ニッコリ笑顔である

え？俺帰りのHRでいじられるの？

「まぁしょうがないかぁ」

「でも次ハラワタ先生の授業だから大丈夫じゃね？」

「わたるせんせは頑張ってるんだから邪魔しちゃ駄目だぞー！」

お前が言うか麻倉舞よ

ふと注目が麻倉舞に集まった時に北野裕子と目が合う。めっちゃ手を合わせてごめんなさいをしていた。お前は何も悪くないぞ。本当にありがとう

「あれ？わたるさんまだHRなんですか？」

悲報…本日、朝からアホが多い

そうだ、忘れてた…今日はミヨキチの授業見学が入るんだった…

古里さんの方針で新人の頃は色々な科目の授業に参加して広い視野を持つように言われているのだ

「田中先生、すまないがまだ出席も取っていないからちょっと廊下で立ってろ」

生徒の前で教師が砕けてたらいかんだろうに

「え？あ！？すいません、原田先生廊下にいます！！！」

急いで戻るミヨキチ

やはりあいつは脳内ふんわりガールだ…

「ほっほーん？」

何か聞こえたが、とりあえず優先すべきは出欠確認だ

まぁ普通に全員いるからカットでいいや